平成エンタメ研究所

最近は政治ブログのようになって来ました。世を憂う日々。悪くなっていく社会にひと言。

その男、狂暴につき 悪夢のような世界

2010年09月29日 | 邦画
 刑事・我妻諒介(ビートたけし)は<暴力>に麻痺してしまった男。
 暴力には暴力で立ち向かわなければ生きていけない世界の中で、我妻の感性は次第に麻痺していったのだ。
 そこには法律も良識も優しさも関係ない。
 ただし、暴力は暴力に報復される。
 我妻は敵の殺し屋(白竜)につけ狙われナイフで刺される。
 智恵遅れの我妻の妹(川上麻衣子)は輪姦され、クスリ漬けにされる。
 劇中では<気違い>という言葉が何度も使用されるが、我妻たちの目はどこか向こう側に行っている。
 我妻はクスリ漬けにされて、本能のままに「クスリをちょうだい、クスリをちょうだい」という妹の姿を見て嫌悪したのか、愛する妹も射殺する。
 まさに<気違い>だらけの世界。
 悪夢のような世界だ。

 そして、こんな世界に生きる人間が救われるには、やはり死ぬしかない。
 地獄から抜け出るには死ぬしかない。
 我妻の行動は死に向かっている。

 北野武作品には、どこか悪夢を見ている様な感じがある。
 この作品は特にそうだ。
 正義とか愛とか、日常の論理とは違った部分で物語が進行している。
 画家の岡本太郎は「芸術は嫌悪感を抱かせるものだ」と何かで書いていたが、この作品はまさに見る者に嫌悪感を抱かせる作品。
 そして、この嫌悪感の先に日常の背後に隠された真実が描かれているような気がする。
 たとえば、人間の醜さとか、虚無とか狂気、死への意思とか。

 我々は嫌悪感に目を背けずに、この作品を凝視しなければならない気がする。
 それはなかなかハードな作業だが。


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