小説家、精神科医、空手家、浅野浩二のブログ

小説家、精神科医、空手家の浅野浩二が小説、医療、病気、文学論、日常の雑感について書きます。

夢十夜

2008-08-29 02:18:08 | Weblog
第一夜
 こんな夢を見た。
小学校二年の時の同級生の少女(十歳で死んでしまった)が、苦しんでいる。
彼女は変わった病気に苦しめられて、うめいている。
彼女は月一度、何かを産むのである。それは奇形児だった。産気が近づくにつれ彼女の苦しみは激しくなる。月一度なのだが、奇形児は次から次へと生まれ、彼女の苦しみは絶える事がない。
彼女のこの病気の原因は男を知らずに死ぬという彼女の運命にあった。
女は男と結ばれてはじめて正常な人間を産むことが出来る。
そんなことを暗示している夢だった。



第二夜
 先日、高校時代のダチの結婚式に行って来た。小高といって、太って、突っ張ってて、面白いやつだった。
えらいどしゃぶりの日で、披露宴は品川のえらい高級なホテルだった。嫁さんはえらいべっひんで、性格もえらいしっかりしたパーフェクトな女性だった。五年ぶりに会った同級生達にはえらい冷やかされた。
数日後こんな夢を見た。
一人の女性が片手で顔を覆ってシクシク泣いているのである。よく見るとそれは小高の嫁さんだった。となりには小高が胡坐をかいて座っている。小高は、「根性焼き」と言って、彼女の腕にタバコの火を押し付けている。何でも彼女が何かヘマをやったため、そのお仕置きらしい。オレはあわてて小高に駆け寄って言った。
「バカ。女に根性焼きやってどうすんだよ」
だが小高はニヤニヤ笑っているだけだった。
その時目を覚ました。
俺は誰よりも小高の性格を知っている。
あいつは太っているけど社交的でユーモラスな奴だ。彼女が惚れたのもきっとそのためだろう。
だがオレは小高との付き合いが長かったから、あいつの欠点も知っている。あいつはちょっとかったるいところがあるのだ。
彼女はおそらくそれは知らないだろう。
彼女は小高とうまくやっていけるだろうか。
だが高校卒業以来もう五年になる。小高の性格もひょっとするとかわったかも・・・。
ともかく正夢にならなければいいが。



第三夜
 こんな夢を見た。どうやら私はサスケらしい。あるお城の弱々しいお姫様をどこかに送りとどけるのが私の任務らしい。私は鎖帷子に身をかため、忍者の七つ道具を用意した。ヌンチャクも腹にはさんだ。「忍者はヌンチャクなんか使うのだろうか」
私たちは出発した。
目的地へ行くためには途中、八百万の魔物が住むという、魔の山、巻雲山、を越さねばならなかった。そ予想通り巻雲山では、さまざまな魔物たちが私たちに襲いかかってきた。魔物たちは藪の中から、いきなり飛んで出てきては、その鋭い、角、爪、嘴、で私たちに襲い掛かった。私は持っていた半月刀で魔物たちの攻撃に対抗した。魔物達の武器は刀ほどの硬さと鋭さを持っているらしく、彼らが攻撃してくる時、その武器は森の樹木の間から入ってくる微かな木漏れ日に反射して時折鋭い光を放った。私の半月と彼らの武器がぶつかり合い、何度も激しい火花を散らした。ようやくのこと私は何とか姫を守って巻雲山を抜け出ることが出来た。そしてつづら折の林の中をかなりの時間歩いた。林を抜け出ると、そこには小さな川が流れており、丸木を三本わたした橋がかかっていた。私は敵がひそんでいないか調べるために橋の袂に身をひそめた。
姫が橋を渡るのが見えた。両手で顔を覆っている。姫は裸だった。魔物達の手によって着物は引き裂かれてしまったのだ。姫の体は美しかった。端の先にはさらに大きな川があり、広い河原があった。その川べりでじゃぶじゃぶと着物を洗っている老婆が一人いた。姫は老婆に気づくと大声をあげて走り出した。老婆も姫に気づいて、振り返って立ち上がった。
二人が抱き合うのを至福の思いで見ながら私は帰りの途についた。



第四夜
こんな夢をみた。四人で大磯ロングビーチへ行ったのである。オレと級友の男の友達と同級のA子さんと夕子さんとである。オレは泳ぎに自信があったので夕子さんの前でオレの力泳を見せたくて仕方がなかった。
 チケット売り場の時計は四時三十分を示していた。ここは六時閉館だからあと一時間半しかない。夏ももう終わりに近づいていた時期だったのでプールの客はそれほど混んでいなかった。夕日を浴びて体を焼いたり、泳いだりしていた。
 脱衣場ではやけに時間がかかった。
 持って来た金はカツカツだったので、カバンはコインロッカーに入れずにビーチサイドに置いておくことにした。
 途中でシャワーを浴びねばならなかった。オレは困った。カバンの中には図書館から借りてきた羽仁もと子著作集がいっぱいあったからだ。やむを得ずカバンを持ったままシャワーを浴びた。羽仁もと子著作集がぬれなかったか心配だった。やっとの思いでビーチサイドに出た。三人はひと泳ぎした後らしくビーチパラソルの下で休んでいる。オレはこれでやっとオレの泳ぎを披露できる、特に夕子さんに見てもらいたいと思った。夕子さんは黒のワンピースの水着の胸元をわざと少し見えるような媚態を示しながら銀色のミラーのサングラスをかけて椅子に脚を交差させて座って笑っていた。オレはますます彼女にオレの力泳を見せたくなった。オレは荷物を彼らの近くに置いた。
(さあ、これでやっとオレの泳ぎを夕子さんに見せることが出来る)
と思い、意気揚々とプールへ向かった。
と、その時目が覚めた。
くやしい。オレの泳ぎを見せたかった。



第五夜
こんな夢をみた。
オレは島に来ていた。テレビドラマ「俺たちの勲章」のロケがそこで行われるので、その見物についていったのだ。ロケ隊一行が藪の中の道を行くとやがて道の真ん中に何かの動物をかたどった石碑があり、その両側にくぼんだ道がつづいていた。オレは空手の三角跳びをした。まず林の根もとを蹴り、続いてその石碑を蹴った。ロケは無事に行われた。今回だけは中村雅俊がいなかったのでオレがその役をやることになった。出演者は同ドラマの第三作「姉妹」と同じような気がした。姉役の女優も。
ロケは無事おわった。
帰りがけのフェリーの中でオレはそのことが気にかかっていたので、隣に座っていた妹役の女優に聞いてみた。
「今回の出演者は「第三話」の出演者が多いみたいですね」
妹役の女優は答えた。
「だってそうですわ。今回の出演者は「第三話」の出演者でやるのが監督の方針ですもの・・・。でも私は違います。第三話の妹役の女優さんに似てはいますが違う人間です」
オレは心にあった疑問がとけて嬉しかった。と同時にオレはもう一つのことに気がついた。というのは今回だけでなく、今後も最終話までオレが中村雅俊の役で、以前とまったく同じドラマを撮ることになっているらしいのだ。
オレの心には至上の喜びがわきあがってきた。
ああ。あの憧れの松田優作と共演で、あの憧れのドラマに出演できるのだ。
オレはまだそのドラマを見ぬうちから想像のうちで自分の刑事役を想像した。
すばらしいことだ。
役者って何て素晴らしいものなのだ。
松田優作とは駅のステーションビルの地下で別れた。別れぎわ彼は、例のグラサンの下でニヒルな笑いを浮かべ、
「まあ、お前も大変だろうが、しっかりやれや」
と言った。
彼と別れた後、オレはステーションビルの中を無我夢中で歩いた。
嬉しかったから頭の中が少々、混乱していたのだ。
ステーションビルを出ると、そこは、一面、雑草の生い茂った空地だった。
オレは空を見上げた。
夏の強い日差しがギラギラと雲一つない空の中からオレの顔に照りつけた。




第10夜
こんな夢を見た。私は何かの用である町の旅館に泊まっていた。用がおわって、家に帰る日が来た。早朝、私は旅館を出て、最寄の駅に向かった。いなかの駅であったが、そこから出る電車は大きな都会へ行けるのである。二車線のレールと平行しているいなか道を私は歩いていた。鉄線でむすばれた古い木の柵がレールへの進入を禁止していた。初夏かと思わせるほどのカラッと晴れた空の中で早春の太陽がサンサンと地上の生物に活力を与えている。その光と熱によって活気づけられた、澄んだ空気を私は意識して吸い込んだ。光と熱によって活気づけられた、澄んだ空気とは、生きようという活力を、そして、生きているという実感を私に与えた。私は一歩一歩踏みしめて歩いている自分の体の重みを地球の重さの反動として感じていた。そんな心地よい、そして、ちょっと苦しいスイミン薬からむりやり起こされてしまった私の意識が私の関心をあちらに移し、そしてこちらに移した。私は線路沿いに生えている名もない雑草へ目を移した。それは朝日をうけて、自分の存在をしっかり主張していた。あたかも雑草は、私に、
「私だって生きているのですよ」
と、語りかけていた。私は夜、宿をとる事ができる。しかし彼らは夜になっても天を屋根とし、冷たい夜風に吹かれながら、起きていなくてはならない。だが雑草も朝がくればうれしいはずである。夜がくれば、さびしいはずである。私の中にある子供じみた心が私の感性をくすぐった。道の右側は空き地で、その中にポツン、ポツンと建て売りの家があった。それもまた、日の光をうけて、今日の活動のために、大きな欠伸をしていた。道路はゆるく右へ曲がるカーブをしており、私はなかなか見えてこない目的の駅の方と、一戸建ての家とを見ながら歩いた。駅に近づけば商店街が見えてくるはずである。だが、一向にその気配はない。もしかするとここはゴーストタウンなのかもしれない。そんな不安がよぎった時、背後からピーという甲高い警笛が聞こえた。私は振り返った。電車が遠くに見える。そして、それはこちらへ向かっている。私はここが別世界でないという安心感でほっとした。気づくと前にはさびしい無人の駅が見えた。あの汽車に乗らなくては永久にここを出られないような不安が起こって私は小走りに走った。

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