monologue
夜明けに向けて
 




カリフォルニアサンシャインその23
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「未知との遭遇(Close Encounters of the Third Kind)」
という映画が1977年11月に公開された。翌年、その題名にちなんだような「エンカウンター(Encounter)」という日系の大型クラブがロサンジェルスのダウンタウンに開店するのでエンターティナーのオーディションがあるという噂が流れた。行くと多くのミュージシャンが集まっていた。
ロサンジジェルスのエンターティナーといっても色々でピアニスト、ギター奏者、ハープ奏者、ジャズバンド、マリアッチ、ロックバンドなどなど店や地区、人種によって様々である。当時エンターテイナーとして活躍していたロサンジェルス中のピアニスト、ギタリストが集まって覇を競った。さながら天下一ミュージシャンコンテストのようだった。ピアニストが多くギターではレコード大賞を獲得した「シクラメンのかほり」を弾き語りする人が多かった。順番にパフォーマンスをしてゆき、わたしも順番が来ると「シクラメンのかほり」をギターで弾き語りした。支配人は一週間分のエンターティナーを選考してそれぞれに曜日をあてがった。選ばれたのはやはりほとんどがピアニストだった。日本でレコードを出している歌手もいた。結局、ギターで選ばれたのはアコースティックギターのわたしとヒゲが印象的なエレクトリックギターの中島茂男だけだった。マネージャー、ジョージ氏は最後に、君たちはふたりでやってくれという。エンターティナーが二人でやるというのは聞いたことがない変な話しだったけれどバンドの入っている雰囲気がして店が華やぎ演奏が豪華になる。開店してしばらく店は大盛況だった。客が帰ったあと多くのホステスたちがチップの取り分争いでつかみ合いするのを目のあたりにして驚いたりしたものだった。
けれどしばらくすると客足は遠のきなぜかあっけなくそのクラブはつぶれてしまったのである。それでヒゲの男、中島茂男(シゲさん)とふたり一緒に仕事を探すことにした。ふたりで仕事する方が楽しかったから。何軒もまわり広めの店に二人でひとり分のペイで数軒の店に入った。それでなんとか食ってゆけることになった。あの「エンカウンター」、つまり「邂逅」という名前のクラブはわたしたちを巡り合わせるために一瞬だけ存在した店であった。あの支配人が一緒にやれなどと奇矯なことを言わなければ「SF」というプロジェクトは生まれなかったのである。
fumio

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