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夢かよふ

古典文学大好きな国語教師が、日々の悪戦苦闘ぶりと雑感を紹介しています。

研究室ノート

2013-05-04 22:39:07 | 雑談
私の大学・大学院時代には、国文科の学生・院生が演習や自習で使用する演習室に「研究室ノート」というのが置いてあり、今のネット上での掲示板やコミュニティのような役割を果たしていた。だいたいは、学生・院生同士の連絡に使われており、
・○月○日から帰省します。連絡があったら、実家にTELしてね。(←当時はケータイがなかった。)
・近代文学ゼミ(→学生・院生主宰の自主勉強会)次回は○○の担当で『○○○』(新潮文庫)をやります。読んでおいてください。
・来週の○○先生の特講は休講だってよ。
といった事務的な記述が大半だったが、日常あった出来事の個人的な報告、
・就職内定が決まりました!
・○○の単位を落としてしまった…等
とりとめもない感想・意見、中には創作小説を発表される方もおられた。かなりバラエティ豊かな、というか、混沌に満ちた小宇宙がそこに展開されていて、その頃はみんな、研究室に行くと、まずそのノートを見るのを楽しみにしていた。

今の掲示板やブログのように、人の記事に対してレスやコメントがついているのがまた面白く、そういうインタラクティブ(双方向)の情報のやりとりが、アナログ媒体だけになおさら楽しかったのだろう。

ネットでのハンドルネームに相当するものもあり、本名で記事を書くのはなんだか野暮だしめんどうなので、たいていは自分の苗字の一部をとったり、あだ名を流用した半署名を使っていた。

これは掲示板の過去ログに当たるのだろうが、過去の研究室ノートは本棚に置いてあって、バックナンバー(ノートには古い順から番号がついていた)いつでも閲覧可能な状態になっており、時折それらを読み返して楽しむことも普通に行われていた。大学院生には院生用の研究室もあったため、そちらにも研究室ノートはあった。

…もう大学院を修了して久しくなるが、先年、ゼミの後輩に当たる院生(私の恩師の現在の教え子)に学会で初めて会ったとき、
「論文や研究室ノートでしか知らなかった人と、こうしてお話しするなんて…」
という風に言われ、研究室ノートがいまだに読まれ続けていることに驚いた。今思い返すと赤面モノのことばかり書いているので、読まないでくれ~(悲鳴)とは思うが、ノート自体はすでにみんなの共有財産になっているのだから、あきらめるほかない。



今日、車を運転しているときに、不意に研究室ノートのことを思い出し、大学時代を懐かしく回顧するままに、あの頃仲間とよく行った「El greco」(エル・グレコ)というカフェに行ってみた。すでに中年になっている私は、若者ばかりの店内で浮きまくっていたが、友人や先輩・後輩とこの店に来ておいしいものを食べたり、色々な話をして楽しんだことを思い出してしまった。
ここは大学周辺の喫茶店の中ではいちばんお洒落な店として認知されており、特に女子に人気が高かった記憶がある。今日も、お店を訪れている客の多くは女性だった。



あの頃よく食べていたチキンのクリームソース煮を頼んでみた。当時はチキン・ストロガノフというメニューだった気がするが、やはり美味しい。今でも一番人気のメニューらしく、白ごはんだけでなく、黒米入り玄米ごはんも選べるようになっているのは嬉しい。

芝コン

2013-05-01 22:19:55 | 雑談
毎年今の時期になると、思い出すことがある。

私は大学では文学部に入ったのだが、当時は文学部の研究室対抗ソフトボール大会というのがあった。
優勝するとビールひとケースがもらえるので、みんないっしょうけんめいがんばったものだ。

入学して研究室に慣れた頃、われわれ男子は先輩からお呼びがかかり、放課後はグラウンドでソフトボールの練習をして過ごすようになった。
当時は大学ものんびりしたもので、土曜日も講義はあったし、平日の授業も4限目までで、終わりが4時半くらいだったから、放課後はたっぷり時間があった。

われわれは授業が終わるのももどかしく、4限が済むとさっさとジャージに着替え、グラブやバットを持ってグラウンドに急ぐ。早く行かないと、他の研究室のやつらに場所をとられてしまうのだ。集まった者から練習を始め、人数が揃うと二つのチームに分かれて試合形式でゲームを行い、やがて日が沈んで真っ暗になり、打球の行方がわからなくなるまで、夢中になってボールを追いかけていた。

練習が終わると、みんなお腹ペコペコで、連れだって大学近くの食堂や喫茶店に夕メシを食べに行くのが楽しみだった。今は無き時間割、ロビン、窓ガラス(デカプリンが有名だった)、とも、三五十(みごと)、よしみ、…書いていて懐かしくなってくる。最初のうちは、先輩が無条件でおごってくれるので、練習に参加したようなものだったが、あっという間に妙な連帯感ができて、勉強するために大学に行くのか、ソフトボールの練習に行くのかわからないほどになってしまった。

研究室対抗ソフトボール大会は、確か、連休明けからひと月ほどかけて行われたように思う。当時は水曜日と土曜日は午後の授業がなかったので、週2日ずつ、ゆっくりとリーグ戦を進めていたのではないだろうか?

私の所属していた国文研究室は、比較的男子の数が多く、同様に男が多い日本史研究室・英文研究室などが有力なライバルだった記憶がある。中文研究室もライバルであると同時に友好関係があり、毎年秋には伝統の「国漢戦」という対抗試合を行い、その後に合同コンパで街に繰り出すというのを恒例行事としていた。

余談だが、この中文研究室はH教授(かなりお年を召しておられた)が必ず試合に参加され、バントで出塁、さらに盗塁と、ハツラツとプレーしておられた。

さて表題の話。
ソフトボール大会の最終戦が終わると、勝っても負けても「芝コン」をするのが楽しみだった。文字通り、芝生の上でコンパ、である。
優勝した時は、賞品のビールひとケースで、そうでなくてもみんなでお金を出し合ってビールとおつまみを買い、大学構内の芝生の上にゴザを敷いて(このようなときのために、研究室にはゴザとビニールシートが常備されていた)、紙コップにビールを注ぎ、みんなで乾杯。試合の時には応援してくれた女子たちにお礼を言ったり、みんなでワイワイ盛り上がり、歌をうたったりした。

以前、母校を訪れたとき、構内の芝生は周囲にロープを張ったり、「コンパ禁止」などと看板が出ているのを見てがっかりしてしまった。今では大学もすっかり様変わりし、研究室対抗ソフトボール大会などは行われていないのだろうな。一抹の寂しさとともに、われわれの過ごした古きよき時代のことを、懐かしく思い出す。

プロポーズ

2013-04-08 22:34:59 | 雑談
今日は一学期の始業式。
私が担任するクラスの生徒とは、三月中は春期補習で毎日顔を合わせていたし、春休みがあったとはいえ、会うのは十日ぶりでしかないが、なんだか懐かしい気分。
年度が改まるというのは、気持ちも改まることなのだなと思う。

体育館で始業式があった後、教室に戻ってロングホームルーム(以下、LHR)。大量の配布物や連絡事項、課題の回収、クラス名簿の正誤の確認、アンケート調査やらなにやらを三十分程度で済ませるのは、はっきり言って無理。色々な部署が、それぞれの都合で色々なものを出してくるので、担任の裁量で今日でなくてもできるものは後回しにしたり、重要度の低いものは勝手にはしょったりさせていただいた。

それよりも、学年初めの今日は、学級の方向づけをする大切な日なので、事務的なことに埋没せず、担任としてクラスの今後の目標を示し、全員で意識を共有することを一番に考えたいと思っていた。LHRの最後の十分をそのための時間にとっておき、学級通信を配布して生徒と読み合わせ、担任の思いを伝え、具体例を交えながら内容を敷衍する。今日は、「持続」ということを中心に話をした。

LHRの後は、大掃除。このクラスは、班に仕事を割り当てるだけで、最後まできちんと掃除してくれるのが嬉しい。掃除の後で、教室に集まっていた生徒たちを二つのグループに分け、
「じゃんけん大会でそれぞれ三人ずつ残った者は来なさい。」
生徒たちは、
「何が起こるんだ?」
とざわざわしつつ、じゃんけんで盛り上がり、残った計六人。
「大当たり~!じゃ、ゴミ捨てよろしく!」
「ええ~っ!!」
悲鳴はもっともで、この教室は学校の中でもっともゴミ収集所から遠いのだ。

そうこうするうち、明日が入学式のため、校外の清掃に派遣していた班も教室に帰ってきたので、終礼(終わりの会みたいなもの)をし、生徒にケータイ・スマホを返却して解散する。

さてようやく表題の話。
その後も教室に残っている生徒たちと雑談をしていたら、アイドルの話になった。そこで、先日卒業生がSKE48の握手会で推しメンにプロポーズしたという、このブログでも取り上げた話(3/22)をしたら、ある生徒が、
「自分の友達にも同じことした人がいる!」
ということを話してくれた。
なんでも、友達というのがその姉妹グループ(秋葉原方面)の、今は真ん中にいる子に、わざわざ上京して握手会で、
「結婚してください!」
とお願いしたところ、言下に、
「断る!」
と言われたのだそうな。
…変に気を持たせるよりは、こちらの方が潔くてよいのだろうか?黙って苦笑いでやり過ごす方が大人の対応なのだろうか?
見ず知らずの男にいきなりプロポーズされても、相手を傷つけずにいなし、しかも自分のアイドルとしての人気や体面に響かないようにしなければならない。
有名税とはいえ、ファンを選べるわけではないアイドルも大変だなあと思った。

マンガ本没収の後…

2013-03-19 23:52:01 | 雑談
今日は3学期の終業式。
午前中に全ての行事を終え、放課後に職員室で、各生徒の家庭に通知表を発送するための作業をしていたら、C組のM君が友人二人を連れて私のところにやって来た。
「先生!」
「何?」
「この間、取り上げられたマンガを返してもらいに来たんですけど…」
「ああ、あれか…」
返すつもりがないわけではないが、態度に反省している要素があまり感じられないので、
「『取り上げられた』、ってどういうこと? もともと、その前の日に教室の後ろにマンガを堂々と置いてあったから、『今度見つけたら没収だ』と言ってあったろ? で、次の日見たら、同じ場所に元のまま置いてあるから、没収になったわけだし。没収になったものが返ってくるわけないだろ。返すとしても、本人には卒業式の日にしか返したことはない。どうしても返してほしいなら、保護者に取りに来てもらいなさい。」
という内容のことを話すと、
「マンガが返ってこないと困るんです。実は、あのマンガはK君から借りていて…」
「ハア? 友達から借りた漫画を没収されるって、どれだけマヌケなんだよ! しかも、Kって隣のクラスだし。KのマンガがC組に放置されてるなんておかしいだろ。」
突っ込みどころ満載、というのはこういうのをいうのだろう。
それにしても、やっていることがいろいろと幼稚なので、たっぷりお灸を据えておいた。

説教をひとしきり終えて、
「まあ、オレも高校生の頃はマンガ好きだったしな。今でも好きだし、一生懸命読んでるけど、それ以上に仕事は一生懸命やってるよ。お前たちもマンガ読むのは全然かまわないけど、それ以上に一生懸命勉強してくれ。高校生の本分は勉強なんだから、学校では読むなよ。」
ということを諭しつつ、机の引き出しからマンガを出して返そうとして、それが「ハンター×ハンター」なのに気づいた。
「どうでもいいけど、高校生になったら、もう『ジャンプ』は卒業だろう?」
と言ったら、それがそうでもないらしい。

私達が高校生の頃は、『少年ジャンプ』とか『少年マガジン』は小学生が読むもので、せいぜいが中学生まで。高校生にもなって読んでいたら恥ずかしい、という感じだったように思うのだが。当時の高校生には、『ビッグコミックスピリッツ』が人気で、教室では、「めぞん一刻」「YAWARA!」「美味しんぼ」などがよく話題になっていた記憶がある。
私のイメージでは、
  小・中学生→ジャンプ、マガジンなど
  高校生  →ヤングジャンプ、ヤングマガジン、スピリッツ
  大学生・社会人 →モーニング、ビッグコミック、オリジナル
  おっさん →週刊漫画、ブラク、マンサン(廃刊)
といった棲み分けがなされているものと思っていたのだが、実態はかなり違うようだ。
そういえば、本校の教員でも毎週『ジャンプ』を買っている人もいたっけ。

たかがマンガとはいえ、現代日本人の生活と思考に強く影響を与えていることを思う。
 

可愛くないシンデレラ

2013-03-05 23:23:56 | 雑談
私が教員になりはじめの頃の話。

当時、私が教えに行っていたクラスにI君という生徒がおり、札付きのワルであった。
根はいいヤツであり、グレたのにも相応の理由があって、本人の身になってみれば、同情できる点も多々あった。
しかし、いかんせん自分に甘いので周囲に流されやすい。しかも家が金持ちで小遣い銭に不自由せず、友人に気前よくおごるので、自然にワルたちのリーダー的存在になってしまった。授業妨害や教員への暴言、校内での喫煙、ケンカなど問題行動が重なり、学年主任からは、今度問題を起こしたら、もう面倒は見きれないと言い渡されていた。

そんなある日、私は、自分のクラスの生徒が掃除をサボって帰ったことを知り、自転車置き場まで連れ戻しに行くと、なんとそこでI君とその友人がタバコを吸っている。つかまえようと近寄ったとたんに、I君が私に気づき、吸っていたタバコを投げ捨てて逃げ出した。I君はよほど慌てていたらしく、履いていた革靴の一方が脱げて、片足は靴下のまま、すごい勢いで逃走していった。私は、後を追うのは途中であきらめ、彼がその場に残していった片方の靴を手に、しばらく呆然として立ち尽くしていた…。

その後、彼は喫煙の件についてはシラを切り通していたが、ある女性教員に暴言を吐いて泣かせたり、教員の前でフル○ンになったり(これは、現場を見た私が、女性教員の分も含めて制裁の拳骨をくらわした)、かばいきれない状態になっていった。結局、彼は進級を待たずに別の高校に転校することになってしまった。

転校する前に、彼は職員室に顔を出し、「お世話になりました。」と挨拶に来た。
「あのとき、本当はタバコ吸ってたんじゃないのか?」
とある先生が尋ねると、
「吸ってた。」
と正直に認めた。今度問題が見つかると、退学になると思ったから、全速力で逃げたのだそうだ。それにしても、シンデレラじゃあるまいし、不良の男子高校生が片靴脱げたまま、必死こいて逃げる後ろ姿は、今思い出しても笑える。この話を、例の女の先生にしたら、「可愛くないシンデレラ…。」と言っていたのが印象的だった。

I君は、転校した先の高校ではちゃんとやっていたと聞いたが、その後どうなったのかは知らない。とうの昔に立派な社会人になっているはずだが…。