プロメテウスの政治経済コラム

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北沢防衛相の初沖縄訪問  新政権の外交政策の真価が問われる「反米三点セット」

2009-09-29 18:47:56 | 政治経済
政権交代後、閣僚として初めて沖縄を訪問した北沢俊美防衛相は26日、県内各地を足早に回った。米軍普天間飛行場(宜野湾市)の移設問題について「県民の声をしっかりうかがいたい」と語っていた北沢氏だが、会談を重ねた相手は首長ばかり。名護市への移設に反対するグループからは「官僚の手の内で動いているだけでは」との声も漏れた(「朝日」2009年9月27日15時44分)。
自身の考えをほとんど明かさない北沢防衛相の来県は、沖縄の人々の間ですこぶる評判が悪い。鳩山首相や岡田外相発言に比べ、何だというわけである。辺野古を訪れた北沢氏は米軍キャンプ・シュワブの視察と市長らとの会談だけをそそくさと済ますと04年から座り込みを続ける「ヘリ基地反対協議会」に顔をだすこともなかった。北沢氏は日程終了後の記者会見で「座り込みをしているという事実を知らなかった」と言い訳をしていた。沖縄の基地問題の重大さを役人レベルでしか理解しない北沢氏には、防衛相の資格がないと沖縄の人たちは思っている

 「琉球新報」2009年9月27日付は、北沢防衛相を次のように批判する。
官僚主導政治からの脱却を打ち出している鳩山内閣に早くも暗雲が立ち込めてきた。25日に就任後初めて沖縄入りし、仲井真弘多知事と会談した北沢俊美防衛相が「理想の中で現実を見失うのは得策でない」などと述べ、米軍普天間飛行場の県外移設に慎重な姿勢を示したからだ。北沢防衛相に同行した金沢博範官房長、高見沢将林防衛政策局長らは同飛行場の名護市辺野古への移設を推進してきた当事者だ。鳩山首相が県外移設を主張したからといって、おいそれと方向転換することには抵抗を感じるに違いない。自身が手掛けてきた仕事を全面的に否定することになるからだ。官僚サイドが、事情に疎い新米大臣に「県外移設は困難。日米で合意された県内移設が現実的」と吹き込み、従来方針を堅持したいとの気持ちは分からなくもない。問題は、防衛相が役所側の見解をどう受け止め、対処するかだ。役所の言い分をうのみにしたのでは自民党政権下で多く見受けられた「操り人形」のような大臣と何ら変わるところがない。そもそも、やすやすと役人の掌中に収まるような政治家なら、大臣としての資質に欠けると言われても仕方ないだろう。

 昨年12月、東京都内のホテルで鳩山代表と前原元代表、管代表代行、岡田前幹事長の民主党の4人の幹部が、米代表と非公式に会合した。米国側の出席者は、ジョセフ・ナイ元国防次官補、マイケル・グリーン前国家安全保障会議アジア上級部長ら4人だった(成澤宗男「新政権の外交政策が問われる沖縄基地問題」『週刊金曜日』2009・9・25)。
席上、冷戦後の対日軍事政策で最大の影響力を発揮したナイ元国防次官補は、①海上自衛隊のインド洋給油活動の即時停止②日米地位協定の見直し③沖縄海兵隊グアム移転と普天間基地移設を柱とする在日米軍再編の白紙撤回―は「反米三点セット」だと指摘したという。

 米軍基地強化に反対する人々、とりわけ沖縄の人びとは、「米軍再編見直し」「地位協定改定」を政権合意とする民主新政権の誕生で、基地闘争に新しい局面が生まれるのではないかという期待が大きい。北沢防衛相の来県が、沖縄の人々の間ですこぶる評判が悪いのは、期待の高さの反面でもあるのだろう
訪米中、鳩山首相は米軍普天間飛行場の県外・海外移設を目指す基本方針を堅持すると言明したし、岡田外相も名護市辺野古での代替施設建設計画を再検証する考えをあらためて示した。「反米三点セット」の③について、沖縄県民の声を聞くというのである。鳩山首相は、オバマ大統領との初会談では、「安全保障の踏み込んだ話はあえて遠慮すべきだ」として、「日米同盟を外交の基軸として重視している」「日米安保体制はアジア太平洋地域の平和・安定の礎」であると表明した。この言明は、これまでの自公政権と変わりないようにもみえる。

 民主党の日米外交政策は、もともと「同盟基軸」と「対等関係」という矛盾を持っている。新政権の真価がとわれるのは、これからである。陳腐な言い方になるが、国民が望む方向での前進がかちとれるかどうかは国民のたたかいにかかっているというほかない。

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