桃井章の待ち待ち日記

店に訪れる珍客、賓客、酔客…の人物描写を
桃井章の身辺雑記と共にアップします。

2009・1・21

2009年01月22日 | Weblog
たった五秒か十秒だ。あと五秒か十秒店の灯を消すのが早かったら、十二人のお客さんの売上二万八千円を失う処だった。今年に入ってから売上不振が続くウチの店は、今日も超低空飛行で、早い時間から人妻Iちゃんたちが来店してくれたにも関わらず、10時前には赤坂のクリニックに勤めるMさんだけになってしまい、11時過ぎに彼女が帰ってしまうと、俺たち二人になってしまった。けど、15分後には夕刊FのUさんが来店してくれてホッと安堵したものの、翌朝勤めのあるUさんが店にいられるのは一時過ぎまで。それでもお客さんがいないのに同情してくれたのかUさんは二時近くまでいてくれたけど、彼が帰った後、今日はこれきりだなと観念しせざるをえない。この時点で売上は三万弱。雨も冷たいけど、今日の売上も寒々しい。Mと二人、殆ど無言で後片付けを終えて店の電気を消そうとした時だった。階段をバタバタと降りて来る数人の足音。誰かきた!ドアを開けて入ってきたのは映画監督のHさんと女優のTさん、男優のOさんという五年前の映画『V』のトリオだ。続いてプロデューサーのMさんとNさん、直前の飲み屋で合流したという有名個性派俳優のEさんと最近俳優としてメキメキ頭角を現している二人の息子さんたち総勢12名。カウンターにズラッと並んだ日本映画界を支える面々と映画の話をしながら俺は頭の中で電卓ばかり叩いていた。