夢かよふ

古典文学大好きな国語教師が、日々の悪戦苦闘ぶりと雑感を紹介しています。

ふがいない僕は空を見た その1

2013-02-21 23:18:45 | 映画


監督が『百万円と苦虫女』(2008)『俺たちに明日はないッス』(同)のタナダユキ、ダブル主演の一人が、以前『さんかく』(2010)で平凡な主婦が壊れていく怖さを、これ以上ないという感じで演じていた田畑智子だったので、かなり期待して観に行ったのだが…。

内容紹介 R18で非道徳的内容なので注意
男子高校生の斉藤卓己(永山絢斗)がとあるマンションの一室に入っていく。すでに用意されていたコスプレの服(「魔法少女リリカ」に出てくるムラマサの着る服、という設定)に着替え、寝室へ。中で待っていたのは、こちらもコスプレでリリカの服を着た、専業主婦の里美。里美は、卓己には自分のことを「あんず」と呼ばせている。予めシナリオを渡されていたとおりの情事(避妊していない)の後、里美は卓己にお小遣い(二万円!)を渡し、
「そろそろダンナが帰って来るから。」
と言って帰らせる。

卓己はある日、同級生の松永七菜から学校で告白される。好きだった相手から直接告白された卓己は、返事はちょっと待ってくれ、と気を持たせる返事をしてしまう。

後日、卓己は里美からいつものように部屋に誘われるが、関係を持つのは断り、
「もう来ないから。」
「やだ、だめだから。」
「こういうの、よくないって。ねえ、ダンナに悪いと思わないの?要はオレを金で買ってるわけでしょ?」
「私だけが悪いの?…呪ってやる!」
里美は、逃げるように帰っていく卓己の背中に叫ぶ。

その後、卓己は偶然、ドラッグストアのベビー用品売り場で品物を手に取る里美を見かけて、不安になり思わず声をかけてしまう。
「子ども、できたの?」
里美は一瞬驚いたあと、黙って首を振って立ち去る。

七菜とつきあい始めた卓己だが、深い関係になることには抵抗を感じたまま、ある日、元のように里美のマンションを訪ねてしまう。会えば、激しく求め合ってしまう二人。
「あんず、好き…。」
その日から、卓己の心は、里美でいっぱいになってしまう。

と、ここまで見てきただけなら、いい気なもんだ、という気しか起こらないのだが、映画はこのあたりから時系列を前後させて、二人がどのような背景を持ち、結ばれるに至ったかを、少しずつ語っていく。その中で、初めに卓己の視点から見たときには気づかなかった里美の言葉や表情や態度の一つ一つに、深い意味があったことがわかってくる。この、その時点では気づかない(がどこかひっかかる)けれども、後になって腑に落ちる表情や言動を、田畑智子が巧みに演じていたと思う。