ディアンジェリコとの関係

2009-12-21 19:04:17 | Dano Column
それまでアンプメーカーであったダンエレクトロがシアーズ&ローバックからの要請でギターの製作を始めるにあたって、ネイサン・ダニエルは友人であるジョン・ディアンジェリコに助言を求めたという。
「Guitars from Neptune」によれば、ネイサン・ダニエルの求めに応じて、ディアンジェリコはフレットの間隔やブリッジの位置についてアドバイスをしたと記されている。通信販売のための廉価版のギターであっても、楽器として最低限の機能を果たすためには音程の問題は最も基本的なもので、ギターを弾けなかったネイサンが専門家の助言を求めたことは当然のことではある。

ジョン・ディアンジェリコといえば、ギター界最高といわれるほどのルシアーであった。それにしてもこのエピソードは、それだけを見れば、ある種のもったいなさを感じさせるものではあるのだが、職人技抜きで大量生産が可能な、安い材を使用したギターの開発というプロジェクトに対して、楽器としての基本的なところだけのアドバイスに留めたディアンジェリコは「わかっていた」ということなのだろう。

しかし、そうであったとしても、ダンエレクトロのギターにディアンジェリコならではのギター製作のノウハウのいくばくかが反映しているのではないかと期待したくもなるわけだ。しかし、「Guitars from Neptune」にそれ以上の記述はないし、インターネットで調べてみてもそれ以上の情報を得ることはできなかった。

ダンエレクトロが最初に開発したエレクトリック・ギターはシングル・カッタウェイのセミホロウ・ボディであり、ブリッジにローズウッドのサドルを載せたものであることから、アーチド・トップのアコースティック・ギターが参照されていたと見ることもできるが、アール・デコ調のデザインとしても高く評価されているディアンジェリコのギターとは比ぶべきもないことは言うまでもない。
とはいえ、アーチドトップ・ギターの最高峰と称されるギターを生み出した最高のギター職人ディアンジェリコと職人技を廃し、安い素材を用いて工場で大量生産されるギターを生んだネイサン・ダニエルが友人同士であったというのは、なんとも面白い関係ではあるまいか。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする