JAZZ & BAR em's(ジャズバーエムズ)

 銀座6丁目に2003年末オープンしたジャズバーです。
「大人のくつろぎ空間」をお探しの皆様にご案内申し上げます。

ハニー!その④

2011年06月09日 | エピソード
 戦後若き日本のジャズマンたちが活動した場所・・
「将校クラブ」
 今で言うプロダクションに登録し、要請に応じてバンドを組んで
出動するわけです。 御歳84歳の河辺さんが20代のホープだった頃
ある夜7,8人の編成で着いたところは、なんと女性将校ばかりのクラブ!
 グレン・ミラー楽団そのものの格好に身を包んだ大人の女性たちが、
思い思いの飲み物を手に、ゆったりと演奏を聴いているのです。

 約束の2ステージが終わって夜も更けた頃、リーダーらしい女性がマネージャーに交渉、
「あと1ステージやってくれない?私たち、ここでキャッシュで払うわ
マネージャーもドルが欲しかったので
「やりましょう!」ということになり、例のスタイリッシュな帽子を
回してドル紙幣をたくさん集め、バンドも喜んで再び演奏を始めると・・
それまでのステージでは大人しく座って聴いていた彼女たち、何だか
様子が違っているのです。
 一人がグループの端っこに座って吹いていた河辺さんの隣にピッタリくっついて
座って「Honey!」とキスの嵐! 吹きにくいなあ、と思いつつ周りを
見まわすと、それぞれお目当てのプレイヤーに張り付いてみんなで
濃厚な状況
 唯一、張り切って立ちあがってソロを吹いていたトランペッターだけが
その光栄に浴さなかったとか・・・カワイソ、誰?

河辺「ハニーって言葉はこういう風に使うのかあ、って初めて実感したんだね。
「その時もらったキャッシュでさ、今の服部時計店が(今は和光と呼んでます)
PX(免税店?)だったんでね、11ドルで靴を買ったんだよ。丈夫だったなあ。」

 それからそれへと想い出話は広がります。
リアルタイムで戦後を経験した先輩のお話は、今は文献でしか
知ることができない情景を、体温を伴って蘇らせてくれます
ライブのだいご味のひとつ。