プロメテウスの政治経済コラム

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<アフガン殺害>何故これほどまでにアフガン情勢は悪化してしまったのか  腹が立つ前原発言

2008-08-28 19:12:04 | 政治経済
アフガンの復興を心から願い、そのために心血を注いだ「ペシャワール会」の伊藤和也さん(31)が拉致殺害された。何故これほどまでにアフガン情勢は悪化してしまったのか。民主党の前原誠司副代表は27日、都内の日本外国特派員協会で講演し、「ペシャワール会」の伊藤さんが拉致された問題について、「相当程度の警護のための自衛隊員を出さないと、民生支援を丸腰で出すというのは極めて危険だ」と発言した(「しんぶん赤旗」2008年8月28日)。アフガン情勢悪化の根本に米軍の「対テロ」戦争があることにまったく無反省、無責任な発言に腹が立つ。現地で、住民に溶け込む努力を積み重ねるNGOのスタッフをいっそう危険に晒すものだ。

アフガニスタン東部ジャララバードで非政府組織「ペシャワール会」スタッフ、伊藤和也さんが拉致され、遺体で見つかった。
伊藤さんは、農業の専門家として2003年いらい農業支援などの活動に当たってきた。現地住民の信頼の厚い「ペシャワール会」までがなぜ狙われたのか。武装組織の実態や殺害に至った詳しい経過は分からないが、戦時下のアフガニスタンで現地の人々のために献身的に活動していた日本人青年が不当に拉致され危害を加えられたことに、心からの怒りとアフガンの荒廃をこれほどまでにした米軍主導の多国籍軍の「戦争」に本当に怒りを覚える。さらになにを血迷ったか自衛隊を出せという前原民主党副代表の対米従属の無責任さには腹が立つばかりだ。

伊藤さんが、アフガニスタンという国を知ったのは、2001年の9・11同時多発テロに対するアメリカの報復爆撃によってである。
「『アフガニスタンは、忘れさられた国である』この言葉は、私がペシャワール会を知る前から入会している『カレーズの会』の理事長であり、アフガニスタン人でもある医師のレシャード・カレッド先生が言われたことです。今ならうなずけます。・・・
私が目指していること、アフガニスタンを本来あるべき緑豊かな国に、戻すことをお手伝いしたいということです。これは2年や3年で出来ることではありません。子どもたちが将来、食料のことで困ることのない環境に少しでも近づけることができるよう、力になれればと考えています。・・・
甘い考えかもしれないし、行ったとしても現地の厳しい環境に耐えられるのかどうかもわかりませんしかし、現地に行かなければ、何も始まらない。そう考えて、今回、日本人ワーカーを希望しました。 2003・6・15」(伊藤さんの「志望動機」より 「産經新聞」8月28日12時18分配信)。

アフガンで軍閥の「武装解除」に取り組んだ経験のある伊勢崎賢治・東京外国語大学大学院教授は、自分が成功したのは「美しい誤解」(日本は武力で介入していないという)があったからだと常々言っておられる。アフガンで日本人が拉致されたという第一報を聞いたとき、私がまず思ったのは、「美しい誤解」が見破られたのかということだった。インド洋での給油活動を継続するための新テロ対策特別措置法が今年初めに大問題になり、いままた国会の会期をめぐって、衆院2/3再議決が取沙汰されているからである
米国による報復戦争が開始される前まで、アフガンでは外国人が誘拐されたり殺害されるなどということはほぼ皆無であった。「アフガニスタンNGO安全事務所」の報告によると、今年1-3月のNGOの被害件数は29件で、昨年の総数30件に近づいている。被害状況も深刻で、昨年同時期比で「誘拐」が2倍以上、「死亡」が5倍以上となっている(「しんぶん赤旗」2008年8月28日)。

日本政府が支援するアフガン戦争の7年間は、米軍らの攻撃で無数の民間人が殺害され、これが外国軍への憎悪を掻き立てるとともに、米傀儡カルザイ政府の機能マヒとそれに乗じた武装勢力や犯罪者集団の跋扈を許してきた。アフガニスタンで、米軍の「対テロ」戦争と国際社会による復興支援が同時進行する矛盾が今回の伊藤さんの悲劇を生んだ。
出口のない戦争を停止しない限り、混乱に終止符を打つことはできない。新テロ特措法延長による戦争支援の継続に躍起になる日本政府、自衛隊を出せという前原副代表の罪は深い。

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