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夢の羅列<オーケストラ・チューブ-p6・終演> 20170930

2017-10-28 23:18:28 | Dreams


夢の羅列<オーケストラ・チューブ-p6・終演> 20170930


つづき。

舞台の赤ん坊はライトを浴びて泣いていた。

その時、静寂を破ってメキシコのマリアッチのようなラッパが
鳴り始めたかと思ったら、バンドの演奏が始まった。

どうやら姿は見えないが、
舞台の後ろの暗いところでラテンバンドが演奏しているようだった。

ライトに白く光る赤ん坊は動かずにまだ泣いていた。

劇のエンディングなのか、それとも実際の出来事なのか、
私にはまったくわからなかった。

熱に汗ばんだような粘つくリズム。
それでいて暗い湿気の印象ではなく、ラムに冷えたソーダを乱暴に入れて、
一気に飲み干した時のような高揚感があり、
しかしどこかに消す事の出来ない悲しさが俯き加減に微笑んでいる。

曲を聴きながら私はもう帰ろうと思った。
虚でも実でも、この曲でエンディングなのは明らかだった。

それから後ろを向いて入場してきたカーテンを開けたのか、
それともどこかのドアを開けたのかわからなかったが、
出た場所はあの受付のいた廊下ではなかった。

暗く狭い通路で、重低音の機械音が不気味に響いていた。

例えば、下水処理場や原子力発電所の地下通路に入ったとしたら、
行ったことはないが、きっとこんな雰囲気なのではないだろうか。

とにかく湿度がひどい。

暗い湿気どころの話ではなく、この先、地獄への道だといわれても、
確かにこれはそうだろうな、と頷いてしまうほどの環境の悪さだった。

天井も低いから首を下げて進んだ。

進行方向の左側の壁の上部に太いパイプが何本も走っていた。

その壁のパイプの下にコンクリートが台のように張り出していて、
それは通路と一体化してどこまでも延びていた。

ちょうどテープルのような高さで、
そこに何かがその先ずっとゴロンゴロンと並んでいるのだが、
最初はそれらが何なのかわからなかった。

わかった。

魚だ。まるで冷凍の魚が暗い市場に並んでいるようだった。
しかし、これは生きている。

魚たちは眠っているのだった。
水もないのに台の上に集まってきたのか、皆、死んだように静かだった。

魚だけではない。貝類とか、その他のよくわからない魚介類が
コンクリートの台を寝床に静かに眠っていた。

暗いところに夥しい魚介が並んでいる図はあまり気持ちの良いものではなく、
思わず私は走り出しそうになったが、いや待てよ。
こういった時にむやみに走ったりすれば、恐怖心を自分自身で煽るだけになりかねない。

あくまでも冷静に同じペースで、魚たちを起こさないように、
むしろゆっくりと歩いていこう。

とういうか、まあ普通にだな。

……そのうち外に出た。

垣根の分け目から飛び出した私は砂利の一本道に立っていた。

空は高く、落ち葉もくるくる秋の風。

つづく。
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夢の羅列<オーケストラ・チューブ-p5・悲鳴> 20170930

2017-10-25 19:36:04 | Dreams


夢の羅列<オーケストラ・チューブ-p5・悲鳴> 20170930


つづき。

……その時、短い悲鳴が舞台で上がった。

客席から舞台に視線を戻すと、あの若い男が立ち上がっていた。

そして中央の布団まで駆け寄り、何かを拾い上げたところだった。

一抱えほどの物を男は抱き、反転し舞台の上手袖に逃げ込もうと走った。

私は躊躇なくその男を応援し、逃げ切れるように祈った。

「パンッ」

軽く乾いた音が場内に響いて、男がもんどりを打って倒れた。

抱かれていた物は勢いで男の手を離れ、布団に転げ落ちた。

同時に赤ん坊の泣き声が聞こえてきた。

下手左端の布団に座った半裸の男が構えたピストルを下げた。

誰も声を発しない。

……、無謀だった。無謀だったな。

事情は知らないが、計画性が皆無であったようだ。

熱情だけで突っ走ったが、熟練と老獪の壁は厚かった。

虚しさだけが私の心に残った。その時、

すっと舞台のライトが消え、場内が真っ暗になった。

おや、と思っているとあらためてピンスポットが舞台中央に当たり、
もう誰もいなかった。

布団も男も女も赤襦袢も何もなかった。いや、

あの放り出された赤ん坊が布に包まれたままで動かずに、ライトを一身に浴びていた。

つづく。
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夢の羅列<オーケストラ・チューブ-p4・赤襦袢> 20170930

2017-10-23 21:14:15 | Dreams


夢の羅列<オーケストラ・チューブ-p4・赤襦袢> 20170930


つづき。

カーテンから押し出されて図らずも入場してしまった劇場の舞台の上では
複数組の男女がそれぞれの布団の上で絡み合っていた。

女は皆、赤い襦袢姿で、もうすでに腰まで脱げている女もいた。

重ねて説明すると、舞台の上に横一列に布団が8組敷かれ、
その上で8組の男女が、つまりやっているのだった。

とはいっても、まだどの組も最後の線を越えずにはいて、
端のここからは声もほとんど聞こえず、ただ絡みあっている姿が見えるだけであった。

私は夢の中の直感で、一番右端の他よりも若い男だけが
ここにいる目的が明確に違うなとわかった。

他の男たちは皆、50代以上の会社幹部といった印象で、
この舞台における行為はどうやら幹部間の儀式だろうと推測できた。

私は立ったまま、舞台の上で繰り広げられているショーを観ていたが、
その儀式的な臭気に嫌悪の感想しかもてなかった。

襦袢の赤と強烈なライトのイメージが強く、
逆に客席は暗く、どこに誰がいるのかどうかはまるでわからなかった。

ナザレはここにいるのだろうか。

知人でも友人でもないナザレという名になぜか親近感を覚えていて、
私はその姿を薄闇に認めようとしたが、その時、短い悲鳴が舞台で上がった。

つづく。
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夢の羅列<オーケストラ・チューブ-p3・カーテン> 20170930

2017-10-21 18:26:17 | Dreams


夢の羅列<オーケストラ・チューブ-p3・カーテン> 20170930


つづき。

荒れた廊下を歩いていくと男が座っていて、私はHondaと記帳した。

上の欄には「ナザレ」と記帳されていた。

おいおい。まさかナザレのイエスじゃないだろうな。

あらためて受付の男を見ると、頭の良さそうな浅黒いセム系の顔立ちである。

紛争が絶えない地域の某かのグループのトウキョウ派出所か何かが
ここにあったとしても不思議ではない雰囲気である。

だいたいここまで歩いてきた廊下の荒れ具合を見て、おかしいな、と私も少しは感じていたのだ。

「ドウゾ」

メガネの受付が無表情にその背後の黒いカーテンを指して言った。

??。カーテンの向こうに何かがあるということだろう。
建物の入り口からしてそうであったように、どこか文化祭的なノリが拭いきれない。

記帳の欄から推測すると、おそらくカーテンの裏に何人かがいるのだろう。

つまり「ナザレ」もいるのだろう。

ナザレがいるなら、ちょっと覗いてみるか。

私はそんな根拠のない安心感を味方にしてカーテンを開けた、
というより、様子を見るために端を少しずらして中の暗闇を覗いた。すると、

ぐんっと背中を強く押されて、私はカーテンの中に入ってしまった。

中は空気が冷えていた。

これは劇場か。

私が今ポンと押し出されるように入場した場所は一番高く、
そこから客席が扇形に配置されているのが暗い中に見渡せ、
席と席の間のスロープを下った先に一段高く舞台がライトに明るく浮かび上がってよく見えた。

舞台の上では複数組の男女がそれぞれの布団の上で絡み合っていた。

つづく。
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夢の羅列<オーケストラ・チューブ-p2・ナザレ> 20160930

2017-10-16 20:28:17 | Dreams


夢の羅列<オーケストラ・チューブ-p2・ナザレ> 20160930


つづき。

立ち上がったら2メートルはありそうな黒人から渡された紙には、

「13階層の果樹園」と印刷されていた。

ふと振り返ると、ここまで一緒に来た婆さんも爺さんもいなかった。

……生け贄か。

騒音の中、私はそんな予感というかイメージに包まれた。

しかし、生け贄にしては鮮度に問題がありそうだが。

「そこをまっすぐ行ってください」

さっきの黒人が私にそう言った。

進むと段々騒音は聞こえなくなっていき、廊下の雰囲気は雑然というか、
もっと乱雑、いや暴力的な佇まいに変わって、
まるでゲリラのアジトでもありそうな危険領域の様相を呈してきた。

また知らない男が座っていて、机に名前を記入する用紙があり、
そこに私は「Honda」と書いた。

もちろん私は本田ではないが、
そんな危険なところに本名を書く気はさらさらない。

日常、名前を書く必要や要請と具体的な記入欄が目前に現れると、
私はそれをひとつの創作の場だと捉えて、公的な場合を除き、
瞬間芸として、その時に閃いた名を書くことが多い。
そして、書いた名前を忘れて、呼ばれる時に困ることも多い。

今日の本田はどこからやってきたかというと、
おそらく最近、ホンダのスーパーカブが中華製から日本製に戻って、
しかもあのビジネスライクな角形から丸目ヘッドライトに変わって
発売されるというニュースを見た影響からだろうか。
50ccは要らないが、110ccならちょっといいかも。

記入用紙の私の欄のすぐ上に「ナザレ」と書いてあるのが読めた。

座っている男が外国人なので私ですらHondaと書いたのに、
ナザレがナザレと書いてどうするんだ、と少し思ったが、
まあ、あまり気にしないのが夢の中の設定と気分なのだ。

そうか。ナザレが来たのか。いやナザレは地名じゃないのか。

つまり、私と同じで、本名などこんなところに書きたいわけではないから、
本名はボブだかロバーツだか知らないが、
じゃあナザレとでも書いておけ、と記入したのだろうか。

例えばナザレから来たからナザレだと。

つづく。
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夢の羅列<オーケストラ・チューブ> 20170930

2017-10-14 20:28:32 | Dreams



ここは荒地。

夢に広がる荒涼の丘を私は歩いていた。

草は累々と薙ぎ、岩は沈黙し、砂は眠っていた。
風は私を苛み、希望の光も西に沈もうとしていた。

私は老齢の女と男を連れて砂利の坂を上っていた。

とくに女が坂の途中で転げ落ちるのを心配し、その後ろを私は上った。

ようやく荒れた斜面を上りきると、川が見えた。

幅がたった1メートルほどの細い川で、なぜか両側に手摺りが長く続いていて、
ここから進むなら道はなく、その川を行くしかないのだが、小舟もないし。

私はしばらく考え、
すると手摺りの一番下が案外としっかりしているようなので、
川を跨ぐように足をかけて慎重に歩けばなんとか進めるのでは、と結論を出した。

しかし老人には無理だろうか。

ところが夢の中ではなんとかなるもので、二人は少しずつ前に進んだ。

それを見て安堵していると、しんがりの私がなぜか川の水にドボンと入ってしまい、
首まで水に浸かって、慌てて手摺りによじ上ろうとしたが、
力が入らずなかなか足を両側にかけることが出来なかった。

やっとのことで手摺りを跨ぐことが出来、私も濡れたまま老人たちの後に続き川を進むと、
川沿いの左側に白い大きなカプセルというかチューブというか
朧に発光するトンネルが川と同じ方向にいつの間にか延びていて、
どうやらその中を列車が走るようなのだが、
なぜかそこからオーケストラの乱れた音が響き聞こえてきた。

つまり、普段は列車が走るためのチューブの中で今日は楽団が練習をしているわけか。

学生だろうか。

そうか。わかった。私たちはそれを観にきたのだった。

やがてビルの入り口を見つけ、そこへ入ると、中は暗く人で混雑していて、
あちこちの部屋から楽器の音がした。

ビルは古く、雑然としていて、まるで館内全体でお化け屋敷を行っているかのように
ほとんど暗闇で、チューニングの音やら演奏やらが乱れ聞こえて、しかし活気があった。

廊下に座った男からチケットのような紙を渡された。見ると、

「13階層の果樹園」

と読めた。

つづく。
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夢の羅列<ダンゴ混線ドライブ> 20171010

2017-10-11 19:08:03 | Dreams
夢の羅列<ダンゴ混線ドライブ> 20171010


夢の中で私は車を運転していた。

誰かが同乗していた。

走行中に何か煙の臭いがしてきて、私は原因を確めるために車を停めて降りた。

どうやら後部ハッチを開けたところにある謎の配線がダンゴのように混線して、
そこが熱を発し、ついに煙が出たのだった。

ダンゴ配線をほどいていくつか離してやると煙は収まるのだが、
それでは車は動かないらしい。

配線を元通りピンポン球ほどのダンゴにしておくと
それが絶妙な通電具合なのか、元気にエンジンはかかるのだが、しかし、
今度はうっすらと煙が出てきて、とてもじゃないが安心して運転が出来ない。
だいたい臭いしな。

しばらく考えて、それならその混線ダンゴ部分だけを窓から外に出して走行すれば
エンジンはかかるし、臭くはないし、当分は走れるのではないだろうか……と思った。

まあ夢の中のことなので、まともな結論は出ませんよ。
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夢の羅列<カマクラ・フューチャー3> 20170924

2017-10-08 12:36:07 | Dreams
夢の羅列<カマクラ・フューチャー3> 20170924


つづき。

床屋が閉店してしまった様子がそこに広がっていた。

そういえばドアの外のエレベーターもなんだか薄汚れていて、とても上で見てきたような近未来の様相ではなかったっけ。それにあれだけいた人もこのエレベーターまではあまり来ないらしく、乗り込む人も僅かであった。

この店も開店当初と客の流れが変わってしまい、とうとう閉店を余儀なくされたに違いない。いや、高齢ということで閉店することも多いから断言は出来ない。

私はこの誰も居ないもう死んでしまったかのような埃だらけの店内を美しいと思い、写真を撮ろうかとポケットの携帯を探した。その時、店の奥に人の気配を感じ、数歩進んで柱の陰を見ると老人が独りで帳面か何かの片付けをしていた。

160センチほどの背の、齢は80に近いだろう、白髪の、ツイードを赤く細いサスペンダーで吊って、やはり同じような灰色のツイードの鍔のある帽子を冠ってレジの前に朧げに立っていた。

私は写真を撮ることをやめた。

彼の長年の闘いの終焉の儀式を気軽に撮ることは気が引けた。

彼がここで積み重ねた時間に比べ自分にはリスクが何もないことにふと気がついた。

ここはまだ彼の場所であり、彼の時間なのだから。

床に響く靴や調子の良い鋏の音。
笑い声。整髪料やスチームの匂い。ラジオからの音楽。
店内の空気にまだ残るそんな記憶たちがやがて壁や床や残骸に染み込み
すっかり隠れてしまった時に、私はようやく撮ることを許されるのかもしれない。

私は邪魔をしないように静かに店の外に出て、注意深くゆっくりとドアを閉めた。

おわり。

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夢の羅列<カマクラ・フューチャー2> 201701001

2017-10-01 13:53:40 | Dreams
夢の羅列<カマクラ・フューチャー2> 201701001


つづき。

……鎌倉ってこんなにデカかったか?

鎌倉というより、みなとみらいか有明かという雰囲気で、一番イメージが近いのは有明の国際展示場ビッグサイト周辺の人工的な感じである。しかもここはあの有明の100倍くらいの規模に見える。まるで宇宙旅行に行くためのロケット発射ステーションでもありそうな景観である。

いつの間にこんなことになっていたのか。世間を知らないというのも怖いもので、鎌倉に大きな建物は寺か神社しかないと記憶していたが、なんだこれは、人の流れに飲まれて階段を上がって目にした景色に私は吐きそうになった。

100倍規模のビッグサイト地区が見渡せるこの場所から無数の人々が20万人くらいだろうか、まるで蟻の軍隊か難民の流浪かのように移動する姿が見えたのだ。

あちこちに道路を越える高架があり、見える範囲をすべて階段を使い徒歩で移動できるようなのだが、ということは私の車を駐めた高架はどれなのか。

よく磨かれた赤っぽい石の階段を上りきったところの手摺りの延長線にあたる防護壁の上に長さが2.5メートルほどの木材が場違いな感じで置き捨ててあり、誰か持ち歩くのが邪魔になってここに置いていったなと私は思った。

そしてそのまま高架の上の全部が歩道になっているこれはもう屋上と呼んでも差し支えないところを100メートルほど歩いたらまた階段で、仕方がなく下った。

車が心配でさすがに焦ってはいたが、まあ最悪のケースとしてレッカーをされたとしても2万円くらいだから、血相を変えて走り回って探すほどのこともないか、と胸算用をしたが、これが5万円なら迷わず走るな。

さて階段を降りたら今度はエレベーターがあり、進むならそれしか選択肢はなかった。

ところが乗り込もうとした寸前でドアが閉まってしまい、急いでいる私は横の鉄のドアを開けて階段もしくは別のエレベーターがないか様子を伺った。

ドアの中は何かの店舗のようで、しかも雑然としていて、ああこれは床屋か。床屋が閉店してしまったのか。

つづく。
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