緩和ケア医の日々所感

日常の中でがんや疾病を生きることを考えていきたいなあと思っています

あいまいな喪失

2020年09月27日 | 医療
(写真は、Cindy LeverによるPixabayからの画像)

2017年に書いた記事。

COVID19は、まさに、このあいまいな喪失を引き起こしています。




きちんとお別れができない死別・・

これは、コロナによる死亡にとどまらず、
感染予防のために、
外部からのお見舞いや訪室を
最小限にしていることで
様々な疾患、様々な場所で起こっています。

介護施設
急性期病院
療養病院
一部の緩和ケア病棟でも・・



そもそも、病院で死別することは、
死別を曖昧にしているところがありました。

最期のケアは病院にお任せだったり、
最期の数時間、立ち会えなかったり・・

日本の中では、看取りの90%近くが
病院の中のことになってから、
在宅医療の推進が始まりました。


とはいえ、COVID19以前の医療状況では、
患者さんもご家族も、選択することができました。
病院のルールの範囲ではありますが、
会いたい時に自由に会え、
時間的な余裕があれば、時に、医療者と共に
ケアに参加されることもありました。


これが、COVID19で、
患者さんもご家族も、選択できなくなりました。
隔絶された空間での終焉が、
いつ、どのように亡くなったのか、
最期の様子を記憶に留めることもなく、
亡くなったという連絡で
死を理解しなくてはいけない状況。

まるで戦死のよう・・




いつか、このコロナ禍が過ぎ去り、
また、いつか元の人生の終わり方ができるようになれば・・

と思いつつも、もし、もう元に戻ることがないとすると、
今の介護や医療をかえていかないと、
ずっと、このあいまいな死別が続いていくことになるのだろうか・・

今まで、在宅医療の推進は、
ひっ迫した医療経済の為なのではないかと、
思わず考えてみたりすることがありました。

今、感じます。
自分の人生を
最後まで自分の手元に置いておくためにこそ
在宅医療が選択できる整備が必要なのだろうと。

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2 コメント

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Unknown (オキツ)
2020-11-08 22:40:06
この記事がUPされた1週間ほど前に、伯母が旅立ちました。このご時世なのに、入院中、普通に面会できた事に、残される側はとても救われました。医療の方には心から感謝しています。ありがとうございます。
https://blog.goo.ne.jp/oneby1/e/3449b6c874b9cf76ae9ecd3006543eaf
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Unknown (aruga)
2020-11-08 23:32:55
オキツさん

伯母様の最期をシェアして下さり、感謝です。

別れはおつらいことだったと思いますが、救われたとお書きくださったこと、関わられた医療者がお知りになったらどんなに喜ばれることでしょう。
温かなメッセージにここに来てくれる医療仲間も喜んでくれることと思います。

本当に、ありがとうございました。
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