パラドクスの小匣

南原四郎、こと潮田文のブログです。

悪夢の予感

2009-07-02 19:33:39 | Weblog
 枕元に置いておいた沖縄のもろみ酢の空き瓶に、かなり大きめのゴキブリが二匹入り込んでいた。

 もちろん、外に出ることはできない。

 瓶を横に倒してやると、さささっと出ようとするので、その瞬間、また瓶を縦にすると、ゴキブリはずさーっと底に滑り落ちる。

 ざまーみろと、大喜びで何回も繰り返して遊んだが、あんまりしげしげとゴキブリの動きを見すぎて、お腹とか、足の筋肉のつき具合なんかが目に焼き付いてしまい、目をつぶるとそれがありありと浮かんでしまう。

 このまま寝たらきっと夢に出てくると思うと恐ろしくなり、ただちに瓶の口からゴキジェットを一吹き吹きかけると、ゴキブリはたちまち足をばたばたさせて死んでしまった。

 死んだのはいいが、できるだけ早く、目に焼き付いてしまったゴキブリを取り払わねばならない。

 ……と思えば思うほど、あの逞しい、セクシーとすら言える脚の筋肉が……。

 やれやれである。

 ところで、東国原知事の顔はどちらかというと、筋肉質の昆虫顔である。

  恐ろしくて見ていられないという人もいるだろうが、記者に答える時の表情は、麻生首相に比べるとはるかに、というか段違いに迫力がある。

 これに対し、「東国原知事を入閣させるなんて、私,言いましたか?」

 なんて、腰の引けまくったナンセンスな責任逃れをする麻生。

 そりゃあ、一般的には知事の要求は評判が悪い。

 ビートたけしのお兄さんが、「オレが総裁になれば自民党は勝ちます」という東国原発言を、「思い上がりもはなはだしい」と批判していたが、東国原の真意は、「オレを総裁に選んだら、その時点で自民党は生まれ変わっている」はずだから、選挙にも勝つ可能性があるという意味だろう。

 私が大学時代、自動制御工学の専門家だった高橋という教授が大教室での講義で、「ニクロム線のような抵抗体に電流を通すと、その電流の大きさに比例して熱が発生する。これが電熱器だが、実際に測ってみると、比例しない。なぜだと思うか」と学生に聞いた。

 大教室での授業だったので、学生は500~600人はいたと思うが、しばらく誰も答えられなかった。

 そのうち、一人手を挙げ、「ニクロム線が熱せられると、ニクロム線の性質が変わるからじゃないでしょうか」と答えた。

 高橋先生は、「その通り! よくわかったな。それが工学的思考法なんだ」と言った。

 要するに、高校等の教科書的物理学では、媒体自身の性質が変わってしまうという、自然界では当たり前の現象は捨象してしまい、ただ公式だけを教える。

 そのように教わってきたのだから、簡単な「電熱器」の現象すら説明できないのだ。

 つまり、東国原知事の「オレが自民党の総裁になったら自民党は勝つ」というのは、決して、「オレに人気があるから、オレが加われば勝つ」という単純な論理なんかではなく、電熱器のニクロム線の発熱が、ニクロム線自体の性質が熱で変化するという「現実」を計算に入れなければならないのと同様に、「現実」を計算に入れた、かなり高度で複雑な「論理」が隠れているのだ。

 もちろん、その論理が高度で複雑だからといって、それが現実をあやまたず、正確に予言できるというわけではない。

 とはいえ、「現実に即した論理」を語っていることは事実で、ビートたけしのお兄さんは大学の工学部の教授なんだそうだから、それぐらいはわからないのはまずいんじゃないのかと、高橋先生だったら言うだろうなあと思った。