雲のむこうはいつも青空

まったりもったり~自閉症息子のいる暮らし@ちびくまママ

入院2日目(1)

2006年10月19日 | 入院生活
病院の朝は6時に始まります。
まず寝覚めのお茶、その後顔拭き用の蒸しタオルとうがいセットが
配られます。助手さんがごみを集めにきてくれて、お掃除の人が
ベッド周りをお掃除してくれたころ、看護師さんが検温に
現れます。今朝の体温は37.4度。
私は入院したばかりの上に急性期なので、体温の他に脈・血圧と
酸素飽和度も毎回計られますが、脈がやや速い他は異常なし。
朝一でトイレまで歩く許可を取ってもらい、ポータブルトイレとは
やっとおさらばです。

7時半すぎに朝食が配られ、その後日勤の看護師さんが出勤してくる
9時前後から病棟は始動します。

今日から私の受け持ちになる看護師・Nさんは10時前にやって来ました。
「遅くなってごめんね~、じゃ、今日は早速点滴からさせてもらうね」
免疫グロブリンのビン4本と点滴台が運ばれてきます。
昨日刺した針に繋がる管(留置カテーテル)に管が繋がれて、
点滴が始まりました。

さて、こうなると他にできることもなくなるので、ベッドに寝て
ぼーっとテレビを眺めていると、廊下の向こうがにわかに
騒がしくなりました。聞き耳を立ててみると、どうやら酸素吸入の
必要な重症の患者さんが入院してくることになり、その人の
ベッドを確保するため、軽症の人を何人かベッドごと別の部屋へ
引越しさせようとしているようです。

これまで空いていた私の向かいにも、高齢の女性が運ばれてきました。
彼女は「いやや、いやや、部屋を替わりたくない、ベッドの向きが
違うから、トイレに行かれへん、もらしてしまう」と半泣きなのですが
看護師さんたちは、「あのね、半身マヒの人やったらそらそうやけど、
Nさんはマヒがないんやから、どっちになっても関係ないんやで。
静かに寝とって治る病気と違うんやから、もっと動かなあかん。
どうしても助けが要ったら呼んでくれたらええから、ちょっと練習
してみて」と言い残して、重症の人の方に行ってしまいました。

残されたNさん、「動かなあかんことくらい
私かてわかってるわ。そんでも痛いから動かれへんねんやんか。
あんなぽんぽんぽんぽん言うて、誰も私のことわかってくれへん」
と泣き出してしまいました。
そのままずーーーっと泣きながら同じ台詞を言い続けているので、
(うちの自閉症児もたいがい同じ台詞を繰り返すけど、ここまで
ひどくない)さすがの私も参ってきて、看護師さんを呼んで、
私がベッドを代わってあげる、と言おうかと思い始めた頃、
ついに看護師さんも根負けしたらしく、彼女のベッドを少しずらして
今までと同じ方向からトイレに立てるようにしてあげました。

すると、ころっと機嫌の直ったNさん、大きな声で
「みなさん、私N○○子いいます。あんばいよろしゅうに」と
挨拶したので、私を含めて同室の3人ともぶっと噴きだしてしまいました。
「こちらこそ、よろしくね。Nさん、トイレのこと配慮して
 もらえてよかったねえ。」一番入院の長いMさんが返事をします。
「へえ、おかげさんで」
「なあ、Nさん、あんた幸せやなあ。看護婦さんはあんな忙しいのに
 あんたの体のことを心配して、逆のほうからもトイレに行けるように、って
 考えてくれはったんやなあ。あんた、みんなから大事に思われてんねんわ。
 今は痛いからしょうないと思うけど、もうちょっとようなったら、
 反対のほうも使う練習したらええなあ」
「へえ、そうでんなあ。ほんまやなあ。大事にしてもうてんねんなあ」

Mさんの説得があんまりうまいので、私は起き上がって
隣のベッドの人と顔を見合わせ、笑いあいました。
それをきっかけに、私は同室の3人のおばさまたちと
少しずつおしゃべりを始め、仲良しになっていったのでした。