EVOLUCIO WORKS INFO

EVOLUCIO WORKS INFORMATION

明滅の創造

2016-02-17 20:05:37 | Dreams


つづき。

「……オレ、たしか引っ越したよな」

そうだ。私は引っ越しをした。
事務所も、工房も移転をした。
それもずいぶんと前に。
もう私は地底人ではないのだ。

それではさっきのポスターだらけの部屋は。
宝生舞のカセットを探していた女は。
地下の廊下の奥の裏口のドアは。
八百屋は。公園は。

海底の海藻にからまっていた私の意識は、
一気に浮上し、
光まばゆい海面すれすれで夢現の明滅を繰り返した。

意識は接触の悪いスイッチのように、
夢と現実のちょうど境目を何度も出入りし、
その度に疑問と思考と解答を
私と、私と、私は続けた。

半覚醒はむしろ夢そのままであるよりも増幅の力が強いらしく、
思考の芽は一瞬で緑の巨人となり、
それもまた瞬く間に花の一輪と変化した。

私はそんなアシッドの波間をしばし漂ったあと、
ようやく集中という感覚を取り戻し、
ついにひしゃげた青い枕に向かってつぶやいたのは、
なんとも月並みなひと言で、
私は、
水から上がったばかりの荒い呼吸で現実を認識すると同時に、並列に、
「どうせならもう少し言葉を選びたかったな」
などと少し恥ずかしい気持ちを覚えながらもその時ほぼ完全に、
あなたのいるこの世界に目覚めたのだった。

「夢か」

つづく。

いや、おしまい。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする