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緩和ケア医の日々所感

日常の中でがんや疾病を生きることを考えていきたいなあと思っています

痛覚変調性疼痛:脳の神経回路の変化で起こる第3の痛み

2025年04月06日 | 医療
痛みは一つではありません。

1. 侵害受容性疼痛
 1)内臓痛
 2)膜性疼痛
2. 神経障害性疼痛

この1.と2 は広く知られている痛みです。


そして、
2017年国際疼痛学会は
3つ目の痛みとして
「nociplastic pain」
を提唱し、
2022年日本ではこれを

3. 痛覚変調性疼痛

と呼ぶことに決めました。
過去に、心因性疼痛と言われていた痛みです。


ただ、
”こころ”の問題ではなく
”脳”の異常事態の痛みのため
病名が変更されました。

朝日新聞の記事



2021年のランセットに
総説が掲載されました。

その要旨には
組織の継続的な炎症や損傷によって引き起こされる侵害受容性疼痛や神経の損傷によって引き起こされる神経障害性疼痛とは異なるメカニズムによって引き起こされる第3の痛みであること。

中枢神経系(つまり脳)による痛みと感覚処理の増大(脳で痛みを増幅させてしまう)。痛みの調整機能の変化(なので、変調性)が重要な関りをしている痛みであること。

組織や神経の損傷量から予想される(つまり痛みの原因から想定される)より、広範囲で、強い痛みを認め、加えて、疲労、睡眠、記憶、気分の問題などの中枢(脳から生じる)症状を認めること(中枢性随伴症状)。

単独で生じる場合(繊維筋痛症や緊張型頭痛)、侵害受容性疼痛や神経障害性疼痛に混ざって生じる場合(慢性腰痛症が契機になり痛覚変調性疼痛も重なっているような場合)があること。

末梢性鎮痛薬の非ステロイド性抗炎症薬や、オピオイド、手術、注射などの治療への反応は低下し、1.2.の鎮痛療法とは異なるアプローチが必要なことを認識しておくのが重要。

本文の治療の項には
まず、なによりも
非薬物的アプローチ:
医師‐患者関係構築、患者教育(神経メカニズムや用語、治療戦略、現実的な効果)、セルフマネジメントを高める、社会生活への参加を維持する、生活習慣を整える。

精神科的アプローチ:
認知行動療法、アクセプタンス・コミットメント・セラピー(受容の促し、心理的柔軟性を高める)など

多職種ケア
リハビリテーション・理学療法、鍼マッサージ

薬物治療:
・中枢系:三環形抗うつ薬、SNRI、ギャバペンチン系など
・オピオイドは極力避ける
・末梢性鎮痛薬は効果が少ない
・中枢作動性のNMDA拮抗薬やカンナビノイド(アセトアミノフェン)が一部の患者には効果的なこともある

といったことも記述されています。
簡単ではないのです。
出典:
The Lancet. SeriesChronic Pain; Volume 397, Issue 10289 p2098-2110

ichimiによるPixabayからの画像


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4 コメント(10/1 コメント投稿終了予定)

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Unknown (ちゅん)
2025-04-07 10:52:38
痛みの領域もどんどん進化していて、医療は常に学びの姿勢を持ち続ける事が大切だと感じてます。ただ、そんな中先生のブログは前向きになれる文面なので、逆に学ぶ事を楽しくなってます😊先日のビタミンと皮膚炎の話、実際患者さまで当てはまる方がいて、治癒につながりました。ありがとうございます!
返信する
Unknown (なおこっち)
2025-04-07 17:49:44
緩消法をすると、呼吸も深くなってリラックスできます。
返信する
Unknown (e3693)
2025-04-07 20:50:12
ちゅんさん

学ぶ事が楽しい!
もう、最高じゃないですか!!

ビタミンのこと、患者さんに還元してくださり、本当にありがとうございます!
嬉しいです!!!

aruga
返信する
Unknown (e3693)
2025-04-07 20:53:02
なおこっちさん

緩消法というのがあるのですね。
自分に合った方法を持っていらっしゃるとは、素晴らしいですね!
コメント、感謝です!!

aruga
返信する

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