平成エンタメ研究所

最近は政治ブログのようになって来ました。世を憂う日々。悪くなっていく社会にひと言。

羊たちの沈黙

2008年02月26日 | 洋画
 CSで久しぶりに見た「羊たちの沈黙」

★ハンニバル・レクター(アンソニー・ホプキンス)のキャラの立て方がいい。
 
 レクターに会いに来るFBIアカデミーの訓練生クラリス(ジョディ・フォスター)。
 事前にレクターがどんな人物か聞かされる。
 9人も殺した食人嗜好の天才精神科医。
 ここで観客は様々な想像をめぐらす。
 レクターが隔離されている精神病院の地下室に来るクラリス。
 レクターは一番奥にいるという。
 通路の左側は牢で、レクターの他にも危険な犯罪者がいるから右側を歩けと忠告される。
 通路を歩くクラリス。
 他の囚人から浴びせられる卑わいな言葉。
 ここでもまだレクターの姿をもったいつけて見せない。
 レクターが通路の一番奥にいるというのがポイント。
 いやがおうにも観客の恐怖と好奇心は広がる。

 そして出会うレクターに出会うクラリス。
 レクターは凶悪な顔をした人物でなく、穏やかなインテリ。
 この裏切り方。
 だが徐々に恐怖が広がってくる。
 クラリスが使っている香水の銘柄などを嗅ぎわける。
 観察してクラリスの私生活を言い当てる。
 卓越した分析能力と狂気に似た執着。
 クラリスをハダカにする様な。

 後日、クラリスは聞かされる。
 クラリスに卑わいな言葉を投げかけた囚人がレクターにより自殺したと。
 心理分析に長けたレクターは巧みに言葉を浴びせて囚人を自殺に追いやったのだ。

 この一連のやりとりだけでレクターがどんなに怖ろしい人物かわかる。
 見事なキャラクター描写だ。

 それは中盤、具体的な行動でも描かれる。
 レクターの脱走。
 手に忍ばせていた金属の棒で手錠を外し、警官ふたりに襲いかかる。
 ひとりの警官には手錠をかけ、もうひとりには噛みつく。
 そして警官を殺すと、美術品を作るかの様にシーツを使って天井から宙づりにする。
 警官の顔の皮を剥ぐ(→これは脱走のための伏線)。
 前半は言葉のやりとりだけの『静』だが、今回はアクション、『動』だ。
 このメリハリのある見せ方。

 こういう人物造型がなされているから、レクターはホラーサスペンスの代表的なキャラクターになったのだろう。
 決して関わりたくない人物だが。

※追記
 拘束服で運ばれるレクター。顔にも。
 拘束されることは人間の潜在的恐怖。
 拘束服、拘束具は恐怖を増幅するアイテムだ。


コメント
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