ひまわり博士のウンチク

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『アジア記者クラブ通信』264

2014年08月15日 | ニュース
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「パレスチナとイスラエル」
 本号で注目したのはパレスチナとイスラエルについての記事だ。
「イスラエルの子供たちは教育と軍事訓練で洗脳される」では、イスラエルの子供たちが幼少時から教育でパレスチナへの憎悪を叩き込まれている。これはかつてのナチス・ドイツや日本の戦時教育に共通する。
 かつてユダヤ人がシオニズムの名のもとに、シオンの丘に建国するためヨーロッパからパレスチナに渡り、パレスチナ人が住む土地を侵略した史実についてはまったく教えられず、逆にパレスチナ人がイスラエルを侵略していると教育される。イスラエル軍が猛烈な爆撃でガザを攻撃するのは、“正当防衛”だというのだ。
 しかし、「殺害されているのは圧倒的にパレスチナ人だ」では、ハマスが掘ったイスラエル側に通じるトンネルが“脅威”だとして、それがイスラエルの戦争遂行の理由となっていることを語る。しかし、そのトンネルを悪用しているのはイスラエル側である。その証拠に、7月8日以降、7月末までの死者は、パレスチナ側が1101人であるのに対し、イスラエル側はわずか58人である。ハマスのロケット弾がイスラエルに1発着弾すると20発の爆弾が落とされる勘定だ。犠牲者の多くに幼い子供も含まれている。
 以前、何かの集まりで、フォトジャーナリストの土井敏邦が、「パレスチナ人もイスラエル人を殺してるじゃないかという人がいるが、規模がまったく違う」と言っていた。
 
「迫るカジノ解禁とギャンブル依存症」
 8月の定例会のテーマはカジノ解禁問題である。
 沖縄の仲井眞知事が普天間基地の辺野古移設を承認する引き換えに、本島北部振興のためにカジノ建設の約束を取り付けたことは、本土ではあまり知られていない。
 現在、19の自治体がカジノ誘致を計画または検討中であるが、これもまた大手メディアが報道しないのでほとんど周知されない。ただでさえ世界有数のギャンブル大国である日本は、ギャンブル依存症患者の数もトップクラスである。そのために借金地獄に陥ったり、横領、詐欺などの犯罪行為におよぶものも相当数におよぶ。しかもこれは本人だけの問題ではなく、周囲の人々を巻き込んだ重大問題に発展する社会問題である。
 カジノの実態についての研究はまだ始まったばかりであるが、この問題と真摯に向き合い解決の手段を探る静岡大学の鳥畑教授と、ギャンブル依存症に関わるサラ金・クレジット被害の撲滅活動に携わる吉田哲也弁護士からお話をうかがう。
 私は、この問題をこれまでさほど重視していなかったが、はじめてお二方の話を聞いたときに愕然とした。集団的自衛権や原発再稼働、沖縄の基地問題など、国家的な大問題の陰に隠れていつのまにかすすめられている理不尽なカジノ賭博場解禁が、絶対に見過ごすことのできない問題であることを確認した。

 講演会情報は以下。(*クリックで拡大。A4サイズ)
 
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『徹底批判!! カジノ賭博合法化』

2014年08月03日 | 本と雑誌
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 「特定秘密保護法」「集団的自衛権」などの重要課題の陰に隠れて、カジノ誘致に関する報道はほとんどなされておらず、現在東京、大阪、沖縄を含む19の自治体にカジノ誘致計画があることはまったくといっていいほど周知されていない。
 沖縄県の仲井眞弘多知事は、普天間基地の辺野古への移転受け入れと引き換えに、沖縄本島北部振興策としてカジノ誘致許可を安倍政権から取り付けた。仲井眞知事はさっそく県庁内にカジノ誘致のための準備室をおき、調査のための予算も付けたという。当然沖縄では、カジノ誘致計画に反対する市民運動が立ち上がったが、本土では対岸の火事とばかり中央メディアの報道はまったく見られない。
 しかし東京でも、石原慎太郎前知事が「お台場カジノ構想」をぶちあげたことは記憶に新しく、その計画が知事の退任とともに完全消滅したと考えられているが、しかし、知事の一声でいつでも計画が復活する状態におかれている。
 多くの自治体がカジノ誘致を目論む目的は何かといえば、カジノ賭博場を通じて多額の現金が自治体にもたらされると考えられるからにほかならない。実際、ラスベガスは砂漠の真ん中にありながら繁栄を極め、韓国やマカオでもカジノは外貨獲得の有力な手段となっているといわれる。
 本書は、第1章で本来違法であるはずの賭博がどのような法的処理で可能にされているのか、また、合法化にあたっての矛盾や課題などについて述べる。
 第2章では、カジノ建設の目論見である経済効果が、実際に自治体を豊かにできるのか、国民の資産がどこにどう動くのかを、経済学的な観点から分析する。
 第3章では、日本ではほとんど病気と認められていないギャンブル依存症についての現状と、カジノ賭博場が開かれることによって、それが国民にどのような影響をおよぼすのかについて述べる。
 第4章では、韓国とマカオのカジノ賭博場を実際にレポートし、その繁栄の影に売春や借金問題など、報道されないさまざまな現実を検証していく。

海外からに観光客は期待できるのか
 しかし、本当にカジノは税収入に苦しむ自治体にとって打ち出の小槌となるのであろうか。また、プラスの面ばかりが強調される傾向にあるが、マイナス面はないのか。もしあるなら、それは容易に解決可能なことであるか、あるいは負の部分を受け入れるに足る経済的なプラスがあるのか。それらを総合的に検証すると、国民に容易に癒しきれない傷を負わせることが見えてくる。
 第一目的はまぎれもなく経済面であり、第二も第三もない。その根拠として、近隣諸国から訪れる富裕層が莫大な現金をカジノ賭博場に落とし、その収益によって巨額の法人税を得ることができるというものである。また、国内においては、タンス預金などで眠っている個人資産をカジノにつぎ込ませることで、経済が活性するという意見もある。
 だが、その目論見は極めて実現性に乏しい。まず、日本に来る観光客の多くは韓国人と中国人であり、両国とも自前のカジノ賭博場を持っている。韓国では当初、カジノは外国人観光客専用であったが、2000年に自国民向けの「江原(カンウォン)ランド」がオープンし、わざわざカジノを目的に外国に行く必要がなくなった。中国では賭博は厳重に禁じられているが、1999年にマカオがポルトガルから返還され、一国二制度のもとにマカオにはそのままカジノが残された。以降ラスベガス資本の参入などによって新たな賭博場が続々と建設され、2006年には売上高でラスベガスを抜き世界トップに躍り出た。客の多くは中国を中心とした近隣諸国の富裕層で、近くにラスベガスを凌ぐカジノ賭博場があるのに、わざわざ沖縄や大阪などの小規模なカジノを選んで海外から客が訪れるとは到底思えない。

周囲の人間をも巻き込むギャンブル依存症
 そうなると当然、カジノの客のほとんどは自国民ということになる。
 カジノとは、客が負けることを前提として経営が成り立っている。賭けに負けて客が落としていく金が、カジノの収益になる。そこに生産性はまったくない。カジノの客が地元の人間であるとするならば、自治体はカジノ会社が地元民から金を巻き上げる手助けをし、そのおこぼれをもらうことになる。これは資本主義経済の面から見ても、タコが自分の足を喰っている状況できわめて不健全である。
 しかしそれよりも、もっと重大な問題が待ち受けている。日本は、世界有数のギャンブル大国である。ギャンブルが法律で禁じられているにもかかわらず、競輪・競馬や競艇・オートレースなどの公的なギャンブルは合法とされ、パチンコ・パチスロの店数は日本が世界最多とされている。ちなみに、韓国でパチンコは禁止されている。
 そうした環境において、ギャンブルに関わる重要問題が「ギャンブル依存症」である。この問題が複雑なのは、ギャンブル依存症患者の多くが自らが病気であることを認めず、周囲も個人の意志の問題にしてしまうからである。
 ギャンブル依存症が病気であることの理由は、自分の行動が自分で制御できなくなってしまうことにある。ギャンブル依存症患者は、ギャンブルで負けると、そのときは「もうやめよう」と思う。しかし、一晩寝れば「今日は勝てそうだ」と何の根拠もなく思い立ち、パチンコや競馬場に向かう。その繰り返しの結果、金がなくなれば消費者金融に走り、それができなくなると横領や窃盗などの犯罪を犯すまでになる。ついには親に泣きつき借金を精算してもらうのだが、銀行に返済に向かう途中でパチンコ屋を見つければ、手にした返済金をすべてつぎこんでしまうのだ。金がなくなるたびに後悔するものの、それでもギャンブルをやめることができない。これは薬物依存やアルコール依存と同様、病気なのである。
 カジノ賭博場は、ギャンブル依存症患者の数を増大させるだけでなく、家族や地域社会を巻き込んだいっそう重篤な病を住民のあいだに伝染させることにもなる。
 これは、地域経済を活性化させるための引き換えとしては、あまりに悲惨ではないだろうか。つまり、カジノ賭博場解禁は、一部の政治家と財界人を肥やすだけで、一般国民にとってはマイナス以外の何ものでもないということなのだ。

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