プロメテウスの政治経済コラム

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4~6月期GDP  日本経済の長期停滞のなかで進む貧困化

2010-08-18 23:08:08 | 政治経済
内閣府が16日発表した4~6月期の国内総生産(GDP)速報によると、前期比の成長率は年率に換算して実質で0・4%増、名目ではマイナス3・7%となった。民間調査機関の事前予測を大きく下回ったために、政府も衝撃を受けているようだ。
成長率や収益性、雇用などの指標を90年代後半から見ると、日本経済は成長性でも収益性でも、雇用の面でも長期停滞状況にある(藤田実・桜美林大学教授「大企業の産業競争力強化のための民主党政権『成長戦略』」『前衛』2010・9 No.861)。
日本経済はバブル崩壊以後の何次にもわたる経済政策にもかかわらず、停滞状態のままである。大型公共工事を中心とした財政出動も起爆剤にはならず、破滅的な財政赤字を残しただけだった。2000年に入ると需要側ではなく、供給サイドの強化によって経済成長を図ると称して新自由主義「構造改革」が推進された。結果は多国籍大企業や博才に長けた者などの一部勝ち組を生んだが、社会の大多数を占める労働者階級の貧困化と格差の拡大はこれまた破滅的となった。
大企業の蓄積本位の経済政策を続け、大企業が強欲を改めない限り、国民(労働者階級および中小零細自営業者)の生活状態は悪化するばかりである。

 8月16日、日本と中国でマクロ経済に関するニュースが話題を集めた。「中国GDP、日本を逆転」――。これは、内閣府が同日朝に発表した4~6月期の国内総生産(GDP)の速報値を踏まえたもの。内閣府の試算によると、同四半期のGDPは、日本は1兆2883億ドル、中国は1兆3369億ドルとなった。今年通年での日中GDPが逆転することはほぼ確実視されている。
人口規模から言っても、経済の発展段階から言っても、中国が日本を追い越すのは、時間の問題である。
重化学工業、鉄道、海運などの基幹産業や産業基盤を一通り整備するまでは、資本主義は、いわゆる開発独裁のもとで高度成長を遂げる。自民党長期政権、通産、大蔵官僚の開発独裁のもと1955年から1973年までの満19年間、日本の実質GDPの成長率は、世界が驚く9・25%であった。いま中国は、中国共産党の開発独裁のもと、日本と同じように基幹産業や産業基盤の整備に邁進している。8~10%程度の成長率を達成しても不思議ではない。中国が戦後もたついていたのは、毛沢東存命のときには、(旧)社会主義=戦時共産主義体制を捨てることができなかったからである(キューバではカストロがいまだ存命であり、北朝鮮の金正日は金日成の息子なので、戦時共産主義体制を捨てられないでいる)。

 基幹産業や産業基盤の整備を一通り終えた先進主本主義諸国の経済は、一般的に停滞する。更新需要と新規産業が生み出す需要だけとなり、生産財部門での大きな需要がないからである。経済は必然的に消費財部門、サービス、金融などが中心となる。
しかし日本はとりわけ、その長期停滞傾向が顕著である。米・英・独・仏との比較でみると、日本経済の長期停滞傾向が明瞭になる。日本経済は2000年から2005年にかけて上昇するものの、1・3%程度の成長に過ぎず、2005年から09年までの4年間では唯一マイナス成長に落ち込んでいる。

藤田前衛前掲論文より
日本では、供給サイドの財界があまりにも力が強すぎ、需要サイドの国民の側の力が弱いために、多国籍大企業の国際競争力が国内経済の回復に結びつかず、それどころか、多国籍大企業が国内経済を踏みつけにして海外で稼ぐ構造が定着してしまっているからである。この構造矛盾が、今回のGDP統計にも表れたのだ。

 したがって今求められるのは、余りにも多国籍大企業優先の経済成長戦略から暮らしと中小企業を優先する経済政策への転換である。人間らしい雇用のルール、大企業と中小企業との公正な取引ルールがある、ルールある経済社会は、多国籍大企業の国際競争力とは矛盾しない。資本は、与えられた制限を必ず突破する創意工夫を行うからである。
搾取や収奪が何の努力もなく自由に行える強欲資本主義の社会では、資本の活力も、やがて萎えてしまうのだ。

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