ひまわり博士のウンチク

読書・映画・沖縄・脱原発・その他世の中のこと

「主権回復の日」と日米地位協定

2013年04月29日 | ニュース
 「主権回復の日」という実に乱暴な記念日を制定して、政府は4月28日に式典を行った。
 当然、沖縄は猛反発。ところが、なぜ沖縄が反発するのか、政府の首脳はよくわかっていなかったらしい。
 そのことを、この前々日におこなわれた「アジア記者クラブ」の定例会で、元琉球新報の論説委員で現沖縄国際大学教授の前泊博盛氏が明らかにした。
 
Maedomari1
 
 詳細は、「アジア記者クラブ通信」の6月号に掲載されるので、興味のある人は取り寄せて読むことができる。ここでは概略だけ紹介したい。
 
 【主権の日】
 ご存知の通り、「主権回復の日」というのは、今から61年前、「サンフランシスコ講和条約」が発効し、アメリカの占領から解放された日を記念しておこなわれた。
 ところがこのときに、沖縄、奄美、小笠原は日本から切り離され、アメリカに占領されたままだった。つまり、沖縄、奄美、小笠原に関しては、主権の回復はなかったのである。したがって、沖縄では反対集会が開かれ、式典に仲井眞県知事は欠席した。
 問題は、安倍内閣が沖縄の反発を予測していなかったことにある。一言でいえば、「よくわかっていなかった」。つまり、日本は沖縄、奄美、小笠原は日本ではないというアメリカの主張を容認したのがサンフランシスコ講和条約」であって、多くの沖縄県民にとっては「屈辱の日」であり、沖縄独立論を唱える人々にとっては、「ならば独立できるじゃないか」ということになる。
 もし沖縄が日本でないとするならば、尖閣諸島は日本のものではなくなる。日本が尖閣諸島の領有を主張するのは、それがかつて琉球王国の領地であったことが前提となり、そこに移り住んだのが沖縄県民であるからだ。
 「沖縄が日本でないなら、尖閣は吹き飛びます。安倍総理は『しまった』と思っているでしょうね。たぶんこの式典は今年だけで、来年からは行われないでしょう。無知な人々がこういう式典を開き、政治の中核を担うと言う危険性を、今の日本は抱えています」と前泊氏は語る。
 
 【オスプレイ】
 「オスプレイの飛行訓練エリアとして、北海道は報道されないんです」
 えっ? と思った。たしかに新聞で見る限り、沖縄以外でのオスプレイの低空飛行訓練エリアに北海道はなかった。どういうことなのかというと、北海道は「オスプレイ訓練のために新たに作られたエリアではない」からだそうだ。だとすると、公表されていない訓練エリアがどれだけあるのかわからない。
 ちなみに、アメリカ本土では人家のある地域でオスプレイの訓練がおこなわれることはない。危険だからだ。それを日本では何の躊躇もなくおこなわれ、日本政府は反対するどころか日米関係強化のためだと理由をつけて推進すらする。
 これは、原発と同じ論理で、福島第一原発で作られた電気が、福島県ではなく、首都圏で使われていることと同じである。首都圏に原発を作るのは危険だが、福島県民が犠牲になっても、日本の大勢に影響がないと思っているからだ。
 オスプレイは危険だからアメリカ本土の住宅密集地域では訓練できないが、日本の市街地でおこなえばいい。日本人が何人犠牲になろうとアメリカは痛くも痒くもない。ということだ。
 「オスプレイの訓練は、へたくそな操縦士のための練習です。訓練はエリア内だけではない、普天間からエリアまで移送するルートもあるんです。テレポーテーションでもしない限り、エリア外を飛んでいるんですよ。でも報道はされていません」(前泊氏)
 
 オスプレイではないが2004年8月13日、沖縄国際大学に普天間所属の米軍ヘリが墜落した際、福島原発事故で見かけたような防護服を来た作業員がいるのを目撃しているそうだ。つまり、核物質搭載の可能性があった。それが1年後、小泉改造内閣になってから放射性物質の飛散を公表した。
 オスプレイも当然その可能性があるわけで、その危険度は計り知れない。

 そのた、元閣僚たちの退任後の発言が手のひらを返したようで面白い。近々前泊氏と鳩山由紀夫氏の対談本が出るそうで楽しみだ。
 
Maedomari2
 
 神保町の居酒屋で。前泊氏(左)と共同通信社論説委員の石山永一郎氏(右)。
 
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「ルーベンス展」に行く

2013年04月22日 | アート・文化
Rubens1
 
 たまたまチケットを入手していて忘れていたのを、つい先週思い出し、最終日に慌てて出かけた。
 ルーベンスは17世紀(バロック時代)イタリアの画家である。
 名前だけは知っているが、この時代の絵にはあまり興味がないので、機会がなければことさら観に行くことはない。

Rubens2
 
 絵の題材の多くが旧約聖書かギリシャ神話で、宗教色の強さに加え、これでもかと言わんばかりの生々しいリアリズムに、やはり辟易とした。
 この絵は、ギリシャ神話のトロイア戦争で、アキレスが鎧で完全防御したヘクトルの、唯一露出した急所である喉に槍を突き立てている図だ。
 印刷も写真もまだなかった時代、文字の読めない人々に物事を説明するのは絵画だけだった。とくにキリスト教を広めるためには協会内の壁画や天井画が大変効果的であったことは知られている。
 聖書は大変貴重な書物で、映画『薔薇の名前』で見られる通り、修道院の坊さんたちが羊皮紙に手で書き写していた。美しく装飾が施された聖書は、大きな教会に一冊おかれている程度で、一般の信者には触れることさえ許されなかった。
 エリート以外読み書きのできなかった当時、神父の話も容易に理解できない庶民に、キリストの教えや功績を伝えるのは、リアルな絵画を通じてのみだったのだ。だから、リアルで生々しいのは理解できる。
 ルーベンスの絵に登場する人物は、いずれも筋肉隆々としていて体格がいい。女性も大柄で健康的だ。これはルノワールのふくよかさとも違う。「キリストの教えに従えば、こんなに豊かになるよ」と説明したかったのだろう。
 
 さて、ルーベンスは絵画の制作にあたって、工房に多数の画家を揃え共同作業を行った。人物などの重要部分はルーベンス本人か一番弟子が描き、出来が悪ければルーベンス自身が修正した。そして風景などの背景は弟子たちの共同作業で製作することで、多数の大作を描くことを可能とした。現在の売れっ子漫画家のスタジオと同じ方式だ。つまり、そのハシリだろう。
 
 展示された絵には個人所有の作品もあるという。これらの絵を家に飾って毎日目にする人とはどんな人なのだろうか。応接間や客間などにこんな絵が飾ってあったら、何と落ち着かないことか。
 
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『漫画家たちの戦争』衝動買い

2013年04月14日 | 本と雑誌
Sensomanga
 
 このところすっかりブログを更新することができないでいる。理由は二つ。仕事ばかりやっていてブログネタに貧していたことと、おなじ理由で、仕事が終わると午前3時だったりして、ブログを更新する気力が残っていなかったのだ。ならば、土日に更新すればいいではないかと思われるかも知れないが、我々の仕事は忙しくなると土日どころか盆も正月もない。
 
 で、言い訳はともかく、閑話休題。
 
 昨年12月に亡くなった中沢啓治さんの「はだしのゲン」は、自らの原爆体験を描いた作品として歴史に残る名作だが、実際に兵役を体験した漫画家は少なくない。松本零士も水木しげるも、自身の戦争体験をいくつかの作品に描いている。
 しかし、その多くは雑誌に発表されたままであったり、短編集の中にまぎれていたりで、その多くが容易に目にすることはできない状態にある。
 この『漫画家たちの戦争』は、そうした戦争体験をはじめ、戦争をテーマにした作品だけを集めたものだ。
 梅図かずおの「死者の行進」、古谷三敏の「噺家戦記 柳亭円治」、松本零士「戦場交響曲」をはじめ、たぶん、なかなか目にすることのできない作品が多数収録されているのが魅力だ。
 定価18,900円! たかが漫画と思って予約を入れてから、「えっ! 何この値段」とびっくりしたが、まあ、命までとられる価格ではないので買っておくことにしたのだ。
 いくつか読んだ中では、中沢啓治の「おれは見た」が興味深い。「はだしのゲン」のきっかけになったとされる作品で、「はだしのゲン」が多少演出を加えた完成度の高い作品ならば、こちらは表現がやや抑えられているものの、それだけにリアリティーが増して生々しい。
 
 秋本治は兵器好きで、「こち亀」でも戦艦や戦車を度々登場させているが、基本的に戦争は好きでなかったようだ。兵器に対する抵抗のなさには辟易とするが、収録作品の「5人の軍隊」は、南太平洋のマーシャル諸島で全滅する日本兵たちの本音が垣間見えて面白い。
 根っからの軍人ならともかく、赤紙一枚で戦場に放り込まれた庶民たちは、口には出せないが、戦争がイヤでイヤでしょうがなかったのだろう。
 
 平均350ページの本巻5冊に112ページの資料集がついている。18,900円が高いのか安いのかわからないが、目にすることが困難な作品が多々含まれていることと、それらがすべて平均点以上の佳作であることを考えれば、価値ある買い物だったかもしれない。これに、「はだしのゲン」と山上たつひこの「光る風」を加え、代表的な戦争漫画は大方揃う。

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