プロメテウスの政治経済コラム

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日本のデフレは強欲大企業の所為  富士通総研HPのコラム

2010-08-21 18:56:23 | 政治経済
物価が恒常的に下落する「デフレ」の本当の原因は、「賃金の下落」にある――大企業のシンクタンクの一つである富士通総研のホームページに掲載されたコラム(根津 利三郎「米国は日本のようなデフレにはならない」)はこう指摘する。「デフレ、すなわち消費者物価指数(CPI)が恒常的に下落しているのは日本だけの現象であり、先進国共通の問題ではない。デフレが日本特有の現象である以上、原因も日本特有のものがあるはずだ。・・・日本でのみ賃金が傾向的に下がり続けていることだ」という。
強欲大企業の社会的責任を追及しない、どんな「成長戦略」も絵に描いた餅だ。

 根津さんは、このところ米国が日本と同様のデフレになるのではないかという論調が目立っているが、そのようなことになる可能性は低いという。理由は、日本では1990年代後半以降、継続的に賃金が下落しているのに対して、米国ではテンポは低下しても、賃金は上昇し続けているからだ
日本では何故かくも長期にわたってデフレが続いているのか。よく聞かれる説明に、グローバリゼーションが進行して中国やアジアの国々から安い輸入品が入ってくるとか、情報技術が進み経済全体でコスト削減が進んでいるから、ということが挙げられる。だが、このようなことは日本だけに起こっていることではない。米国でも欧州でも中国やアジアからの安い物品は溢れかえっている。これらの国における中国からの輸入品はGDP比で概ね2%で、日本と大差ない。したがって日本のデフレはグローバリゼーションの影響と結論付けすることは出来ない。ITによるコスト削減も先進各国共通だ。
日本の場合、ほかの先進国と違って賃金が傾向的に下がり続けて、勤労者が購買力を失い、そのことが物価を押し下げる要因となっているのだ

 根津前掲コラムより
多国籍大企業は国内の労働者、中小企業を踏みつけにして自己の利益の獲得に狂奔し、ただひたすら内部留保を積み上げた。グラフで示しているように、日本でのみ賃金が傾向的に下がり続けている。賃金が下がれば、勤労者は購買力を失う。そのため企業は価格を下げて販売量を維持しようとする。人件費が上昇しない限り、サービス価格も下落する一方である。海外で稼ぐことが主要目的の多国籍大企業は、国内の労働者や中小企業に対して、社会的責任を果たそうとしない。

 コラムはなぜ、日本で賃金が下がり続けるかについて分析している
第一に、「雇用を維持するためなら、賃金は多少下がってもやむをえない、という考え方が支配的」と指摘。その背景に中途採用による再就職が難しいことがあるとしている。また「またヨーロッパでは組合が企業単位ではなく職能別で組織率も高く、全国一律の賃金体系が維持されており、個別企業の事情で賃金をカットすることは難しい」。
第二に、賃金の安い非正規労働者の採用が大幅に増えたことが挙げられる。既にその割合は全体の3分の1にまで達している。非正規労働は外国にもあるが、日本に特徴的なことは、彼らの賃金が正規の半分程度と、大きな格差があることである。他の先進国では同一労働・同一賃金が日本より守られており、このような格差がないから、正規労働者を非正規に置き換えることでコスト削減するというインセンテイブはない
このように考えてくると、わが国が長期のデフレを克服するためには、他の先進国と同様に賃金の緩やかな上昇を安定的に維持していくことが肝要であることがわかってくる。 2002年から2007年の戦後最長の景気回復の期間中も賃金は上昇せず、下請け中小企業を買い叩き、ただひたすら利潤をため込んだ強欲大企業の社会的責任を追及しないかぎり、デフレ克服も景気回復もありえない

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1 コメント

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Unknown (50代おやじ)
2010-08-26 19:07:40
非正規労働者の受けを狙って、同一労働同一賃金を煽るのは止めて欲しいものです。
年齢や勤続年数で賃金に差をつけるのが、年功序列型賃金であって、
仕事の内容で決めるのが、同一労働同一賃金です。
だから、同一労働同一賃金は、年功序列型賃金とは両立しませんし、
実力主義みたいなものです。
導入したら、間違いなく正社員(特に中高年)の給料は下がります。

欧米で、同一労働同一賃金が実現できたのは、
年功序列という文化がないからです。
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