プロメテウスの政治経済コラム

プロメテウスは人間存在について深く洞察し、最高神ゼウスに逆らってまで人間に生きる知恵と技能を授けました。

時価会計凍結の意味  アメリカ現代資本主義思想の事実上の敗北宣言

2008-11-03 19:13:18 | 政治経済
日本の会計基準を遅れていると散々に批判し、時価会計基準を押し付けた米国が自国の金融資本が危機に直面した途端、時価会計凍結を言い出した。いまこそ時価評価で不良資産を洗い出すべきときに不良資産を隠すと言う。アメリカの詐欺的ダブルスタンダードやご都合主義は、現代資本主義思想の根幹までを誤魔化さないとやって行けないところに追い込まれている。ところが、日本の会計基準も右へならえをするという。経済的・軍事的に没落するアメリカとどう付き合っていくか、これからの十数年は日本国民にとっても重大な岐路となるだろう。自主独立の立場がいまこそ求められている

10月初めに成立した米国の「金融安定化法」は、SEC(米証券取引委員会)に時価会計凍結の権限を与えた。時価会計とは、企業が保有する株式などの金融資産を貸借対照表に記入するさいに、取得価額(いわゆる原価)ではなく、決算時の時価(=市場価格)で評価する会計のことである。期間損益は、決算時の時価評価純資産が前期決算時のそれからどれだけ増えたかどうかで測定される。企業活動を継続的に見るよりもその都度の清算価格で見ようとするものである。その根底にあるのは、いわゆる「株価資本主義」の思想である。

―現代の資本主義を支える株式会社の発展は、株価の上昇に現れてくる。したがって株式会社の価値は株価の時価総額で現される―ということである。

しかし、株価で企業価値を測るのには、もともと無理がある。株式市場では、ヘッジファンドなどが日常的に投機的な取引をおこなっており、その思惑で株価はたえず変動する。工場や機械設備など実物資産をもつ企業が日々変動する株価の時価総額に合わせて変動するわけではない。しかし、他企業を自社株で買収するとき、あるいはストックオプションで巨額の儲けを懐に入れたい経営者にとって、株価は重大な意味をもつ。株価がつりあがると株主も喜び、資金調達も濡れ手に粟である。こうして株価つりあげのさまざまな詐術が発達する。資産の証券化による譲渡や不良資産の飛ばしなど関連会社を利用した粉飾などがそれである。

米国流の「株価資本主義」は、株価が右肩上がりのバブル的な繁栄期には都合の良い“理論”だったとしても、現在のような金融危機の時代―株価乱高下の時代には、完全に裏目になる。企業の実在的な資産(工場や機械設備など)と株価の時価総額とが極端に乖離する事態となっているからだ。

一ノ瀬秀文大阪経法大客員教授は、米国流の「株価資本主義」の意味について、次のように指摘する。

<株式という一片の紙切れにつけられる価格の変動に全米(あるいは世界)の人びと、企業や産業、金融機関の命運がかかるような経済――それはもはやリアル・エコノミーではなく『倒錯』した、虚偽と詐術の経済である」>(友寄英隆「米国発の金融危機」「しんぶん赤旗」11月1日より孫引き)

時価会計は、企業価値を株価の時価総額ではかる「株価資本主義」の前提となっている会計思想である。
時価会計を緊急措置であれ凍結することは、アメリカ資本主義の根幹の思想=「株価資本主義」の事実上の敗北宣言なのだ


ブッシュ政権下でアメリカ帝国の没落が加速している。二大政党制のもとでの大統領選挙で誰が大統領になろうとも起死回生は難しいであろう。疲弊したアメリカが忠僕、日本へ経済的にも軍事的にも負担の一部肩代わりの要求をますます強めることが予想される。アメリカとともに沈没することだけは御免蒙りたいものだ。自主独立の立場がいよいよ切実に求められる事態に直面した。

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