風に吹かれてぶらり旅

まっすぐに生きる人が好き

大人げない

2007-01-23 22:45:37 | 徒然
 ついこの間の日曜日、
私はプチ家出をした。

といっても、夜21時ごろ、家から電車で30分、職場近くのビジネスホテルに一泊して
そこから普段と何も変わりなく、通勤し、月曜の夜は家に帰ったという…
一晩だけ家とは別の場所に一人の部屋を借りた、ともいえる。
ただ動機は未成年の家出みたいなもんだった。

このところ、私は体調が悪かった。
まぁ今もあまりよいとはいえないのだけど…

どうやら熟睡できていないことが影響しているらしい。
考えてみたら、熟睡なんて、ここ数ヶ月してない気がする。
疲れているのに眠りがあさく、
眠れないから朝なかなか起きられず…
そのかわり土日は殆ど寝てる、の繰り返し。

ついこの間「ちゃんと、眠れてますか?」
某大型ショッピングモールに入っている
リラクゼーションサロンのお店の人に聞かれた。

店員さんは、
「血色があまりよくないのと、上半身と下半身のバランスがあまり良くないな」
お店に入ってきた私をみて、まずそう思ったらしい。

 それはさておき、
とにかくあまり調子が上がらないイラだち、何と言うか、何とか良くしようと思っているのに、生活全般において思い通りに事が運ばないもどかしさと、余裕のなさ、将来への不安、そんなマイナス思考な自分、それを中々人に話せない自分…
とにかく何もかもイヤ!
になっていた。
ストレスが溜まっていた。

 そんなある日、私は自分の部屋にあるインテリアグリーンのアイビーの異変に気が付いた。
土の表面を覆っていた化粧石が土にまみれて、なんだか石の意味などまったくなくなり、鉢の表面には土と軽石と化粧石が入り混じり、デコボコになっている。
どうやら母が私のいない時に何かの拍子に床に落としたらしかった。
「お母さん、私の部屋の鉢おっことしたでしょ?」
「うん?…ごめんネ」
「なんだよぉ~、落としたならひと言いってよ~」
そう、ひと言いってくれれば私はなんにも怒らない。
私だって先月鉢を置いてた台に足があたって床に落としたばっかりだ。
でもそのときは自分でちゃんと石などを洗って、元通り綺麗にとはいかなくても
とりあえずキチンと戻したのだった。
(その後少し弱ってしまったけれど、今は元気だ)

でも、母のその直し方に
「しまった、なんとか元通りにしなきゃ」とか
「仕方ない、なおこに謝るか」とか
そういう気持ちはかけらも感じられなかった。
どうせ黙ってるなら、ばれないように、完璧に元通りにするくらいの
気合があってもいいんじゃないかと思った。

そこで、週末、自分じゃどうにもならないほど絶不調になり、
一日中寝ていた。
アイビーは後で自分でキレイに手入れしよう、そう思って
ベッドサイドにおいてあるその、アイビー(シュガーパイン)の鉢の裏側をよく見てみたら、

…受け皿が欠けている。
気付かなかった。

怒り心頭だった。
そしてなんだかとても哀しかった。
これは、決して母を許せないとか、
大事にしていたものを壊して許せないとかそういうことではなくて、
日ごろの鬱憤が溜まりにたまり、爆発したのだった。

これはただのアイビーじゃない。
私にとって、去年私が上尾の現場に通っていた時に駅ナカのお店で買った、
苦楽を共にした、特別なアイビーなのだ。

内装監理室の現場事務所では玄関先に鎮座し、現場の人々を見守り続け、
花を活ける暇がないときもいつも心を和ませてくれた。
このアイビーを見るとアイビー越しにあの頃の風景が見えるのだ。
こいつは現場事務所が撤去される時に私の知らぬ間に一度捨てられかけた。
でも、ゴミと一緒にビニールに入ったアイビーを発見し、私は一人で怒っていた。
(大事なものなら片付けの前にちゃんと持ち帰るなりしておかなきゃいけなかったんだけどね)
そのあと、アジアン雑貨のお店番をし、
それからずっと私の部屋にいる。

最近アイビーはあまり調子がよさそうじゃないので、
暖かくなったら植え替えてやるよと約束し、
そのままにしておいたら…
母はよりによって、娘があまり調子の良くないのを知っていながら、
なぜにその娘の育てているグリーンをひっくりかえしておいて平気でいられるのか
受け皿が欠けてしまったというのに、ゴメンの一言もないなんて、
母のその神経を私はその時、本気で疑ったのだ。
なんという、愛情のなさ!
私がどんな思いでこのアイビーと付き合ってきたか!
そりゃ、べつだん、大事にしてきたわけでもなく、ただ毎日そっとそこにいただけだし、
受け皿が少しくらい欠けてたって不便はないけどさ!

そして、前向きだったあの頃の自分をあっさりと捨てられたようなそんな思いになり、
もーーーー、とにかく両親に向かって怒りまくり、
そしてそんな自分と先の見えない今の状態がイヤになって、
すぐにビジネスホテルのシングルルームを予約し、身支度をして駅へ向かった。
いつも乗ってる電車も、いつも乗らない時間帯と、いつもなら行かない場所へ行くからなんだかまるで旅に出たように、非日常を味わうことができた。
行き先は告げてあるし、無茶をすることもないし、
親にはちょっと申し訳ないことをしたと思うけど、一人の時間はとても落ち着いた。

部屋について、
窓から景色を眺めると…新都心の夜景が綺麗だった。
でも、ちょっと綺麗すぎるので、ちらっとしか見なかった。
いつもの一人旅のように、風呂上りにテレビを観て、一本缶チューハイを飲んで、
備え付けのコエンザイムQ10フェイスマスクなる、
美容液マスクを顔に貼り付けたりしてみた。
それから、ほつれたズボンの裾を携帯ソーイングセットで縫い、
友達に手紙を書いた。

翌日の夕方「今日はちゃんと帰ってきてね」と父から携帯に電話があった。
なんだか、大人げなかった…

 火曜日の今日はまるで何事もなかったかのように、
親子でこたつに入り、ネコと遊んだ。
そして仕事帰りに、去年アイビーを買ったお店で新しい鉢と化粧石を買い、
もう一度綺麗に植えてやった。
傷んだ葉っぱを切ったらちんちくりんになってしまったけど…

「これからも懲りずによろしくね」という、気持ちを込めて。