JAZZ & BAR em's(ジャズバーエムズ)

 銀座6丁目に2003年末オープンしたジャズバーです。
「大人のくつろぎ空間」をお探しの皆様にご案内申し上げます。

子供の頃の記憶

2007年10月26日 | 季節

 O.ヘンリーといいうアメリカの作家の短編集の中で、お酒を効果的に
使っていて、妙に細部まで覚えているものがあります。

邦題「最後の一葉」
 貧乏な絵描き志望の学生たちが暮らすボロアパートが舞台。
ルームメイトの女の子が重い病気にかかり、彼女は行く末を悲観して
「窓の外のあの壁を這っている蔦の葉がみんな落ちてしまったら、
それが私の死ぬ時」と勝手に思い極めて、ベッドから一日中隣のビルの
壁を眺めている。主人公の女性は、なんとか気分を明るくさせようと
試みるけれど、言うことを聞かず、日に日にやせ衰えていく・・・。
同じアパートに、いつも飲んだくれている年寄りの売れない絵描きがいて、
ふたりのことをいつも気にかけてくれているけれど、この人、いつでも
『ジンの匂いをプンプンさせている』(ねずの実の香りと書いてありました。
ジンの原料、ジュニパ-ベリーのことですね) 彼は夜中に、
木枯らしの外壁にハシゴをかけて、最後の一葉がへばりついて
残っているかのごとく作品を描き上げ、冷たい風にも負けなかったその一葉が、
病床の女の子に生きる気力をくれる。老絵描きは凍えて死んでいるのが
発見される・・・というお話。


さすがにそんなおじいさんがラッパ飲みしているようなお酒を、
飲んでみたいとは思わなかったけれど、ジンの香りがすると、
その情景が不思議に鮮やかに今でも浮かびます。