プロメテウスの政治経済コラム

プロメテウスは人間存在について深く洞察し、最高神ゼウスに逆らってまで人間に生きる知恵と技能を授けました。

「ヴェニスの商人」

2005-11-09 21:53:39 | スポーツ
今日は、映画「ヴェニスの商人」を見てきました。シェークスピアの戯曲「ヴェニスの商人」は、ユダヤ人の高利貸しシャイロックが、借金の担保に、生きている人間の肉1ポンドを要求したあげく、聡明な女主人公にやり込められる話です。鮮やかな逆転裁判、結婚相手を決める箱選びや女性から男性に渡す指輪をめぐる男女の駆け引きの面白さなどを盛り込んだ喜劇です。しかしマイケル・ラドフォード監督の映画は、シャイロックを単なる悪役としてではなく、差別に苦悩するユダヤ人として描き、むしろ抑制された悲劇となっています。
マイケル・ラドフォード監督は、「赤旗」記者のインタビューに答えて、次のように語っています。「シャイロックをこっけいな悪役とするか、悲劇的なヒーローと見るかは、つねに議論されてきたところです。彼は、いまの時代に、多数者のなかで生きる少数者の人間的な側面を代表していると感じます。世界中のあらゆる少数派に共通することが描かれている。そこが面白いと思ったのです」(「赤旗」05.10.24)
映画は原作に沿い、美しいヴェニスの運河を舞台に、さまざまな人間の葛藤を包み込むように進みます。シェークスピア独特のせりふの面白さは字幕を通してでも十分に味わうことができました。クライマックスの裁判のシーンでは、シャイロック役のアル・パチーノの名演によって、ユダヤ教からキリスト教に改宗を迫られるシャイロックの屈辱と悲しみが胸に迫ってきました。
紀元135年の「マサダの悲劇」以来、エルサレムを追われたユダヤ人は世界各地に離散しました。中世のヴェニスでもユダヤ人迫害が続いていたようです。現代のパレスチナとイスラエル問題やアメリカのいわゆるネオコンに繋がるユダヤ人に思いを致し、しばし感慨に耽りました。



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