使いもしないものを捨てられなくていつまでも持っているってことは、だれにでもあると思う。
ふと気がつくと、いつの間にかそれらが珍品になっていたりする。
子どもがペン形のカッターが欲しいというので、それなら何本もあったはずだと、机の引き出しをかき回しているうちに、まもなく珍品の世界に入りそうな「ショーモナイ」ものがぞくぞくと出て来た。
これは「トンボ・シール」というもの。
今はもう、印刷工程に版下などというものは無くなってしまったけれど、版下には必ずトンボといわれるマークがつけられていた。
右がコーナー・トンボといって、四隅に使うもの。左はセンター・トンボといって四辺の中央につかうもの。
トンボがついていないと、正確な断裁の位置がわからないし、多色刷りの場合に見当(ケント)合わせができない。
本当は烏口やロットリングで描くのだけれど、手間を省くためにこんなものが売られていた。
これは「ペンナイフ」。それとペンナイフやコンパスの針先を研いだりするのに使う、油砥石。
ペンナイフは版下の細かな文字を修正する時に使う。
直す必要のある文字を別個に写植で打ってもらい、このペン先で切り取って張り替えるのだ。
繊細な神経がないとできない。
切れなくなったら、油砥石でシコシコと研いで使うので、頻繁に使っても1本が数ヵ月もったりする。
これは「ラバー・クリーナー」といって、はみ出した糊(ペーパー・セメント)をとり去るもの。
ペーパー・セメントはふつうの糊と違って紙がシワシワにならない。
それがゴムを原料にできているので、ゴムどうし呼び合ってくっつく性質を利用したもの。
左は新品だが、使っているうちに右のように汚らしくなる。
これは板状のものだが、テープ式に巻き上げたものもある。
ちなみに、これとペーパー・セメントは、今でも見本で本の模型を作る時に活躍している。
「Gペン」というペン先で、かつては漫画家の必需品だった。簡単なイラストを版下に描くときなどに使われる。
役に立つと思って買っておいたのだが、結局一度も使わなかった。
今では漫画家もコンピューターだそうだ。
お気づきと思うが、これらはすべて版下作業で使われる道具である。
デザイナーも出版屋も、版下が専門ではないけれど、わざわざ版下屋の手を煩わせるほどでもない直しや、時間がない時には自分でやったものだ。
しかし、今では、手で版下を作るということはまったくといっていいくらい無くなってしまった。
それにともない「写植屋」「版下屋」という商売もすっかり見かけない。
両方ともすばらしい技術で、まさにプロの仕事だったのだが、ぜんぶコンピューターに取って代わられてしまったのだ。
世の中の移り変わりで、保存の枠組みから外れた、文化とか芸術とか伝統芸とか言えない種類の手先の技術が次々と無くなっていくことは、いささか淋しくもある。
煙管の掃除をする「羅宇屋(らおや)」、傘の張り替え、鍋の修理をする「鋳掛屋(いかけや)」などなど。
「仕立て屋」は着物を作るだけでなく、寸法直しや修理もやってくれた。ズボンの穴を目立たなく修理してくれる「掛矧ぎ(かけはぎ)」もやってくれるところがずいぶん少なくなった。
「治して使う」というのはエコロジーの基本だと思うが、今は壊れたら(破れたら)捨てる時代になってしまったのは、決してこれが進歩とは思いたくない。
机の引き出しから、ずいぶん話がずれてしまった。
次に続く?……かな。
◆~~~~◆~~~~◆~~~~◆~~~~◆~~~~◆
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*上のメールアドレスをコピーするか、右下の「□メール送信」をクリックしてください。
ふと気がつくと、いつの間にかそれらが珍品になっていたりする。
子どもがペン形のカッターが欲しいというので、それなら何本もあったはずだと、机の引き出しをかき回しているうちに、まもなく珍品の世界に入りそうな「ショーモナイ」ものがぞくぞくと出て来た。
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今はもう、印刷工程に版下などというものは無くなってしまったけれど、版下には必ずトンボといわれるマークがつけられていた。
右がコーナー・トンボといって、四隅に使うもの。左はセンター・トンボといって四辺の中央につかうもの。
トンボがついていないと、正確な断裁の位置がわからないし、多色刷りの場合に見当(ケント)合わせができない。
本当は烏口やロットリングで描くのだけれど、手間を省くためにこんなものが売られていた。
これは「ペンナイフ」。それとペンナイフやコンパスの針先を研いだりするのに使う、油砥石。
ペンナイフは版下の細かな文字を修正する時に使う。
直す必要のある文字を別個に写植で打ってもらい、このペン先で切り取って張り替えるのだ。
繊細な神経がないとできない。
切れなくなったら、油砥石でシコシコと研いで使うので、頻繁に使っても1本が数ヵ月もったりする。
これは「ラバー・クリーナー」といって、はみ出した糊(ペーパー・セメント)をとり去るもの。
ペーパー・セメントはふつうの糊と違って紙がシワシワにならない。
それがゴムを原料にできているので、ゴムどうし呼び合ってくっつく性質を利用したもの。
左は新品だが、使っているうちに右のように汚らしくなる。
これは板状のものだが、テープ式に巻き上げたものもある。
ちなみに、これとペーパー・セメントは、今でも見本で本の模型を作る時に活躍している。
「Gペン」というペン先で、かつては漫画家の必需品だった。簡単なイラストを版下に描くときなどに使われる。
役に立つと思って買っておいたのだが、結局一度も使わなかった。
今では漫画家もコンピューターだそうだ。
お気づきと思うが、これらはすべて版下作業で使われる道具である。
デザイナーも出版屋も、版下が専門ではないけれど、わざわざ版下屋の手を煩わせるほどでもない直しや、時間がない時には自分でやったものだ。
しかし、今では、手で版下を作るということはまったくといっていいくらい無くなってしまった。
それにともない「写植屋」「版下屋」という商売もすっかり見かけない。
両方ともすばらしい技術で、まさにプロの仕事だったのだが、ぜんぶコンピューターに取って代わられてしまったのだ。
世の中の移り変わりで、保存の枠組みから外れた、文化とか芸術とか伝統芸とか言えない種類の手先の技術が次々と無くなっていくことは、いささか淋しくもある。
煙管の掃除をする「羅宇屋(らおや)」、傘の張り替え、鍋の修理をする「鋳掛屋(いかけや)」などなど。
「仕立て屋」は着物を作るだけでなく、寸法直しや修理もやってくれた。ズボンの穴を目立たなく修理してくれる「掛矧ぎ(かけはぎ)」もやってくれるところがずいぶん少なくなった。
「治して使う」というのはエコロジーの基本だと思うが、今は壊れたら(破れたら)捨てる時代になってしまったのは、決してこれが進歩とは思いたくない。
机の引き出しから、ずいぶん話がずれてしまった。
次に続く?……かな。
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