坂口安吾による『天皇陛下にささぐる言葉』と言う、B6判32ページほどの小冊子が話題である。
戦後間もない1948年に雑誌「曠野通信」に発表されたもので、戦中であれば不敬罪間違いなしで、収監され拷問を受けていたであろう。
表題の「天皇陛下にささぐる言葉」に加え「堕落論」「天皇小論」「もう軍備はいらな」を併載、坂口安吾の反天皇制・反戦小論文集である。
ちょっと長くなるが、一部を転載する。
朕はタラフク食っている、というプラカードで、不敬罪とか騒いだ話があったが、思うに私は、メーデーに、こういうプラカードが現れた原因は、タラフク食っているという事柄よりも、朕という変テコな第一人称が存在したせいだと思っており、私はそのことを、当時、新聞に書いた。
私はタラフク食っている、という文句だったら、殆ど風刺の効果はない。それもヤミ屋かなんかを風刺するなら、まだ国民もアハハと多少はつきあって笑うかも知れないが、天皇を風刺して、私はタラフク食っていると弥次ってみたところで、ヤミ屋でもタラフク食っているのだもの、ともかく日本一古い家柄の天皇がタラフク食えなくてどうするものか、国民が笑う筈はない。これが風刺の効果をもつのは、朕という妙テコリンの第一人称が存在したからに外ならぬのである。
朕という言葉もなくなり、天皇服という妙テコリンの服もぬがれて、ちかどろは背広をきておられるが、これでもう、ともかく、風刺の原料が二つなくなったということをハッキリとさとる必要がある。
人間の値打というものは、実質的なものだ。天皇という虚名によって、人間そのものの真実の尊敬をうけることはできないもので、天皇陛下が生物学者として真に偉大であるならば、生物学者として偉大なのであり、天皇ということとは関係がない。況んや、生物学者としてさのみではないが、天皇の素人芸としては、というような意味の過大評価は、哀れ、まずしい話である。
天皇というものに、実際の尊厳のあるべきイワレはないのである。日本に残る一番古い家柄、そして過去に日本を支配した名門である、ということの外に意味はなく、古い家柄といっても系譜的に辿りうるというだけで、人間誰しも、ただ系図をもたないだけで、類人猿からこのかた、みんな同じだけ古い家柄であることは論をまたない。
名門の子供には優秀な人物が現れ易い、というのは嘘で、過去の日本が、名門の子供を優秀にした、つまり、近衛とか木戸という子供は、すぐ貴族院議員となり、日本の枢機にたずさわり、やがて総理大臣にもなるような仕組みで、それが日本の今日の貧困をまねいた原因であった。つまり、実質なきものが自然に枢機を握る仕組みであったのだ。
人間の気品が違うという。気品とは何か。たとえば、天皇という人は他の誰よりも偉いと思わせられ、誰にも頭を下げる必要がないと教育されている。又、近衛は、天皇以外に頭を下げる必要はないと教育されている。華族の子弟は、華族ならざる者には頭を下げる必要がないと教育されている。
一般人は上役、長上にとっちめられ、電車にのれば、キップの売子、改札、車掌にそれぞれトッチメラレ、生きるとはトッチメラレルコト也というようにして育つから、対人態度は卑屈であったり不自由であったり、そうかと思うと不当に威張りかえったり、みじめである。名門の子弟は対人態度に関する限り、自然に、ノンビリ、オーヨーであるから、そこで気品が違う。
景文館書店 発行
200円(+税)
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