１５年ぶりのドル安／円高を受けて１２日の東京市場は一段の株安となり日経平均の９０００円割れが視野に入ってきた。日経平均は５日続落。一時２００円を超える下落となり、７月６日に付けた取引時間中の年初来安値９０９１円７０銭を下回った。米中の景気減速懸念や欧州の財政不安、円高による企業業績圧迫に対する懸念が強まり、主力株を中心に売られた。ただ、後場中盤になって、菅首相が急激な円高について「動きが激しい」と仙谷官房長官に語ったとの一部報道などでドル／円が切り返し、株式先物にも買い戻しが入ったことで、引けにかけては下げ幅を縮小させた（ロイター8月12日16時28分配信）。
０７年に始まった世界的経済・金融危機は、各国の異常ともいえる緊急対策によって、一時的に終息し、安定したように見えたが、現在、ドル安、ユーロ安、ソブリンリスク問題など新しい局面を迎えている。各国の危機対策が次の金融不安を生み出すという悪循環に陥っているのだ。これは、明らかに資本主義の行き詰まり、危機の深化である。危機克服には、相当の時間を要すると思われ、先行きは不透明だが、資本主義の歴史は必ず次の段階に前進するだろう。
国際的に見て資本主義の行き詰まりが二つの面で明確になってきた。一つはゼロ金利政策であり、二つは財政危機、ソブリンリスクである。サブプライムローン危機、リーマンショックに端を発した世界経済・金融危機からの脱出を目指して資本主義諸国が採用した危機対策の第一は徹底した金利の引き下げであり、金融の量的緩和であった（今宮謙二「世界的経済・金融危機の新局面」『前衛』2010・9 No.861）
０６年と０９年末の金利水準を見るとアメリカのフェデラル・ファンド金利は５・２５％から０もしくは０・２５％と実質的にはゼロに近い。ユーロ圏は５・２５％から１％、イギリスは５％から０・５％となっている。主要資本主義諸国がすべてゼロ台や１％というのは、歴史的にみて異常である。これだけ金利を下げても企業が設備投資を拡大せず、不況が長引いている。先進資本主義国の需給ギャップがいかに大きいかということだ。過剰資金は、実物経済に向かわず、またぞろ投機マネー発生の温床となっている。
主要資本主義諸国の中央銀行は、国債のみならずおおくの資産（社債、コマーシャル・ペイパーなど）の買い取りをおこなって金融の量的緩和に努めた。投機資本主義が引き起こした経済危機の後始末を中央銀行がやっているのだ。
主要資本主義諸国政府がとった危機対策の第二は大企業や大金融機関救済のための財政資金の投入である。アメリカは０８年１０月の「緊急経済安定化法」により約３０００億ドルの資本注入を行っている（AIG、シティ・グループ、バンク・オブ・アメリカなど）、ドイツも約８００億ユーロ、イギリスも５００億ポンドの資本注入枠の確保をおこない、大金融機関に資本注入を実施している。大金融機関を公的資金で支えた結果は、国家権力が投機マネーの温存と強化を支援したこととなった。もともと先進資本主義国では、生産と消費の矛盾を緩和するために、恒常的に財政赤字の状態にある。ギリシャの財政赤字がたまたまソブリンリスクとして顕在化したが、主要資本主義諸国全体が財政危機の状態にあることにかわりはない。世界的危機対策として大金融機関などを救済するために、安易に財政出動したが、それがまた財政危機として跳ね返る悪循環に陥っている。
アメリカは財政収支赤字と経常収支赤字の双子の赤字を抱えており、基軸通貨ドルの基盤が揺らいでいることは常々いわれていることである。ユーロができて、第二の基軸通貨としての期待が高まっていたが、今度のヨーロッパの金融危機で当面のライバルだったユーロもこけてしまった。単一通貨ユーロを支えるヨーロッパの「統一国家」がないという構造的弱さがもろに出たのだ。
投機的資本蓄積で躓いた世界資本主義は、各国政府の緊急対策で一息ついたように見えたが、その緊急対策が再び投機マネーの復活を許し、財政危機からソブリンリスク問題を引き起こし、改めて基軸通貨制度そのものが問われる事態となった。投機マネーをどのように規制するのか、どのような基軸通貨制度を創出するのか、国民生活を犠牲にした財政再建策が本当に成功するのか、現状では、資本主義の矛盾がますます深まりつつある。しかし、これまで資本主義はその制限を何度も乗り越えてきた。危機克服には、相当の時間を要すると思われ、先行きは不透明だが、資本主義の歴史は必ず次の段階に前進するだろう。
０７年に始まった世界的経済・金融危機は、各国の異常ともいえる緊急対策によって、一時的に終息し、安定したように見えたが、現在、ドル安、ユーロ安、ソブリンリスク問題など新しい局面を迎えている。各国の危機対策が次の金融不安を生み出すという悪循環に陥っているのだ。これは、明らかに資本主義の行き詰まり、危機の深化である。危機克服には、相当の時間を要すると思われ、先行きは不透明だが、資本主義の歴史は必ず次の段階に前進するだろう。
国際的に見て資本主義の行き詰まりが二つの面で明確になってきた。一つはゼロ金利政策であり、二つは財政危機、ソブリンリスクである。サブプライムローン危機、リーマンショックに端を発した世界経済・金融危機からの脱出を目指して資本主義諸国が採用した危機対策の第一は徹底した金利の引き下げであり、金融の量的緩和であった（今宮謙二「世界的経済・金融危機の新局面」『前衛』2010・9 No.861）
０６年と０９年末の金利水準を見るとアメリカのフェデラル・ファンド金利は５・２５％から０もしくは０・２５％と実質的にはゼロに近い。ユーロ圏は５・２５％から１％、イギリスは５％から０・５％となっている。主要資本主義諸国がすべてゼロ台や１％というのは、歴史的にみて異常である。これだけ金利を下げても企業が設備投資を拡大せず、不況が長引いている。先進資本主義国の需給ギャップがいかに大きいかということだ。過剰資金は、実物経済に向かわず、またぞろ投機マネー発生の温床となっている。
主要資本主義諸国の中央銀行は、国債のみならずおおくの資産（社債、コマーシャル・ペイパーなど）の買い取りをおこなって金融の量的緩和に努めた。投機資本主義が引き起こした経済危機の後始末を中央銀行がやっているのだ。
主要資本主義諸国政府がとった危機対策の第二は大企業や大金融機関救済のための財政資金の投入である。アメリカは０８年１０月の「緊急経済安定化法」により約３０００億ドルの資本注入を行っている（AIG、シティ・グループ、バンク・オブ・アメリカなど）、ドイツも約８００億ユーロ、イギリスも５００億ポンドの資本注入枠の確保をおこない、大金融機関に資本注入を実施している。大金融機関を公的資金で支えた結果は、国家権力が投機マネーの温存と強化を支援したこととなった。もともと先進資本主義国では、生産と消費の矛盾を緩和するために、恒常的に財政赤字の状態にある。ギリシャの財政赤字がたまたまソブリンリスクとして顕在化したが、主要資本主義諸国全体が財政危機の状態にあることにかわりはない。世界的危機対策として大金融機関などを救済するために、安易に財政出動したが、それがまた財政危機として跳ね返る悪循環に陥っている。
アメリカは財政収支赤字と経常収支赤字の双子の赤字を抱えており、基軸通貨ドルの基盤が揺らいでいることは常々いわれていることである。ユーロができて、第二の基軸通貨としての期待が高まっていたが、今度のヨーロッパの金融危機で当面のライバルだったユーロもこけてしまった。単一通貨ユーロを支えるヨーロッパの「統一国家」がないという構造的弱さがもろに出たのだ。
投機的資本蓄積で躓いた世界資本主義は、各国政府の緊急対策で一息ついたように見えたが、その緊急対策が再び投機マネーの復活を許し、財政危機からソブリンリスク問題を引き起こし、改めて基軸通貨制度そのものが問われる事態となった。投機マネーをどのように規制するのか、どのような基軸通貨制度を創出するのか、国民生活を犠牲にした財政再建策が本当に成功するのか、現状では、資本主義の矛盾がますます深まりつつある。しかし、これまで資本主義はその制限を何度も乗り越えてきた。危機克服には、相当の時間を要すると思われ、先行きは不透明だが、資本主義の歴史は必ず次の段階に前進するだろう。
