合同出版からイラクに関する本が2冊発行されたと聞いて、読んでおかなければと思いつつそのままにしていたら、今日、他の資料と一緒に送られて来ました。
『イラク崩壊』
米軍占領下、15万人の命はなぜ奪われたのか
吉岡一 著(合同出版)
著者の吉岡一(よしおか はじめ)氏は2004年から2007年まで中東アフリカ総局特派員を務めた朝日新聞の記者。アメリカの占領によって、崩壊していくイラクのようすをつぶさに見て来ました。
著者があえて危険を侵して書き上げた渾身のレポートは圧巻。
ただ、確かなことがひとつだけある。武装勢力と呼ばれる組織に身を投じ、米軍と戦って死んでいく何千ものイラクの若者は、ほんの最近まで、「アルカイダ」とも「9.11同時多発テロ」とも、なんの関係もなかった、という動かしがたい事実だ。
イラクで今、テロリストと呼ばれるどんな人間も、米軍が来るまで、テロリストと呼ばれる理由もなければ、状況もなかった。
アメリカがイラク戦争を始めなければ、15万1000人ものイラク人は、死ななくてよかったはずなのだ。
◆
『イラク 米軍脱走兵、真実の告発』
ジョシュア・キー(元アメリカ陸軍上等兵)著
ローレンス・ヒル 構成
井手真也(NHKディレクター)訳(合同出版)
著者のジョシュア・キーは元アメリカ陸軍上等兵。2002年4月、アメリカ陸軍に入隊し、イラク戦争開戦から3週間後の2003年4月、イラク中部の最前線に配属されました。
現地で、アメリカ軍によるイラク市民への数々の非人道的行為、戦争犯罪を目の当たりにし、一時帰国中の2003年12月に軍から脱走。追っ手から逃れながら家族とともに1年以上にわたりアメリカ各地に潜伏した後、2005年、国境を越えてカナダに逃亡。
現在、反戦NPOの支援のもと、カナダ政府に対し難民認定による保護を求めながらカナダで暮らしています。
アメリカはイラクで何のために何をしたのか、若い米兵たちは何を目的にどんな思いでイラクに行ったのか。
かつて、日本の軍隊がそうであったように、戦争はいとも簡単に人間の尊厳を破壊して、「ヒト」を「オニ」に変えてしまいます。
この本は、自分と家族の暮しを守るためだけに軍隊に入り、気付けばイラクで人を殺す仕事をしていた、一人の「普通」の若者の告白です。
ぼくはアメリカ軍から脱走したことについて、絶対に謝罪しようとは思わない。ぼくは不正義から脱走したのであり、それは進むべき正しい道だった。謝罪すべきことがあるとすれば、ただひとつ、それはイラクの人びとに対する謝罪しかない……。
話は違いますが、合同出版は他の出版社に比べると定価が安い。たとえば上記の『イラク崩壊』は400ページを越える大部でありながら1800円。小説と違ってこの手の本は初版刷り部数が限られていますから、どうしても割高になるはず。ほぼ同じボリュームのみすず書房から出ている『東京裁判』は5200円もしますし、作品社の『新自由主義』でも2600円。
『イラク 米軍脱走兵……』のほうは256ページで1600円。大月書店の『「百人斬り競争」と南京事件は288ページですが2600円。
先日、合同出版の社長に「合同さんは本の値段が安いですね」と投げかけてみました。
「そう、うちは給料が安いから、ははは」
あながち冗談ではありません。社会科学書のような地味な出版物を発行する出版社は、年々平均年齢が高くなって、平均50歳以上という出版社も少なくないとか。そうなればどうしても給料が高い。
若い編集者はIT関連の出版物や流行の小説を出すような出版社に流れてしまいがちなようです。そうした中で、けっして合同出版の平均年齢がとくに低いとは思えませんが、まあ一見30代後半から40代前半でしょうか。他社に比べれば低い。
かつて、父親の経営するT出版社の本があまりにも安価だったので、どうしてこんなに安くするのか聞いたことがあります。
「労働者は高い本など買えん!」
こう一喝されました。
だから、ちっとも儲かりませんでしたが、今でも経営者が代わって存続しています。
◆~~~~◆~~~~◆~~~~◆~~~~◆~~~~◆
◆出版のご相談承ります◆
メールでお気軽に galapyio@sepia.ocn.ne.jp まで
『イラク崩壊』
米軍占領下、15万人の命はなぜ奪われたのか
吉岡一 著(合同出版)
著者の吉岡一(よしおか はじめ)氏は2004年から2007年まで中東アフリカ総局特派員を務めた朝日新聞の記者。アメリカの占領によって、崩壊していくイラクのようすをつぶさに見て来ました。
著者があえて危険を侵して書き上げた渾身のレポートは圧巻。
ただ、確かなことがひとつだけある。武装勢力と呼ばれる組織に身を投じ、米軍と戦って死んでいく何千ものイラクの若者は、ほんの最近まで、「アルカイダ」とも「9.11同時多発テロ」とも、なんの関係もなかった、という動かしがたい事実だ。
イラクで今、テロリストと呼ばれるどんな人間も、米軍が来るまで、テロリストと呼ばれる理由もなければ、状況もなかった。
アメリカがイラク戦争を始めなければ、15万1000人ものイラク人は、死ななくてよかったはずなのだ。
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『イラク 米軍脱走兵、真実の告発』
ジョシュア・キー(元アメリカ陸軍上等兵)著
ローレンス・ヒル 構成
井手真也(NHKディレクター)訳(合同出版)
著者のジョシュア・キーは元アメリカ陸軍上等兵。2002年4月、アメリカ陸軍に入隊し、イラク戦争開戦から3週間後の2003年4月、イラク中部の最前線に配属されました。
現地で、アメリカ軍によるイラク市民への数々の非人道的行為、戦争犯罪を目の当たりにし、一時帰国中の2003年12月に軍から脱走。追っ手から逃れながら家族とともに1年以上にわたりアメリカ各地に潜伏した後、2005年、国境を越えてカナダに逃亡。
現在、反戦NPOの支援のもと、カナダ政府に対し難民認定による保護を求めながらカナダで暮らしています。
アメリカはイラクで何のために何をしたのか、若い米兵たちは何を目的にどんな思いでイラクに行ったのか。
かつて、日本の軍隊がそうであったように、戦争はいとも簡単に人間の尊厳を破壊して、「ヒト」を「オニ」に変えてしまいます。
この本は、自分と家族の暮しを守るためだけに軍隊に入り、気付けばイラクで人を殺す仕事をしていた、一人の「普通」の若者の告白です。
ぼくはアメリカ軍から脱走したことについて、絶対に謝罪しようとは思わない。ぼくは不正義から脱走したのであり、それは進むべき正しい道だった。謝罪すべきことがあるとすれば、ただひとつ、それはイラクの人びとに対する謝罪しかない……。
話は違いますが、合同出版は他の出版社に比べると定価が安い。たとえば上記の『イラク崩壊』は400ページを越える大部でありながら1800円。小説と違ってこの手の本は初版刷り部数が限られていますから、どうしても割高になるはず。ほぼ同じボリュームのみすず書房から出ている『東京裁判』は5200円もしますし、作品社の『新自由主義』でも2600円。
『イラク 米軍脱走兵……』のほうは256ページで1600円。大月書店の『「百人斬り競争」と南京事件は288ページですが2600円。
先日、合同出版の社長に「合同さんは本の値段が安いですね」と投げかけてみました。
「そう、うちは給料が安いから、ははは」
あながち冗談ではありません。社会科学書のような地味な出版物を発行する出版社は、年々平均年齢が高くなって、平均50歳以上という出版社も少なくないとか。そうなればどうしても給料が高い。
若い編集者はIT関連の出版物や流行の小説を出すような出版社に流れてしまいがちなようです。そうした中で、けっして合同出版の平均年齢がとくに低いとは思えませんが、まあ一見30代後半から40代前半でしょうか。他社に比べれば低い。
かつて、父親の経営するT出版社の本があまりにも安価だったので、どうしてこんなに安くするのか聞いたことがあります。
「労働者は高い本など買えん!」
こう一喝されました。
だから、ちっとも儲かりませんでしたが、今でも経営者が代わって存続しています。
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