全国的に有名な商店街の名前は?と問われ、東京の人間ならほとんどが高円寺「純情商店街」をあげるだろう。
この商店街の有名な理由は、ねじめ正一の直木賞受賞作『高円寺純情商店街』に由来する。
しかしこの商店街の名は、ねじめ正一が直木賞を受賞した後でつけられた。
ねじめ正一の描く純情商店街と、実際の商店街はだいぶおもむきを異にする。
商店街そのものは、ねじめ正一の創作だと聞いたことがある。
有名なわりには小さな商店街で、とくに気を引く店舗があるわけでもない。
小説の挿絵に描かれた商店街の地図を見ると、位置はここだが、町並みは一本阿佐ヶ谷よりの中通商店街がモデルのような気もする。
ねじめ正一は、少年時代を過ごした乾物屋を営む実家での出来事を小説に書き、1989年に直木賞を受賞した。
現在は阿佐ヶ谷で民芸品店を経営。
並行する中通商店街の方が、商店街としては充実している。
高円寺は駅周辺にいくつもの商店街があって、どの通りのどこからどこまでが何という商店街なのかよくわからない。
ちゃんと調べればいいのだが、どうでもいいとも思っている。
純情商店街を抜けて左に曲がり、その並行する商店街に入ったところには、「庚辛通り商店街」と「中通商店街」の二つの表示がある。
途中立ち寄ったパン屋で聞いてみると、縦に走っているのが庚辛通り商店街で、横の道が中通りだという。
しかし、中通りという表示はいたるところにある。
わからない。結局どうでも良くなった。
茶箱を売り台にしたお茶屋があった。最近のお茶屋は気取っていてこぎれいなところが多いので、こんな素朴な店は懐かしい。
そもそも、茶箱なるものをとんと見かけなくなった。
子供の頃わが家では、茶箱を米びつ代わりに使っていたことを記憶している。
オフィスのがらくたを片付けるのに茶箱が欲しいと思ったのだが、いざ入手しようと思うと、これがけっこう高価だったりする。
昔はただでくれたものだが。
「阿波踊りサブレ」という幟が気になってヒロセというパン屋に入った。
中にいた若い女店員に「阿波踊りサブレ」ってどんなもの? と聞いたが、返事がなく、無言で年配の店員の方を見る。
せめて、「少々お待ち下さい」とでも言えばいいものを、〈私に聞いたって知らないわよ、教わってないから〉とでも言いたげな態度だ。
どうやら、年配の女性がこの店の店長らしい。見回すと一見(どうにも頭のよくなさそうな)女子高校生のアルバイトらしいのが数名いて、こまごまと指示を受けていた。
試食用をもらって食べた「阿波踊りサブレ」はあまり美味いものではなかった。しかも5枚入で420円と、駄菓子に毛が生えたようなものにしては高い。
冷やかしでは気が引けるので、食パンを一斤買うことにした。
その食パンが大当たりですこぶる美味い。オフィスに持って帰ったら、アシのYが大喜びだった。
高円寺には古書店が多い。早稲田通りには、『佃島ふたり書房』で直木賞を受賞した出久根達郎の古書店「芳雅堂」もある。
写真の都丸書店は父親の代から世話になっている大型古書店で、社会科学書に強い。今でも大量に処分する時は買い取りにきてもらっている。
二階は洋書になっていて、マルクスやレーニンの原書が並んでいたりする。
都丸書店を裏口から出ると中央線の高架下になり、ここも商店街になっている。
その先に都丸書店の支店があり、こちらでは文学書と人文、理系の本が置かれている。
ようするに、専門の社会科学からはずれた本をすべてこちらに集めた、という形だ。
ここで、ハンナ・アーレントの「ラーエル・ファルンハーゲン」を見つけた。
手が出かかったが、3,800円(定価6,300円)でこの本のランクからすれば妥当なところだが、今月はいささか買い過ぎているのでやめることにした。
決して入手が難しい本ではないので。
都丸書店の近くにある球陽書房は沖縄系の書店で、高架下の都丸書店の支店の先に、沖縄関係書を中心に置いた支店があるのだが、この日、なぜか閉まっていた。
閉店してしまったのだろうか。
高円寺の古書店は駅の反対側、南口の商店街にも何軒かあったはずだが、やめてしまった店もある。
古書店が新たに開店するというのはあまり見かけない。反面閉店してしまう店の方はちょくちょく見かけるので、あきらかに古書店の数は減っていると思う。
荻窪の竹中書店のおばさんは、あまり出版不況は関係ないと言っていたが、そんなことはないと思う。
ブックオフのような新古書点ばかりがはびこって、プロフェッショナルを擁する古書店がなくなっていくのは何とも淋しい。
話は変わるが、ジャズシンガーのしばたはつみさんが亡くなった。
心筋梗塞だそうだ。
57歳。まだまだこれからのところだったと思うのだが、実に残念。
「マイ・ラグジュアリー・ナイト」の入ったアルバムを持っていたはずなのでレコード棚を探したのだが見つからず。
以前は一応分類してあったのだが、引っ越しの時に混ざってしまったのがあり、そうなると見つからないものはどうにも見つからない。
ある日偶然見つかるのを期待するしかない。
ネットで聞いて合掌。
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