緩和ケア医の日々所感

日常の中でがんや疾病を生きることを考えていきたいなあと思っています

緒方貞子さん、ありがとう。

2019年11月04日 | 社会時事
緒方貞子さんがご逝去されました。

このブログにも
数回ではありますが、
お名前を書かせていただいたことが
ありました。



私は、実は強く緒方さんの姿勢を追いかけているところがありました。

現場に足を運び、
自分の目で確かめ、
本当に必要な支援は何なのか、
それまでのやり方にとらわれず、
考え、行動する・・




緩和ケアの本質的なことが
ここにはちりばめられています。



真に必要なサポートの在り方の探索

丁寧な診察と対話

ただ、検討するだけではだめで、行動すること



カンファレンスで患者さんの病状や問題点を聞いた時、
色々尋ねながらも、どこかしっくりこないところがあれば、
ベッドサイドに足を運び診察をし、問診、対話をします。

周りのスタッフにしてみれば、時間はかかるし、
面倒だと思われることもあるだろうと思いますが、
そこから発見することは数知れずあります。

痛みがあると聞いても、
あらためて身体所見を取り、実際に動く姿を見、
夜間せん妄だと聞くと、そっと病室まで、
遅い時間に診に出向くこともあります。
当たり前のようで、とても大切なことです。





緒方貞子さんが、国連を離れて、JICAの理事長をなさっていた時、
私の前任地の国立国際医療研究センターはJICAとの強い関係があったため、
度々お名前をお見掛けをすることがありました。

ただ、お名前を見ただけなのに、憧れで心躍る気持ちでした。

そして、壁にぶつかるたびに、緒方さんの影に励まされ続けたように思います。

車から降りて建物の中に入っていかれる姿を垣間見たに過ぎず、
お目にかかったことも、ご挨拶をしたこともありませんでしたが・・

今回、お亡くなりになったと聞き、
憧れだった燈火がゆっくりと消えていき、
時代が一つ終わったようでした。

そのことは、
もう、私がいなくても、
あなたは頑張れるでしょと
微笑まれているような感覚でした。


こうした体験は、
人の役に立つ・・とは、直接的でなくとも、
どこかで一生懸命生きているだけで
こんなにも他の人に勇気を与えるものなのだと
支えられ続けたわが身を持って実感しました。




死を前にした患者さんがおっしゃることがあります。
寝たきりで、もう、人の役に立てなくなったから・・と。

そんなことはありません。
あなたが今存在していることで
支えられている人がきっといます・・・

私がそうだったように。

コメント (2)    この記事についてブログを書く
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2 コメント

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納得 (m-tamago)
2020-06-29 10:40:09
私も緒方貞子さんの姿勢、尊敬していました。

読んで、涙が出ました。
本当に、そうだ。
人の役に立つ・・とは、直接的でなくとも、
どこかで一生懸命生きているだけで
他の人に勇気を与えるもの

微力な私もそうありたいと思いました。
返信する
m-tamagoさん (aruga)
2020-07-05 18:26:47
胸が熱くなりました。

同じように思ってくださっている方がいる・・
そう思うだけで、こみ上げてくるものがあります。

茶道を極めていらっしゃるブログに、
何か同じような心根を感じることができたのは、
そうした共通なものがあったからなのかもしれません。

コメント、ありがとうございました。

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