プロメテウスの政治経済コラム

プロメテウスは人間存在について深く洞察し、最高神ゼウスに逆らってまで人間に生きる知恵と技能を授けました。

アバター  気高い「野蛮人」と野蛮な「海兵隊」 団結して立ち上がる“ナヴィ族”の人たち

2010-02-17 20:24:27 | 政治経済

『AVATAR』を迫力満点の最新3D映像で観た。映画「アバター」が日本の興行収入100億円突破達成(2月10日現在)で、この金額は同じキャメロン監督の「タイタニック」を50日間も上回るという。最新技術を駆使した立体感のある3D映像は、たしかに迫力満点である。しかし、この映画の面白さは、「タイタニック」もそうであったように、単なる娯楽大作ではないということだ。主人公ジェイク・サリーは、地球上での戦争で負傷して下半身不随になった元海兵隊員。いま、沖縄や岩国で問題となっている干渉と介入の侵略軍である米海兵隊の野蛮さとその野蛮な軍事力に立ち向かう「ナヴィ族」の気高さが主題であるアバターに描かれた地球軍は明らかに米軍のイメージであり、破壊的でかつ金儲けの手先となっている。アメリカではこの点が大いに気にいらない方々もいるようだ(竹中 正治「アバターが映すアメリカの苦悩」NBオンライン2010年2月4日)。



 下半身不随になり、車いす生活を送る元海兵隊員ジェイクは、「アバター・プロジェクト」の参加者として、衛星”パンドラ”にやって来る。パンドラでは、肉体的には人間よりも能力が高く、研ぎ澄まされた感覚を持つ人間そっくりの種族、“ナヴィ”族が生息していた。3メートルの身長、尻尾ときらめく青い皮膚をしたナヴィは、原始的ながらも自然と調和した暮らしを送っていた。ナヴィがテリトリーとするパンドラの森の奥には希少鉱物が埋蔵しており、これを採掘して地球に持ち帰れば、地球のエネルギー技術を一変し、巨万の富をうることができる。
人間はパンドラの大気を呼吸できないため、人間とナヴィを組み合わせた肉体、アバターが遺伝子操作で作り出された。ジェイクはアバター(化身)となっている間だけ、“ナヴィ”族で生活できる。パンドラのジャングル深く、侵略のスパイとして送り込まれた彼は、ナヴィの女性ネイティリと出会う。彼女は若くて美しく、そして勇敢な戦士であった。ジェイクは彼女のもとでナヴィ人として生活しながら、森に住む多数のすばらしいもの、尊い文明に触れてゆく。そして息をのむほどに美しいパンドラの自然が3D画面に溢れる。やがてジェイクと彼を送り込んだ科学者チーム、空軍のパイロットら数名は、資源開発省と軍隊の“ナヴィ”族に対する暴虐に憤り、反逆して、“ナヴィ”族と共に侵略軍と戦うことを決意する。

 『AVATAR』は、最新技術を駆使した立体感のある3D映像ばかりが注目を集めている。しかし、侵略軍の海兵隊の野蛮な姿がこれでもかと描かれていることを見逃してはならない。この点について、キャメロン監督が「ロード・オブ・ザ・リング」のジャクソン監督と興味深い話をしている(『ニューズウィーク日本版』1月27日号)。キャメロン監督は、「映画はストーリーがすべて。人間が人間を演じてこそ映画・・・。(テクノロジーは映画の)救世主にはなれないだろう」と述べる。ジャクソン監督も「CGへの興味よりも、再び優れたストーリーが求められる時代になっている」と応じている。
2009年のコミック・コンベンションで、キャメロン監督は参加者を前に本作の主題を語っている。いわく、「アクションとアドベンチャーのファンの一人として自分がわくわくするような内容を少しと、同時に、良心を持ったもの――映画を楽しみながらも、自然界とのかかわり、人間同士の関わり方について、人々を多少なりと考えさせるようなものを製作したい。」と語った。なお、ナヴィの設定には、“人間のより高尚な部分、もしくは、人々がこうでありたいとあこがれるような人間”を表し、逆に人類には、“善良な人々もいるとはいえ、世界を破壊し、荒廃とした未来へと自分自身を追い込む、おろかな一面を象徴している”と付け加えている(「アバター (映画)」『ウィキペディア(Wikipedia)』)。

 アバターに描かれた地球軍は明らかに米軍のイメージであり、破壊的でかつ金儲けの尖兵である。米ワシントンポスト紙(電子版)に寄せられたコラムの中には、「世界がテロリストの脅威にさらされ、アメリカがそれと戦っている時に、この映画はイラクやアフガニスタンで跋扈するテロリストに加勢しているようなものだ」と批判するコメントが見られたという(竹中 正治 同上)。軍産複合体の手先にとっては、まさに不都合な事実なのだ
1950年代、60年代の西部劇に登場するインディアン(「ネイティブ・アメリカン」)のイメージは、「野蛮人、未開人」であり、西部を開拓する欧米白人の敵としてひたすら撃ち殺される存在でしかなかった。しかし、19世紀当時、「野蛮」「未開」のイメージ一色のインディアン部族が、実はスピリチュアルな文化を持つ気高い人間であり、「文明人」である欧米白人の方こそ、粗野であり、野蛮ではなかったのか。ベトナム人はどうか。イラク人、アフガン人は・・・。 インディアンを先住地から追い立て、彼らとの戦闘と流血の上に創られたアメリカ社会。そのアメリカは今も戦争好きな国として、その「侵略力」を沖縄や岩国、そして日本の領土のあらゆる所に保持しているのだ


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1 コメント

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Unknown (Max-T)
2010-02-23 11:12:08
偶然このブログを拝見しました。
でもこの映画は単なる「反米反権力」映画ではないですよね。だって元海兵隊員がナビ人の救世のヒーローとなっちゃう点で、もの凄くアメリカの観客に迎合しているでしょ。またその映画が世界的なヒットになってハリウッドが大儲けしちゃうってのも、なんともアメリカって国はしたたかだなって思いませんか。
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