雲のむこうはいつも青空

まったりもったり~自閉症息子のいる暮らし@ちびくまママ

10年

2008年12月18日 | 驕らず焦らず諦めず
息子が自閉症の診断を受けてから、今年でちょうど10年になりました。

もう2度と、息子のことで笑うことはない、
もう2度と息子がいてくれて幸せだと思うことはない、と
人間はこれほど涙を流せるものかと思うほど
涙にくれたあの12月の日々が

いつの間にか遠い日のほろ苦い記憶になり、
今、私は毎日ゲラゲラ笑いながら暮らしています。

一瞬も目を離すことができなくて
39℃近い熱があっても医者にも行けず、市販の解熱剤を飲みながら
ソファーの上で毛布にくるまって
リビングで跳び回る息子を明け方まで一睡もできず見守り続けた夜。

今、私は息子が遊んでいる横で
ぐーぐー昼寝をしています。

家を出るときには必ず息子の手首を握り締めたり、
手を振り払って逃げられないように、フードつきの服を着せて
そのフードの端を握り締めていた私。

今、息子は私がちゃんと付いてきているかどうかを
確認しながら私の前を歩き、
「ちびくまくんは、場所を移動するときには必ず
 『今度はあっちへ行くよ』と声をかけてくれるので
 安心なんですよ」
とガイドヘルパーさんに評される子になりました。

一日中、数字とアルファベットと車の名前と宇宙語以外は
発しなかった子が

いつの間にかそこそこ面白い話し相手になりました。

クレヨンもはさみもコップも持てなかった子が
わずか10分椅子に座っていることができなかった子が

今では鉛筆を握って漢字ドリルや計算ドリルに取り組み
中学の50分授業に自ら進んで参加できるようになりました。

そして今
私はにっこり笑って
「うちの息子は自閉症なんですよ」と言うことができます。
自閉症で、知的障碍もあり、できないことや苦手なこともいっぱいある、
でも私の宝物で、おもしろくて、自慢の息子。

10年。それはなんと長く、なんと大きく、
時代と私と息子とを変えたことでしょう。
10年前に、誰が今の息子と私の姿を想像したことでしょう。

今、私がしみじみ思うのは
「あのとき、早まらなくて良かった」ということです。

アンジェラ・アキさんの「手紙」では
未来の自分にあてて手紙を書いていますが

もしも10年前の自分にあてて手紙が書けるなら
「あなたの悲しみも痛みも、苦労も努力も
 すべてちゃんと実を結んでいるよ、
 だからどうか勇気を持って生きていてね」
と書きたいです。

疑似体験

2008年12月04日 | 「発達障碍」を見つめる眼
今日は、私の所属している親の会で、初めて
「自閉症の人たちの世界の疑似体験講座」を開きました。

神奈川県座間市に始まった「みんな違ってみんないいキャラバン隊」の
活躍を何年か前に新聞で読んで感動し、
全国あちこちでのご当地キャラバン隊の活動をネットで目にし
耳にする中で

うちの会でもやってみたいなあ、と思っていたのですが、
毎年1回開催する講演会のときに、今回は他所から講師を招くのではなくて
自分たちが講師になって、来てくださる皆さんに自閉症への理解を
求めていこうということになったのです。

ものの感じ方の違いを紹介する感覚班と
コミュニケーションの難しさを紹介するコミュニケーション班に分かれ、

自分たちのこれまでの子育てや日常生活の工夫を交えて
自閉症の人たちの出会いがちな困難や
支援のための工夫や対処法など
会員全員が知恵を出し合って、自分たちのナマの体験を
自分たちの言葉で伝えられるように話し合いと練習を重ねていきました。

この間、交流担のH先生に「発達障碍の理解のための
疑似体験の案を」と求められて、すぐにネタが提供できたのは
実はこういう素地もあったからです。

今日会場に集まってくださったのは、支援者・保護者を中心に
35人ほどの方々でしたが、
「自閉症児を育ててきた人間だからわかることを」伝えようとした
私たちの気持ちはしっかり受け止めてもらえたようで、

会員と会場が1つになって手作りっぽい、
和やかな講演会になりました。

アンケートの回収率もものすごく良くて、関心の高さを感じましたし、
初めての試みであるにかかわらず、評判もすごぶる良く、
会員たちもすっかり気をよくしてしまいました。

講師を迎える講演会に比べると準備はずっと大変ですが、
うまく行った時の達成感もその分抜群です。
ぜひ、皆様にもお勧めいたします。

ガンダラムジムジ

2008年12月02日 | 楽しい学校生活
夕食の用意をしていたところへ、交流担のH先生から
電話がかかってきました。

「実は12月は障害者月間ということもあり、道徳の時間に
 障害理解の授業をするんです。うちの学年は
 アイマスク体験をすることになっているんですが
 
 うちのクラスはせっかくちびくまくんがいるんだから
 発達障碍の体験もできたらいいんじゃないかと思いまして。
 (障担)K先生に相談したら、ちびくまくんのお母さんなら
 いいやり方をご存知だと思いますよ、と教えてもらいました。

 お忙しい時間に申し訳ないんですが、今からお宅に伺って
 相談にのっていただくわけにはいかないでしょうか?」

今まで8年間学校生活をしていて、交流担の先生から
こんな申し出をしてもらったのは初めてです。
もう、家の中が人様にはお見せできないような惨状になっている
ことなんかこの際忘れることにして

2つ返事で家まで来ていただきました。
50分授業なので、あまり多くのネタはもりこめません。
それで、うちの息子が一番困っている(であろう)
聴覚過敏と言語理解力の低さの疑似体験をお教えすることにしました。

聴覚過敏はテープレコーダーで。元々全校の机・椅子の脚に
消音のためのテニスボールをはめてあるような学校ですし、
先生からはクラスメートに
「ちびくまくんが耳をふさいでいるのは、人の言うことを聞きたく
 ないからではなくて、うるさいところがとても苦手だから」
という説明は日ごろからしてもらっているそうなので
これはすんなり入るでしょう。

そして、言語理解力の低さは、かの有名なガンダラムジムジ。
(ご存知ないかたはぜひ「ガンダラムジムジ」で検索してみてください)
これだとゲームみたいで中学生でも楽しめるし、
その中にきっちり困り感の気付きが期待できるので
ぴったりだと思ったからです。

H先生は「ああ、それ、いいですね~。早速やってみます」と
帰っていかれました。

こんな協力なら、いくらでもさせていただきますとも。
障碍のある人の気持ちを理解するための授業として
車椅子体験とか、アイマスク体験とかはわりとどこでも
やっているみたいですが

こんな風な発達障碍の理解のための疑似体験も
いろんなところで取り入れていただけるといいのにな~、と
思っています。