プロメテウスの政治経済コラム

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政府・与党の沖縄基地問題検討委員会の無責任  沖縄に海兵隊が移転したのは「駐留なき安保」の結果

2010-02-18 20:40:46 | 政治経済
政府・与党は16日、米軍普天間飛行場移設問題をめぐり、17日の沖縄基地問題検討委員会で予定していた社民、国民新両党の移設案提示を延期することを決めた。沖縄県内は当然として、県外・国内にせよ、「移設」候補先の名前が漏れてくるたびに、受け入れ反対の声が広がるためであるみんな安保は必要だ、米軍の駐留がないと不安だと言いながら、自分の所へは、米軍基地は来てほしくないのである。だから、沖縄基地問題検討委員会は、なかなか決断できないのだ戦後65年、米軍基地の圧倒的部分を沖縄に押し付けておいて、あまりにも無責任でないか。「移設」先探しでウロウロするのは、沖縄県民への侮辱である。米軍基地が来てほしくないなら、「移設」先探しにエネルギーを使うより無条件撤去のための米政府との交渉を一日も速く、本腰を入れて始めるべきだろう。

 米海兵隊が日本に配備されたのは、1951年ごろであった。朝鮮戦争の予備隊として岐阜・静岡・山梨各県などに配備された。それがなぜ、沖縄に移転したのか。
沖縄の人びとは、海兵隊は日本本土から来たという

鳩山由紀夫首相の祖父・鳩山一郎政権時代、一般国民だけでなく、当時の支配層も“安保条約はあまりにも不平等”と考えざるを得なかった。鳩山一郎内閣の重光葵外相は「駐留なき安保」を目指して、ダレス国務長官に会いに行く。そのときの日本側の構想は、「米比相互防衛条約」や「太平洋安保条約」(ANZUS)を例に出し、日米安保を集団的自衛権の行使を前提とした「相互防衛」条約にしたうえで、①6年以内の米地上部隊の撤退②空軍・海軍の撤退③米軍基地・部隊の目的を「相互防衛」にする(集団的自衛権)④これ以上、米軍への(財政的)貢献は行わない―などであった(「しんぶん赤旗」2010年2月15日)。
ところが、「とにかく、日本は、米国と条約を結んでいる他の国のように対等なパートナーになりたいのです」という重光葵外相の願いは、ダレス長官によって軽く一蹴されてしまう。
アメリカにとって、54年7月発足の自衛隊との「相互防衛」なぞ何の関心もない。<ダレスは激しく反発した・・・ダレスにとっては、日本が集団的自衛権を行使して「米国を守る」ことよりも、米国が日本の基地を特権的に維持し続けることの方がはるかに重要な意味を持っていた・・・ダレスの最大の関心は、「望むだけの軍隊を、望む場所に、望む期間だけ駐留させる権利」を確保し続けることにあった・・・>(豊下楢彦『集団的自衛権とは何か』岩波新書2007)。

 このとき、アメリカは「防衛力漸増の政策」=自衛隊の本格的な増強を約束させるとともに、少しばかり、日本政府の顔を立て「地上部隊の漸進的な撤退」に合意する。「漸進的な撤退」といっても、もちろんアメリカ政府は米国本土に戻る気などさらさらない。当時、日本本土から切り離され米軍の直接占領下にあった、「沖縄」は米国である。こうして、55年から第3海兵師団司令部をはじめとした各部隊が、「米軍地上部隊を漸進的に撤退させるとの日本との合意」にもとづき「沖縄」に移転する。そして、これと軌を一にして、沖縄では各地で「銃剣とブルドーザー」による民有地の強制取り上げが始まったのだ。
日本人は1609年の薩摩による琉球侵攻以来、沖縄を「植民地」のように扱ってきた。1872年に明治政府による「琉球処分」(琉球王国の解体)が行われ、1879年に廃藩置県によって沖縄県とした。その過程は植民地化をともなう屈辱的なもので、琉球文化の破壊が進んだ(広河隆一「沖縄・普天間基地」『DAYS JAPAN』2010年3月号)。
沖縄の人びとにとって自分たちが植民地化されているという象徴的存在が基地である。「県外移設」の沖縄の人びとの声を単に基地を嫌がっているという程度に受けとめたら、それは大変な間違いだろう。
「米軍基地は、日米同盟の名の下、安保条約を選択し続けている日本人一人びとりが引き受けるべきものである。【日米同盟】を言いながら、その【具体的形としての基地】を引き受けず、【沖縄に押し付け続けている】ことは、これ以上許されることではない」(広河隆一 同上)という沖縄の人びとの思いを本土の国民はどう受けとめるのか。

 「移設」を口実に名護市辺野古崎に最新鋭の基地を建設しようという計画は、住民に「ノー」を突きつけられた。名護市長選に勝利した稲嶺進市長は「米軍新基地建設は、名護市の海であれ、陸であれ反対する、県内の基地のたらい回しは反対する」ときっぱりと沖縄の心を代弁している。嘉手納基地への移駐や辺野古の陸上部に新基地を建設しようという国民新党案が県民に支持されないのは当然である。さりとて、社民党の米領グアムに加え、長崎県の海上自衛隊大村航空基地と陸上自衛隊相浦駐屯地案なども行き詰まりが目に見えている。グアムはアメリカ大統領の投票権もない、議会にひとり代表を出すが、議決権もなく意見表明だけという準州扱いであり、グアムの人びとも海兵隊の受け入れに反対している。
「駐留なき安保」を幻想だ、「抑止力」をどうするのだと叫ぶ輩は、責任をもって沖縄県民・国民を説得すべきだ。

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