プロメテウスの政治経済コラム

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「専守防衛」も「敵基地反撃」も「戦争」が始まれば国民の生活は地獄

2022-12-20 19:10:06 | 政治経済

 今、ウクライナ国民は、ロシア軍による発電所などへの攻撃で、停電・断水が常態化し、厳しい冬の寒さのなか、地獄の生活を強いられている。我々が毎日見ているウクライナ戦争は、12月5日、6日ロシア本土内の空軍基地がウクライナの無人ドローンによって攻撃されるまでは(ウクライナは攻撃を明言していないが、ウクライナのポドリャク大統領府顧問は、関与を示唆)、典型的な「専守防衛」戦争であった。

 12月5日にロシア中部サラトフ州のエンゲリス空軍基地がドローンによって攻撃され、ウクライナ各地への攻撃に使用されるTU95爆撃機2機が損傷した。この基地はウクライナから600キロ以上離れており、重爆撃機が30機以上駐留する戦略的には重要拠点である。また首都モスクワに近いリャザン州のディアギレポ空軍基地でも燃料輸送車が爆発して3人が死亡した。また、6日にはロシア中部クルスク州の飛行場で燃料タンクがドローンによる攻撃で炎上した。ウクライナの自衛権行使による「敵基地反撃」である。

 

 日本では、12月16日、岸田政権が「敵基地攻撃能力(反撃能力)」保有などを盛り込んだ「安保3文書」改定の閣議決定を強行したことが大問題になっている。「敵基地攻撃能力」とは、日本がミサイルで攻撃されるのを防御するために、相手国のミサイル発射基地などを破壊する能力のことをいう。これまでの日本の安全保障政策は、憲法9条の武力行使禁止の例外として、必要最小限度の実力行使=「専守防衛」=相手国領土内では戦闘を行わないというものであった。しかし、安倍政権が強行した安保法制によって米軍と共に戦う自衛隊が、「専守防衛」のためだけの装備しか保有していないとなれば、使い物にならない。覇権に陰りが見える米国にとって目下の同盟諸国の軍装備の向上は、必要不可欠であり、GDP2%への軍事費増額要求は最低限の水準なのである。

 

 ウクライナ軍は、米欧諸国からの武器供与や軍事訓練・情報提供などの支援を受けて、自国領に侵入したロシア軍と今、必死で戦っている(専守防衛)。ウクライナ軍がロシアのミサイル基地・空軍基地に反撃を加えても(敵基地反撃)、ロシア国内の基地から飛んでくるミサイルをすべて撃ち落とすことはできない。ロシア軍による報復攻撃は、「ロシアに奪われた領土を取り戻し、ロシアを追い出すまでは徹底的に戦う」というゼレンスキー大統領の勇ましい掛け声のもとで、一般市民を一層の飢えと寒さという地獄に追いやることだろう。

 

 自衛権の行使だと言って自国内で必死に戦っても(専守防衛)、相手国のミサイル基地に反撃を加えても(敵基地反撃)、戦争になれば、国民の命や暮らしは木っ端みじんに破壊されるほかない。「戦争ビジネス国家」アメリカに唆され、ロシアを敵にまわし、挙句に侵攻されたウクライナの現実は、「専守防衛」であろうが、「敵基地反撃」であろうが、決して敵をつくってはいけないことを教えている。中国・ロシアや北朝鮮がアメリカの敵であっても決して「平和国家」日本の敵にしてはいけない。敵のない日本に軍装備は無用の長物である。


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