プロメテウスの政治経済コラム

プロメテウスは人間存在について深く洞察し、最高神ゼウスに逆らってまで人間に生きる知恵と技能を授けました。

「野球の母国」の深刻な野球離れ

2006-03-18 16:48:16 | スポーツ
3月16日、野球の国別対抗戦WBC(ワールド・ベースボール・クラシック)2次リーグ1組の最終戦で米国がメキシコに1-2で敗れ、失点率差で日本の準決勝進出が決まりました。米国代表30人のうち半分以上がオールスター経験者。屈辱的な敗戦にスター軍団は深い失望感に包まれました。両親の母国・ドミニカ共和国ではなく、出生地の米国代表を選んだA・ロドリゲスは「ショックだ」と短い言葉を漏らし、試合後もしばらくグラウンドをじっと見つめていました(スポーツニッポン2006年3月18日)。歴史的なWBC第一回大会から「野球の母国」が姿を消すにはそれなりの要因がありました。

米国大リーグ機構(MLB)は、海外への市場拡大や野球人気挽回を目指して今大会を他国に相談も無く、見切り発車的に推し進めました(単独覇権主義の国にふさわしい?!)。そして運営面でも米国本位を貫きました。準決勝で米国が強豪の中南米チームと当りたくないから同じ組の1位と2位が対戦することに変更されました(当初は異なるグループ同士のたすき掛け)。おかげで日本は韓国と3度も試合をすることになりました。米国の予選通過順位によってはテレビ放映の関係で試合時間を変更することも決めていました。試合前におこなわれる両チームの国歌のあとに、米国戦でもないのに米国国歌が流されました。米国が「世界における野球の先生」である、自分が「世界最強」であるという自負を押し付けてきました。

しかし、そのプライドは見事に砕かれたました。米大リーグは90年代以降、大きく変化しました。外国人選手の獲得が急増(背景に好選手の供給が球団拡張に追いつかない)。現在、米国50州以外の出身大リーガーは25%を占めます。マイナーリーグでは約半分が外国人選手といいます。
米国では野球離れも深刻です。スポーツ用品業界の数年前の調査では、サッカーをする子ども(6歳~17歳)が野球をする子どもより250万人上回ったということです。底辺が縮小すれば、米国出身の選手が育つ土壌もそれだけ先細りします。

WBC2次リーグの米国敗退から一夜明けた17日、米国のメディアは様々な表現でこの衝撃を伝えました(「読売新聞インターネット」下山田郁夫記者3月18日)。
「おわかりのように、米国は世界一のチームではなかったのだ」との書き出しで米国のふがいなさをなじったのはロサンゼルス・タイムズ紙。三回、メキシコの本塁打を二塁打と誤審したデビッドソン審判について、「二死からカントゥの中前打で二塁走者が帰ったことで、デビッドソンは(観客からの)絶え間ない罵倒から救われた」と皮肉りました。
インターネットのヤフーのホームページは、米国人記者の「新世界秩序」と題したコラムの中で、「世界の野球が、野球を作り出した国(米国)に追いつこうとしているのではない。追いついた。場合によっては、すでに追い越した」と危機感を表現。審判の不手際についても「日本戦で米国に誤審の“贈り物”をくれたデビッドソン審判が、(メキシコ戦では)明らかな本塁打を二塁打とコールする前回以上の失敗を犯した」と痛烈に批判しました。


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