ひまわり博士のウンチク

読書・映画・沖縄・脱原発・その他世の中のこと

棟田博『サイパンから来た列車』と倉本聰『歸國』

2012年12月31日 | 本と雑誌
 倉本聰の『歸國』は、2010年にTBSの制作で放送されたドラマで、棟田博の『サイパンから来た列車』をヒントに脚本が書かれたという。
 戦死した兵達が、列車で現代の東京駅にやって来て、終電車が出てから始発が走り出す前のわずか数時間を過ごすという設定の物語である。
 
Saipan
 棟田博『サイパンから来た列車』は、神保町の古本屋の100円ボックスの中に、あと数日もほっておかれたら古紙扱いにされてしまいそうな状態で投げ込まれていたのを救出した。
 1956年に出版された新書版で、発行元は「大日本雄弁会講談社」とある。現在の「講談社」の旧称である。240頁ほどで定価が140円。今の物価水準からすれば、1000円以上になる。当時,岩波文庫が価格を星の数で示していて、星一つが40円。現在500円から600円する200頁程度の文庫が、星二つの80円ほどだった時代である。
 
 「サイパンから来た列車」はこの本に収録されている40頁ほどの短編である。ウィキペディアによると、倉本聰はこの小説に「感銘を受け50年以上温めてきた」とあるが、ドラマを見る限り、感銘を受けたと言うよりは「アイデアのヒントを得た」と言った方が近いように感じる。
 原作は、深夜東京駅についた列車から降りてきた「英霊」達が、10年後の東京の復興に驚きながら、縁のあった人々の現在を訪ね歩く。年取った元女房に涙を流し、立派に成長した息子に笑みがほころぶ。出世したものもいれば実を持ち崩してこそ泥になった知り合いもいた。
 要はそれだけの小説で、ドラマチックな出来事はない。ただ、列車に乗って「英霊」達が東京駅に到着するという発想はユニークで、倉本聰はそれをもとに50年もの間構想を練ってきた。
 
Kikoku
 
 大きな事件も感動的な出来事もない原作と比べ、ドラマの『歸國』は実によくできていた。当然、戦後10年と60年では「英霊」達にとって大違いで、そのギャップは一層生半可なものではない。人々の精神は大きく変化し、価値観は彼等にはまったく受け入れられないほどだった。しかし、ある程度の「事前学習」があったのだろうか、彼等が極端に慌てたようすはない。まあ、その辺を描くと物語がごちゃごちゃになるので、脚本の段階で調整したのだろう。
 ドラマは大きく二つの流れを持つ。一つは、ギャップを受け入れることが出来ない人間達の物語である。その一人、ビートたけし演じる大宮上等兵は、仕事優先で親の死に目にあわないどころか,葬儀も他人まかせにする甥を銃剣で刺殺してしまう。
 もう一つは、音大生だった当時に召集され、年老いた恋人のもとを訪れ、今も変わらぬ思いにカタルシスを得て帰っていく、自らの死を受け入れる人々だ。
 前者はドラマチックで衝撃的だが、なぜか穏やかな後者に感銘を受けた。
 戦後の日本が、経済的な成長とともに失っていった大切なものを、倉本聰は突きつけている。不景気なこの時代、景気回復は優先課題だが、日本国民の多くが経済最優先になり、人間の心を失いつつあることに警鐘を鳴らす。
 
           ◆

 今日は大晦日。明日からは新しい年が始まる。それにしても1年の経つのが早い。
 我が家は今年1月に義父が亡くなり喪中で、プライベートでは正月の祝いをしない。
 ブログ上でも、新年のご挨拶を遠慮させていただく。

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【訃報】中沢啓治さん

2012年12月26日 | ニュース
Knakazawa
 漫画『はだしのゲン』の作者、中沢啓治さんが19日、肺がんのために亡くなった。73歳だった。2010年に肺がんの告知を受けてからも、被爆体験を語る講演を精力的に行っていたそうだ。
 中沢さんは広島市の出身で、6歳の時、爆心地から1.3キロの国民学校前で被曝、その時父と姉と弟を失った。
 
Gen
 
 自らの被爆体験をもとに描いた漫画を、1973年から週刊少年ジャンプに連載を始めた。この自伝的作品『はだしのゲン』全10巻は単行本だけで650万部を超すベストセラーになり、18カ国語に翻訳されている。絵本を含めると1000万部に及ぶという。
 
 戦後しばらくの間,原爆被害の状況は占領軍によって厳しく検閲され、国民にほとんど知らされることがなかった。ただ「特殊爆弾」とだけ表現されて、それがどのような被害をもたらすものか、一般の市民で知る人はほとんどなかった。そのために、原爆投下直後の被爆地に侵入して、放射能を浴び、二次被害に遭う人も少なくなかったのだ。
 原子爆弾は通常の爆弾にはない、長期にわたる健康被害を人の身体にもたらす。中沢さんが『はだしのゲン』を描くきっかけになったのは、被曝から20年以上も経った1966年、原爆症の母を失った憤りだったという。
 
 人類はまた一人、戦争の生き証人を失ってしまった。ご冥福を祈る。
 
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【新刊】和久井みちる『生活保護とあたし』

2012年12月24日 | 本と雑誌
■日本国憲法第25条
 すべての国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する。
 国は、すべての生活部面について、社会福祉、社会保障及び公衆衛生の向上及び増進に努めなければならない。
 
Seikatsuhogo
 
 「生活保護」というと、ほとんどの人は自分とは無縁の制度と思っているだろう。普通に生活し、普通に仕事をしていれば、生活保護に頼るなどあり得ない、と信じて疑わないと思う。さらには、生活保護を受ける人というのは、身体に障害を持っていたり、能力がないためにどこの会社からも相手にされない人で、少なくとも自分には当てはまらないと考える。
 ところが人生には、自分が何のミスもおかさず,ごく当たり前の生活をしていたとしても、突然「普通の暮らし」が破壊されてしまうことが、実際にある。
 
 「ありのままを記しました」と著者は語る。
 この本の著者は、結婚して幸せな家庭が築かれるはずであった暮らしが、夫からのドメスティックバイオレンスで離婚。その影響でうつ病になった。就業がままならず、生活保護をあてにせざるを得なくなったものの、そこには想像を超える高い壁があった。
 役所の担当者の冷たい対応に耐え、生活保護が受給されるまでには、いくつもの障碍があり、差別的な周囲の眼もあった。それでも、ひたむきに、前向きに、生活を営んでいくうちに、同じ問題と戦っている人が自分だけではないことが見えてきて、現在の生活保護制度について語り合い、それを世の中に知らせることが出来るようになっていく。
 
 世間では生活保護の不正受給が、あたかも非常に多いように報道されている。生活保護受給者に対する差別も、そうした報道の影響が大きい。
 しかし、暴力団関係者などをはじめとした不正受給は、全体の数パーセントに過ぎないという。役所はそれを盾に、本当に生活保護が必要な人に対しても、受給させないことを前提に対応するのが常だ。役所によっては、受給を上手に断れる職員が「優秀な職員」とされるという。
 生活保護は、憲法第25条で語られる「健康で文化的な最低限度の生活を営む」ための最後の砦である。しかし、実態は弱者を救済するどころか排除するのが現代社会の姿である。「国は国民を守ってくれない」と沖縄で戦争を体験したオジイ、オバアの声が聞こえてくる。国は一体何を守ろうとしているのだろうか。
 生活保護受給者の現在は、我々国民の現在に通じる。日本国憲法は、為政者にとって都合の悪い部分は読み替えられ解釈を変えられ、次々に形骸化していき、改憲論者の都合のいいように変えられていっている。それは戦争放棄をうたった9条だけではない。
 
 「国家とは国民を守るために存在する」という、きわめて当たり前なところに立ち返るためにも、誰もが読んでおいていい1冊である。
 
 つい先頃まで、NHKで「シングルマザーズ」というドラマが放送されていて、この本の著者と同様、夫のDVから子どもとともに逃れ、同じような仲間とともに、生活保護や児童手当の改善を求めていくという、奇しくも似たテーマだった。
 今の日本をリードしているのは、暮らしに困ったことのない人々である。だから、今日の食べ物にも困る人々のことが理解できない。必要な人に必要な支援が行き渡る世の中がなぜ作れないのか、考えさせられた。
 
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ツタの実?

2012年12月22日 | 日記・エッセイ・コラム
Tsuta1
 
 初めて見た。ツタの絡んだ隣家の壁から、丸いボールのような実がいくつもぶら下がっている。こんな実が成っているのを見るのは初めてだ。
 隣家は壁面にツタを這わせていて、まるで甲子園球場状態なのだが、数年前に一時撤去して、最近また繁殖をはじめ、壁全体を覆うようになった。
 
Tsuta2
 
 このような実が成るのは初めてなのだが、何の実だにわかにわからない。ツタから下がった蔓の先端に成っているので、ツタの実だろうと思い、ネットで画像を調べたが、「ツタの実」で画像検索しても見当たらない。
 
Tsuta3
 
 葉は枯れているのだけれど、多分ツタの実に違いない。ただ、どんな種類のツタがこのような野球ボール状の実を付けるのか、もし知っている人がいたら教えてほしい。
 案外、食べるとおいしかったりして。でも、ツタの中には毒をもった種類もあるというので、要警戒だ。

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今日は人類滅亡の日…だそうだ

2012年12月21日 | 日記・エッセイ・コラム
 今日、2012年の12月21日は、人類滅亡の日…だそうだ。
 古代マヤ文明の時代、マヤの人々によって作られた「マヤ暦(マヤンカレンダー)」が終っている日である。マヤの予言はいくつか当たっているものがあり、マヤンカレンダーはそのために、たいへん信頼性が高いといわれてきた。そのカレンダーが2012年12月21日とされる個所で終っていて、一部の人の間では人類が滅亡する日とされてきた。それが今日だ。
 大手マスコミが騒ぐことはないが、ネット上などで大騒ぎになっていたり、人類の滅亡をマヤ文明発祥の地であるメキシコで過ごそうという人々で、旅行会社が儲かったりしていると聞く。

 今から20年以上も前のことだが、いわゆる「ニューエイジ・ブーム」といわれる時代があった。石ころや誰がどこでどうやって作ったかわからない、なんとも品のないペンダントに「パワー」なるものが潜んでいて,幸運と健康をもたらすと信じて首から下げていた人々などを「ニューエイジ」と呼んだ。
 身近にも何人かいたが、それで幸運がもたらされたという話は聞いたことがない。それでも「無事に過ごせた」「元気でいられた」とまったく疑わなかった。
 そういう人達の間でまことしやかにささやかれていたのが、いわゆる「終末論」だ。
 終末論には様々あって、富士山大爆発にはじまって、ノストラダムスの大予言、そして「マヤ暦」の終焉などだ。
 地球に妖星が迫っていて、数カ月後地球に激突するという説を唱え、それを本にしたいという渡辺某という終末論者が原稿を持ってきたこともあった。「そんな本出せるわけがない」と断ったら、「魔界の使い」だの悪魔だのと言われたことがある。自分は魔界の使いではないが、まあ、悪魔かもしれない。
 その男はすでに某出版社から別なテーマで終末論に関する本を出していて、まあ、それが結構売れていたのだけれど、「カネがいるから、印税を早く払ってくれ」と催促したそうだ。「彼の終末論が真実なら、カネもらってもしょうがないのにねえ」とその出版社の社長が笑っていた。
 そうそう、かのオウム真理教はハルマゲドンなる週末説を唱えて,とんでもない事件を起こした。
 実を言うと、おおかたの終末論本人は、自分の終末論を信じていないことがほとんどだ。その回りの人間が信じているという、おかしな現象がある。

 ニューエイジの人たちが信じていることの一つに「アセンション」というのがある。地球上の人類が滅亡した時に、予言を信じた一部の人は「アセンション」といって次元上昇し、永遠の命と共に豊かで平和な暮らしを送ることができるというのだ。オウム真理教の「ポア」と同じような意味で、死ぬことに変わりはない。つまり、よいことをすれば極楽に行き、悪いことをすれば地獄に堕ちるという、仏教の死後の世界に似ている。

 ちなみに、予言をして外れまくった終末論者達のその後は千差万別だが、多くは「どっこい生きている」。富士山大爆発説の某モンローは直後から姿をくらまし、ほとぼりの冷めたころにまた雑誌(その手の雑誌である)などで姿を現し,今でも予言や占いなどをやっているらしい。
 ノストラダムスの池田某は、予想が外れた後「あれは読み解き方が間違っていた」とさらに終末時期を延長した本を出版したが、誰もそんな本を読まなかったので、売れなかった。そのおかげで発行元の出版社は倒産したが、本人はヒーラーと称して今でも活躍しているそうだ。
 オウム真理教のハルマゲドンを信じた人はあまりいなかったけれど、信者の間では誰一人疑わなかったという。しかし、東京杉並の阿佐ヶ谷にあったオウム経営の飲食店のメニューには「ハルマゲ丼」などというふざけた名前があったそうだから、本気だったのかどうか疑わしい。
 
 出版の仕事をしていると,実にさまざまな人とのお付き合いがある。職種も思想的にも多種多様で,普通なら出合うこともないはずの人との交流もある。
 その一人に,付き合いの長い某宗教団体の教祖と言われる人がいて、数年前のことこんな質問をされた。
 「まわりで、2012年の12月に人類が滅亡するって騒いでいるんだけれど、どう思う? 神様はそんなこと言ってないんだけどねえ。そんなことはないって言うと、神様にもっとちゃんと聞いてくれってうるさいんだよ」
 「うーん。僕は何事もないと思いますよ。隕石も降ってこないしブラックホールが近づいているということもない。ノストラダムスのときもそうでしたが,日常と変わらないと思います」
 「そうだよねえ。ああよかった、私と同じ考えで」
 何とも頼りない教祖様だけれど,それが結構周囲から好感を持たれている。
 ところで、ミュージシャンの「ゆず」のリーダー、北川悠仁の母君も宗教団体の教祖で、何度かお会いしたことがある。しかし、上記のコメントは彼女ではないので念のため。
 
 それにしても、終末論を信じた人間達が,世界で事件を起こしていると聞く。冷静に考えればあり得ないことなのだが、人智を超える力にすがったり怖れたりする人々は、科学・文明が進んだ現在でも少なくない。信じるのは勝手だが、他人を巻き込んでほしくないし、そのどさくさにまぎれて商売を目論む人間もどうかと思う。
 1012年12月21日も、あと8時間ほどで終る。いつもの日常と、何ら変化なし。
 
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北朝鮮、人工衛星打ち上げ

2012年12月15日 | ニュース
Gohgai
 
 実に滑稽である。北朝鮮の人工衛星打ち上げが滑稽なのではない。日本のマスコミ報道が滑稽なのだ。
 「北朝鮮が打ち上げた〈事実上ミサイル〉に搭載された物体は、衛星軌道に乗った模様です」というようなアナウンスが、テレビのニュースで複数回流れた。
 この「事実上ミサイル」とは何なのか。
 「北朝鮮は、宇宙開発のために人工衛星を打ち上げることを目的としたロケット」と言っているけれど、あれは「ロケットを装った長距離弾道ミサイルの実験だ」というのである。
 実際、ロケットと弾道ミサイルでは、先端に積まれているものが人工衛星か核弾頭かだけで、推進部分は同じものといえる。人工衛星が積まれていれば宇宙開発ロケットで、核弾頭が積まれていれば核兵器になるのだ。
 不思議なことに、この同じものが、アメリカやロシアや日本が打ち上げればロケットと呼ばれ、北朝鮮が打ち上げれば〈事実上の〉と注釈を付けられながらもミサイルと呼ばれる。
 人工衛星の打ち上げであったことがわかっても、決して「ロケット」とは言わず、あくまでも「ミサイル」で通す、これはなぜか。
 
 東西冷戦が終り、アメリカは最大の脅威であったソ連邦の崩壊とともに軍事行動の目標を失った。だが、軍需産業が基幹であるアメリカという国は、武器・兵器を大量に作り続けなければ立ち行かなくなる。第二次世界大戦終了後も、よその国の戦争に度々介入して戦争をやり続けているのがアメリカだ。
 その弊害は、アメリカ国内にもある。頻繁に起きる銃の乱射事件をなくすために、一般人の銃所有を禁じる法律を作ろうと思っても、武器・兵器製造業者とそれらの企業から恩恵を授かっている国会議員等の反対にあって、決して法案が通ることはない。
 戦争にかかる莫大な費用は、基本的にアメリカの税金でまかなわれる。それを払っているのはアメリカ国民で、兵器の購入に使われたその税金は、軍需産業に戻ってくる。国民はますます貧しく、軍需産業はますます肥え太る。このあたりの構図は、堤未果さんの『貧困大国アメリカ』(岩波新書)に詳しい。
 
 日本や韓国・台湾など、アジアに多くの米軍基地があることも、軍需産業を守るための理由の一つだが、もう一つ理由がある。現在のアメリカにとって最大の脅威は、実は中国である。中国の軍事力はここ数年でかなり拡大していて、その巨大な軍事力で国際社会での立場を高めることを目論んでいる。これは、アメリカにとって大変都合が悪い。しかし、世界一の人口を誇る中国は、経済的には巨大市場でもあり、軍事的な衝突は避けたい。
 一番良い方法として、大陸に沿って弓形のバリケード状に存在する日本に大規模な基地をおいて睨みを利かせ、その上で「平和的」な中米外交を行おうというのがアメリカの現在の考えである。
 問題は、日本を中心とするアジア周辺に展開する米軍基地を、どう正当化するかだ。アメリカにとっての事実上の脅威は、実は中国なのだが、上記のような理由から露骨に敵対することは出来ない。だから、中国以外に東アジアの緊張を高めることを考えなければならない。そこで浮上したのが北朝鮮である。金日成死後の北朝鮮は、まるで成長の止まった子どものような国である。叱られればすねるし叩けば殴り返してくる。まともな話し合いがしにくい、ガキ大将のような国なのだ。しかし、あくまでもガキ大将であって、他国に対して壊滅的な被害を与えるほどの国力はない。今回の人工衛星打ち上げでも、経済的には相当無理をしているはずだ。こんなことを続けていれば、北朝鮮そのものが壊滅する。
 ところが、そういう国だからこそ、アメリカにとっては利用しやすい。北朝鮮を敵視し抑圧すれば、ますます敵対意識をむき出しにする。そうして、北朝鮮を孤立化し、東アジアにおける脅威としてイメージさせることで、日本を含むアジアの同盟国に平和的な外交交渉を放棄させ、北朝鮮からの防衛を目的に、日本の自衛隊などに兵器を売りつけることも出来るという図式が出来上がっている。アメリカは日本に基地をおくことを正当化出来ると同時に、そこに大量の兵器を送り込むことでアメリカの軍需産業に貢献しているのだ。
 そうした目論見にまんまとはまったのが日本政府で、その宣伝をするのが大手マスコミなである。
 「あれはミサイルではなく、ロケットでした」といえば済むものを、どうしてもミサイルにしておかなければならない理由は、まさにアメリカの意向なのだ。
 どこまでアメリカに従属したいのか、いい加減にしろといいたい。
 
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小柚子の収穫

2012年12月10日 | 日記・エッセイ・コラム
Yuzu
 
 庭の小柚子が収穫期を迎えている。黄色くなってきたらもう大きくはならないので、形のよいものから収穫していかないと色が悪くなってしまう。
 快晴の今日、木のてっぺん近くに、青空にきらきらと輝く見事な形の柚子を見つけて、苦労しながら高枝ばさみでつまんだ。
 農家のように商品にするつもりなど端からないので、ことさら手入れもせず、実が成るにまかせているので大きさはバラバラ、出来具合もさまざまである。このように形のいいものはせいぜい1割くらいだ。
 今年は実が出来始める6月に台風に襲われ、パチンコ玉くらいの実が大量に落ちてしまった。それでも例年程度の収穫はあって、近所に配ったり、親戚や友人に送ったりできた。
 
 それにしても、青空と柚子の黄色はなんとよく似合うことか。わずか数センチの黄色い実が、そこにあるだけで大きな存在感を表している。
 
 大量の柚子をジャムにするという人がいた。我が家では手間がかかりすぎるので作らない。
 もっぱら料理に使う。焼き魚にはもちろんだが、焼うどんなど、和風の炒め物には香りづけになる。皮をお吸い物に落としてもいい。
 意外と思われるかもしれないが、ビールにしぼって入れると、これが実に美味だ。人に勧めると「えっ?」という顔をされるが、メキシコビールのコロナをバーなどで注文するとライムがついてくるので、同じ柑橘類なのだからと、発泡酒に入れてみたのが最初で、これが思いのほか美味かった。発泡酒はビールに比べるとコクがないので嫌う人もいるけれど、ライム代わりに柚子を入れることで、コクは出ないが味わい深くなる。
 オーソドックスなところでは、焼酎のハイボールがいい。大きめのグラスに氷と焼酎を入れて、小柚子1個をレモン絞り器で絞り、ソーダで割る。我が家で友人たちと飲み会をやったとき、これが大好評で、ビールやワインも用意していたのだが、それらには手を付けず、われもわれもと小柚子酎ハイを作っては飲み、柚子が足りなくなって、夜暗い中を手探りでゆずを収穫した。
 おかげで棘が刺さって手が傷だらけになった。
 
 実はこの棘がくせ者で、収穫するために枝の間に潜り込むと、頭といい手足といい、ところ嫌わずひっかかる。そのせいで収穫がなかなかはかどらない。これは害鳥などを近づけず、出来るだけ多くの実を残し、子孫を繁栄させるための防御なのだ。つまり、人間も柚子にとっては搾取する側というわけである。
 以前、半村良の『妖星伝』だったか、異星人が地球にやってきて「なんと醜い星だ。命に満ちあふれている。しかもそれらがお互いを食い合っている」というのを読んで、そういう見方もあるんだなあ、と思ったことがある。でも、命を食わなければ人間は生きていけない。
 以前、料理研究家の小林カツ代さんから「いただきます」の意味を教わった。「これは、〈いのちをいただきます〉と、命がけで私たちを支えてくれている動物や植物への感謝の気持ちです」と。
 
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小熊英二『増補改定 日本という国』

2012年12月08日 | 本と雑誌
Nihon_toiukuni
 この本は、このブログの読者の方からご紹介いただいた。
 小熊英二といえば『1968』とか『〈民主〉と〈愛国〉』とか『〈日本人〉の境界』など、分厚い本にばかり目がいっていて、中高生向けのこんな本が出ていることを知らなかった。もっとも、彼の著作を読み始めたのが昨年からだから、意識の外にあったとしても不思議はない。
 で、中高生向けにどのような文章を書いているのか興味があって、取り寄せて読んだ。200ページほどで、通勤電車の2往復もあれば読めてしまうボリューム(これも小熊英二のイメージからすれば驚異だ)で、語り口からして、近所のお兄さんが子どもたちを集めて「お話」をしているような雰囲気だ。しかも、簡潔によく書けている。
 「なんだ、こんなふうにまとめることも出来るんじゃないか」と思ったのだが、もしかすると編集者かライターの力かもしれない。
 それはさておき、なかなかいい。難しい話が苦手なカミさんが、作業テーブルの上に開きっぱなしになっていたこの本を見て、「読み終わったら貸して」と言って、先ほど持っていった。
 余談だが、カミさんは面白そうな本を見つけると次々に持っていく。ところがほとんど読了していない。寝室のチェストの上に積み上げてあって、それが結構な高さになっていく。中には手元においておきたい本もあるので、頃合いを見計らって取り返す。でも、どの本を取り返されたのかまったく気付いていない。
 「読もうと思ったら見つからないんだけれど、持っていった?」と聞かれたことは一度もないのだ。
 つまり、リスと同じだ。ため込んで忘れる。
 しかし、この本くらいは最後まで読み終えるだろう。これを放り出されたらいくらなんでも問題だ。
 つまり、集中力にいささか欠陥のある人でも、読むことが出来るということだ。
 それを裏付けるかのような、尾崎行雄が福沢諭吉に会った時の逸話が紹介されている。
 福沢諭吉は毛抜きで鼻毛を抜きながら尾崎に、「誰に読ませるつもりで本を書いているのか」と聞く。尾崎が「識者に読ませるつもり」と答えると、「ばかもの、猿に読ませるつもりで書け」と言ったそうだ。
 ということは、小熊英二の『日本という国』も、きっと「猿に読ませるつもり」で書いているのだろうから、これが読めないと「猿以下」ということになる。
 だが、文字が読める「猿」には、いまだお目にかかったことはない。
 
 この本を読んだ高校生は、学校で習ったこととあまりも違うので戸惑うかもしれない。まず、お札の肖像にもなり、日本を代表する知識人で、歴史的偉人とされる福沢諭吉が、実は「軍国主義」を形成するために学校教育をすすめたなどと、学校で教えたりしない。しかしこれは事実で、福沢のことをちょっと勉強した人ならたいてい知っている。(『福沢諭吉と丸山眞男』という本をはじめとして、いくつか福沢批判の本がある)
 だけれども、学校では人生の手本みたいな人として教えるから、中高生には何の欠点もない理想的な人物として刷り込まれている。そこにきて、日清・日露戦争などの侵略戦争を行うため、大日本帝国という植民地主義国家の推進に尽力した、などという内容に接すれば、「ウソだ、聞いてねえよ!」と思うだろう。
 でも本当なのだ。
 「天は人の上に人を作らず……」という有名な言葉が、福沢諭吉が言ったことでないことは、おおかたの人が知っている。しかしなぜ、『学問のすゝめ』の冒頭にこの言葉を持ってきたのかは、『学問のすゝめ』を読んだことのある人にもあまり理解はされていない。
 「〈天は人の上に人を作らず……〉といっても、実際には人には上下があり、下の方にいたくなければ勉強しろ。そして偉くなって金を儲けろ」、というのが『学問のすゝめ』で福沢が言っていることだ。格差のない社会を作ることが目的のように見せて、実は格差を作るために「学問」をすすめ、慶応義塾を作ったというわけだ。
 
 この本は、大きく2章に分かれていて、第一章は以上のような日本の黎明期について書かれている。
 第二章は、おもに近代から現代にわたる日本についてで、これは小熊英二の専門である。面白い個所はたくさんあったが、印象に残ったところは、前半に比べてちょっと難しくなるけれども(猿では理解できないだろう)、日米同盟とアジア諸国の関係についてだ。
 米軍が沖縄など日本に駐留しているのは、日本を他国の脅威から守ることではなく、日本が軍国主義化することを抑えるため。つまり、抑止力は中国や北朝鮮に対して働いているのではなく、自衛隊の暴走を抑えるためにある。実際、アメリカは韓国や中国にそのように説明しているという。
 米国に「思いやり予算」などのような、莫大な駐留経費を払っているのは日本だけで、だからアメリカは出て行かない。もし基地の駐留がアメリカにとって「儲からない」とわかれば、さっさと出て行くだろう。実際、フィリピンでは駐留費が支払われないことで撤退した。撤退後も、フィリピンが他国の脅威にさらされることはなく、アメリカともうまくやっている。
 内容のいくつかは、『社会を変えるには』と重複する個所が多い。しかし、それを「猿」でも理解できるように書くとこうなる、という見本のようで、両方を比較すると若者向けに原稿をまとめるときの参考になる。
 
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一票の格差とは

2012年12月06日 | インポート
 今度の選挙は、違憲状態とされる「一票の格差」が是正されないまま行われる。
 この「一票の格差」は、「小選挙区制」の弊害の一つで、「中選挙区制」の時にはほとんど問題にされなかった。
 過去に何度か「小選挙区制」で行われた選挙はあったが、1928年から1993年の衆議院選挙までは「中選挙区制」だった。
 というようなことを、今中学校の公民で教わっている長男に話したが、そもそも「小選挙区制」と「中選挙区制」の違いがわかっていない。聞けば、高校生でもわかっていない人が多いらしい。
 だから、次のようなことから説明していかなければならないのだ。
 今日の記事は、中高生向けだ。
 
 「小選挙区制」とは、選挙区を細かくわけて、一つの地域で一人の国会議員を選出する選挙の方式だ。
 「中選挙区制」とは、もう少し広い選挙区で、一つの区域で二人以上の国会議員を選出する方式で、その地域に住む有権者の数で当選する国会議員の数が決められる。
 
 それぞれのメリットとデメリットについて説明しよう。
 「小選挙区制」は「中選挙区制」に比べて範囲が狭いので、選挙運動の労力と選挙費用を節約することができる。一人しか当選できないので、対立候補に投票することで嫌いな候補を落選させやすい。前回の選挙で民主党が政権交代を実現させたように、二大政党間で一気に政権が変わることが起きる。
 最大の欠点は、二番手三番手の政党が、国会議員を送りにくいことだ。「中選挙区」なら、二番目や三番目で当選できたのが、トップの一人しか当選できないので、国民の多数に支持される政党がますます議員の数を増やすことになる。
 実際に、共産党や社会党(現・民社党)は、選挙制度が変更されてから、国会議員の数が極端に減ってしまった。
 現在の選挙制度では、そうした弊害をフォローするために、「比例代表」という選出方法が行われていて、これは個人ではなく、支持する政党に投票する。その得票数に応じて、あらかじめ登録された選挙名簿の上から順番に当選者が決まる。
 しかし、「比例代表」で選ばれる国会議員の数は、定数全体の三分の一程度なので、小さな政党にとっては、かろうじてゼロににならない程度しか当選者が出せない。
 ちなみに、共産党は9人の衆議院議員がいたけれど、すべて「比例代表」で選出された議員だ。かつては、30人以上の衆議院議員を当選させたこともあった。
 つまり「小選挙区制」はマイノリティーの意見がくみ上げられないので、決して民主的な制度とは言えないのだ。

 
 そこで、「一票の格差」の話になる。
 ここで言う「格差」とは、一票の価値の大きさだ。有権者の数が多いほど、候補者は当選するのにたくさん得票しなければないから、一票あたりの価値がそれだけ低くなる。
 千葉4区は有権者の数が49万7601人で最も多く、高知3区は20万4930人で最も少ない。その差は2.43倍で、千葉4区の有権者の一票の価値は高知3区の半分以下、ということになる。これは憲法第14条に規定された「法の下の平等」に反することになり、昨年3月には最高裁で「違憲状態」であると判断された。
 
「中選挙区制」でも格差はあった。しかし、有権者の多い選挙区と少ない選挙区で、当選者の数を調整することである程度是正できていたからあまり問題にならなかった。
 ところが、当選者が一人と決められている「小選挙区」ではそれが出来ない。選挙区の区割りを変更するには法律を改正するしかないからだ。その法案が今度の選挙の直前に成立したのだけれど、作業が間に合わず、手がつけられないまま選挙が始まってしまったというわけだ。
 
 なので、大きな政党に有利な「小選挙区制」は、いろいろな意味で民主的とは言い難い要素を含んでいる。もう一度中選挙区制に戻して、マイノリティの意見が取り上げられるような国会にするべきだと思う。

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東京8区はあの人が!

2012年12月06日 | ニュース
 多くの問題を残したまま、ダブル選挙に突入した。
 大方の予想通り、衆議院はふたたび自民党が過半数を獲得しそうな勢い。
 それにしても、あんなに嫌っていた自民党に、なぜ国民はふたたび政権を返そうとするのか、「ちゃんと考えようよ」ときちんとした方向性を求めたいのだが。
 
 我が事務所のある杉並区(東京8区)には、あの山本太郎君が立候補している。
 ご存知のように、彼はドラマやバラエティでずいぶん売れっ子だったのだが、脱原発発言でテレビなどから嫌われて、迷惑をかけないためと所属事務所も辞め、番組での露出がすっかりなくなってしまった。それでも、集会やデモなどには積極的に参加して運動を続けている。
 この選挙では、日本未来の党と社民党の推薦を受けている。
 
 打ち合わせで出かけた某社で、「杉並って、山本太郎が出てるんだよね。いいなあ」と言われた。今度の選挙、民主党はイヤだし、かといって自民党はもっとイヤ。だもので、どこに投票していいかわからなくなっている人が多数いる。杉並区も山本太郎が出なければ当選する可能性がほとんどない共産党の候補者に投票するしかないわけで、彼の「いいなあ」という気持ちはとてもよく伝わってくる。
 
Taroh_yamamoto1
 阿佐ヶ谷駅前で。
 
 初めて見たのは公示当日の阿佐ヶ谷駅前で、選挙カーの上から演説をしていた。へたくそで、論理は破綻しているし、自分でも何を言っているのかわからなくなるしで、「大丈夫かなあ」と心配になった。それでも、まっすぐな一生懸命さは伝わってきた。
 以前「世界不思議発見」という番組に出演して、コテカ(ペニスケース)一つで走り回っていたのが印象的だった。何にでも一本道をまっしぐらな人だと思った。
 阿佐ヶ谷駅前の演説は、昼間だったので聴衆の数は少ないものの、足を止めて携帯カメラに収める人はたくさんいた。
 
 Taroh_yamamoto2
 荻窪駅前で、ファンと。
 
 昨日の夕方、荻窪駅ルミネの前から「山本太郎……」という声が聞こえたので、近づいてみた。
 ちょうど帰宅時間と重なって、結構な人の輪が出来ていた。ほとんどの人はカメラや携帯で写真を撮り、一緒にカメラに納まるファンも多数いた。ちょっとしたAKB状態。
 「写メはどんどん撮っていただいていいですよ、でも独り占めしないでお友達に見せてくださいね」とウグイス嬢がアナウンスする。 
 握手して、「絶対当選して」と声をかけてきた。
 
 カミさんに「駅前に山本太郎が来てるよ」と電話したら、「え、すぐ行く!」と自転車でとんで来た。ミーハーだ。
 
 山本太郎は出馬を表明した時に、「強い人と戦いたい」といっていたが、まさか石原伸晃で鉄板とも言われる8区から立候補しようとは。人気がすべて得票には結びつかないだろうから、いささか自爆攻撃の感が否めないが、少しでもおびやかすことが出来たなら、それはそれで成果だろう。
 
 
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勅使河原宏監督『砂の女』

2012年12月03日 | 映画
Sunanoonna1

 『砂の女』の原作は、1962年に新潮社の「純文学書下ろし特別作品」というシリーズの1冊として出版された、安部公房の代表作である。
 このシリーズ、上製本の表紙の上にカラー印刷のカバーをかぶせ、それをビニールカバーで覆ってさらにケース入りにした現在では考えられない豪華な装幀であった。当時の流行作家による作品を次々に発表してなかなかの評判で、実際優れた作品が多い。そのためか、シリーズ刊行当初のケースは簡単な作りのものであったが、発行部数の増加とともにエスカレートして、すぐに貼り箱になった。上製、カラーのカバー、ビニールカバー、さらに貼り箱とこれでもかというくらいの贅沢な装幀は、他社から「十二単」と揶揄されたりしたものである。
 しかしさすがにこの出版不況でこんなばかばかしい装幀はなくなって徐々に簡略化され、やがて普通の上製カバーの単行本になった。手元にある最も新しいのは、丸山健二の『虹よ、冒涜の虹よ』(1999年)で、これが「純文学書下ろし特別作品」の一つであったことは、購入してから気付いた。
 『砂の女』が発行された昭和30年代の終り、自分はまだ高校生で、読む小説といえば芥川龍之介や夏目漱石など、日本の古典が中心だった。そのころ、大江健三郎の『死者の奢り』にある「大学の医学部で、アルコール水槽に保存されている解剖用の死体を処理するアルバイト」の噂が広がっていた。初期の大江作品は最近のものよりも平易で、『死者の奢り』などは高校生でも十分に理解できた。それがきっかけになって、ようやく近代文学に手を出し始めていた。
 そんな折、何の展覧会だったか家族と上野の美術館に出かけ、入場の順番を待っている時に、春さきの温かな石段に腰掛けて本を読んでいる芸大生と見えるひげ面の若者が目にとまり、何ともかっこ良くまぶしく感じた。その彼が本を綴じて立ち上がったとき、垣間見えた本のタイトルが『砂の女』だった。
 帰りがけに早速、当時の高校生としては大金の350円也をはたいてケース入りの「立派な」本を購入し、読み始めた。夏目にも芥川にもない、自由な筆致と独特の文体、斬新な発想にすごい衝撃を受け、それから安部公房作品を次々に読み始めたのである。
 それを見た父親は、「なんだこれは。何を言おうとしているのか広範な大衆には理解できない小説だ。一部のインテリやブルジョアに読ませる反動的な意図を持って書かれている」などと、持論の社会主義リアリズムを主張して渋い顔を見せていた。かといって禁止するでも取り上げるでもなかったから、まあ、父親としてのアイデンティティを表したかっただけなのだろう。
 
Sunanoonna2
 
 『砂の女』が映画化されたときは喜び勇んで観に行った。友人を誘ったのだが、友人たちはまだ吉永小百合や和泉雅子の青春映画に夢中で、「訳のわからない」映画には誰もつき合ってくれず、結局新宿の映画館にはひとりで行った。
 現在の目で見れば何のことはないのだが、男女の性を表現することにまだ厳格な風潮が残っていた時代、思春期の若者にとって、岸田今日子の肌は何とも刺激的であった。興味の半分以上がそれに向いてしまったのは否めないが、安部公房自身が脚本にしただけあって、原作の意図が一層明確に感じた。
 岡田英二がシャベルで砂を掘りながら、乳酸がたまった腕を「筋肉にセメントを流し込まれたらこんな感じがするんだろうなあ」という、特徴的な台詞に「安倍ワールド」を感じ、嬉しく思った。
 主人公が昆虫採集に訪れる「砂丘」、「昆虫」をはじめ、あり地獄のような砂のくぼみや、そこに上り下りする「梯子」、貴重な「水」などなど、すべてがメタファで現代の社会にも通じる。閉鎖的な社会から逃げ出そうとすれば、その社会を構成する人間たちによって引き戻される。理不尽な環境にあっても、やがてそれに同化し、なんとかその暮らしの中から希望を見いだそうとする、昆虫のような人間たち。
 今の視点から見れば、「原発のある社会」を受け入れようとする人間に対する皮肉ともとれる。ロケ地が偶然にも、原発が出来る前の浜岡砂丘であったことも、出来過ぎの偶然だ。
 安部公房の作品は、メタファの連続であって、しかもわかりにくい。深く追究すればキリがないが、ただひたすらシュールな安倍ワールドに浸るのも悪くないと思う。
 
 監督の勅使河原宏(1927年~ 2001年)は、安部公房作品(『おとし穴』『他人の顔』『燃えつきた地図』)を中心に、生涯わずか10本ほどの作品しか発表していない。『砂の女』が公開された当時、無名ではなかったのだろうけれど、自分にとっては未知の人で、草月流の創始者である勅使河原蒼風の長男としてだけの印象だった。
 『砂の女』は数少ない作品の中で秀逸な代表作である。ほかに『利休』(1989年)が有名である。
 映画『砂の女』は日本映画専門チャンネルで12月7日までの毎朝9時から。
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