monologue
夜明けに向けて
 

もも  


 ではそのあとを一行ずつ解説してゆこう。
「是拔食之間、逃行。」
そして見送りがその横木を抜いているうちに先に進んで行くと、
「且後者、於其八雷神、副千五百之黄泉軍令追。」
するとうしろから歓待してくれたあの八雷神までが軍を率いて最大限の敬意を表しに追ってきた。
なにしろイザナギは日向族の族長なのだから。現代の大国の大統領が帰国するときのようだ。
「爾拔所御佩之十拳劒而、於後手布伎都都(此四字以音)逃來、」
それでイザナギは十拳劒、すなわち十と手の力を秘めた剱を答礼として別れの挨拶に後ろ手に振ってさらに進む。
「猶追、到黄泉比良(此二字以音)坂之坂本時、取在其坂本桃子三箇待撃者、悉迯返也。」

そうするうちについに黄泉比良坂に辿りついた。ここに戸があり異界への入り口であった。
その坂本には桃がなっている。なぜだろうか。これがこの物語の鍵になっている。
この桃がこの物語の作者の構想の核といえる。なんでもないように前に蒲子(山ブドウ)、笋(タケノコ)などをちりばめておいて桃を出してもそれほど異和感なく見過ごすので桃には魔除けの力があるからなどという説で本質が見えなくなるように封印してあったのだ。
その答えをわたしたちは自立してわたしたち自身で出してみせなければならない。
もうそれができる実力がついているのだから。
それではわたしなりの答えをここで述べてみよう。
黄泉比良坂の坂本に桃がなっている理由はそれは黄泉が泉の世界であるから。
目を閉じて「泉」という文字をイメージの中で大きな世界としてふくらませる。
すると下の水からイザナギのようにずっと昇ってくると白の世界に入る。エレベーターを使わず階段で階層を駆け上がって行くとついにはその白の一番上にあるチョンに達する。イザナギはそのチョンの一番上にまでやってきたのだ。そのとき、そこに桃がなっていたのである。桃はもちろん「百」と書ける。
白の上に戸があるのが百なのだ。百は白にフタをしてある。この百の上の戸がこの世と隔り世の間の岩戸なのである。わたしたちもやっと岩戸の前にまでのぼってきたようだ。
fumio

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