小説家、精神科医、空手家、浅野浩二のブログ

小説家、精神科医、空手家の浅野浩二が小説、医療、病気、文学論、日常の雑感について書きます。

カムイ伝

2010-06-03 05:48:29 | Weblog
私は白土三平のカムイ伝が好きである。それは、一人の人間の一生を、他の人のように、感傷的に描かないからである。私も、そういう考だが、氏は、それが、私とは比べものにならないほど、スケールが大きい。人生をつつがなく過ごし、子を産み、孫を産み、人々に見守られて、穏やかに、幸せに死んでいく。私はそんなのは、つまらない人生だと思っているが、白土三平のカムイ伝は、もっとスケールが大きい。命がけで、生きた人間が死んでも、死ねば、もう用なしであり、無視されるだけである。カムイ伝のラストでは、精一杯、命がけで生きた忍者が死んで海に流れているのを見ても、片手片足のサメ殺しの漁師が、忍者の死体を見て、「フン。どっかで見たツラじゃの」で、終わる。生きて必死に戦っている人間だけが、歴史を動かしている人間である、と白土三平はとらえている。これは凄い。そして、私も氏のスケールの大きな人間観が好きだから、死んだら、そのように雑に扱われたいのである。人間とは、生きて努力して何かをなしている時にのみ、価値がある、と思うからである。感傷的に人々に惜しまれ、泣かれ、墓に入れられて、安らかに眠る、なんて死に方は、私にとっては、おぞましく、鳥肌が立つ。
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