雲のむこうはいつも青空

まったりもったり~自閉症息子のいる暮らし@ちびくまママ

最上級生としての意識

2009年03月11日 | 楽しい学校生活
今日は息子の通う中学の卒業式でした。
とうとう中学生活もあと残り1年になっちゃったんだなあ、と
思うと、まだ卒業するわけでもないのになんとなくうるうる…。

息子たち在校生は「旅立ちの歌」を歌う、ということで
最近練習が続いていたようですが
なんだかすっかり行事なれした息子、
家でも学校でも特に変わった様子はありませんでした。

きっと来年の卒業式本番も、もう心配することなく
参加できるのだろうと思うと、
小学校の入学式の日のあのドキドキハラハラが
なんだか懐かしくも感じられるから不思議です。

息子が朝言って出た時間になっても帰ってこないので
またどこかで寄り道しているのかなあ、と思って
玄関先へ出て下を見てみると

障級の1年生Nくんが、マンションのスロープを
懸命に駆け上がっていくのが見えました。
あんなに急いで、どうしたんだろうと思って見ると、
スロープを上り切ったところに息子が待っていて、
Nくんの方に腕を差し伸べているのです。

やっと追いついたNくんがその腕にしがみつくようにして
2人はエントランスの中へ入っていきました。
(Nくんはそこからマンションの中を通り抜けて
 家に帰るのです)

息子はこういう時に優しい言葉をかけるタイプではないし
Nくんも大変人懐こい子ですが言葉はありません。
その2人の言葉を介さないやりとりが、遠目に見ただけでも
なんだかすごく温かないい雰囲気で、ほっこりしてしまいました。

障担K先生に聞くと、こんな感じで息子がNくんに
手を差し伸べていることは最近よくあるのだそうです。
ただ、それはいつも「大人が見ていないところで」。
だから、K先生も目の前で見たことは一度もないのだけれど
本人たちが気付かないところで目撃している先生たちはいて
「2人がこんなことしてたで」と報告はいくつも
耳に入っているとのことでした。

中学入学直後、「中学生になったのだから頑張らないといけない」と
自分を追い込みすぎて不登校寸前になってしまった経験から
息子本人に「○年生になるのだから」という言い方は
K先生は避けてくださっていますが

3年生の部活引退、生徒会の引継ぎ、卒業式の練習などで
学年全体に対して「これからは君たちがこの中学を引っ張って
行かなければならない」という趣旨の話がされることは
しょっちゅうあるようですから

そんな中で息子にも「先輩として下級生の面倒を見る」という
意識が出てきているのかもしれません。
4月からはさらに2人の仲間が増える障級で
息子が最上級生としてどんな生活を送っていくのか
ちょっぴり楽しみでもあります。


巣立ち

2009年03月07日 | 驕らず焦らず諦めず
今日は、息子が地元の教育大学の臨床心理センターで
最後の訓練を受ける日でした。

初めてここを訪れたのは、アメリカから帰国して
半年経った、2000年の秋。

英語しか理解できないことから受け入れを拒まれたり
アメリカの系統だった指導支援に比べてあまりに
彼の特性に沿わない旧来式の障碍児教育を受けるなかで
混乱し、自信をなくして笑顔が消え、
パニックが増え、どんどん退行していく息子に
どこか救いが得られないかと児童相談所に相談して
心理員さんからF教授に紹介してもらったのが
そもそものきっかけでした。

小学校に入学して先生に恵まれ、息子が元通りすっかり明るくなり
どんどん成長し始めてからもその時その時課題となる
ピンポイントのスキルに焦点を合わせながら
毎年大学院の臨床心理コースの院生さんに引き継がれた指導は
この春まで8年半にわたって週1で続いてきました。

最初は部屋に入ること、椅子に座ること、与えられた
課題に取り組むことという目標から始まって

はさみ、お箸、衣類の着脱、ボール投げ、ラジオ体操、
オルガン演奏、トランプ遊び、だるまさんがころんだ、
ベルトを締めたりはずしたり、靴紐結び・・・
すべてここで教えてもらいました。

今春、担当のF教授が定年退官されるにあたり
Fゼミの院生さんたちによるこの指導も終了することになり
今日がその最終日となったのです。

いつもどおりの内容に加えて、今日はプチ終了式を
用意していただきました。
F教授自ら終了証を手渡してもらった息子は
小学校の卒業式で学んだやりかたで
押し頂いて受け取り、「9年間、ありがとうございました」と
自分で考えて挨拶しました。

この日が息子の最後の訓練セッションだというので
過去に担当してくださった先生たちが何人か来てくださっていました。

どなたも現在は学校現場や発達障碍児者支援の現場で活躍しておられる
方々でしたが、息子の成長ぶりに目を細めておられました。
通い始めたころとはまるで別人だと、幼児期の息子を知る先生は
支援指導の可能性に改めて光を見た、と言ってくださいました。

就学前の辛い時期も、順調な時期も、いつでも息子のことを
一緒に考えてくれる人たちがいたこと、
私が「母親であること」だけに専念できるよう
「訓練」の部分をしっかり科学的に支えてくれる人たちがいたこと、

改めて私と息子はとても恵まれた環境にあったのだと思います。

最後にみんなで記念写真を撮ったあと、息子が教授に
「しゃしんをとってもらって、とてもうれしかったです。
 9年間、ありがとうございました。
 これからもがんばります」
と挨拶したのを聞いて、教授が
「おかあさん、この子、本当にいいねえ。
 いい子に育ててこられましたね」
と言ってくださいました。

私はいつも、息子にとって安心できる存在であることと
息子が安心して暮らせる環境を整えることしかしてこなかったけれど
これはなによりも嬉しい褒め言葉でした。

これまで長い間当然のようにそばにあった大きな支えを
これからは頼らずにやっていかねばならないけれど

ここでもらった息子自身の自信、私自身の自信、
そして私と息子の間の信頼関係が
これからの息子と私を導く大きな力に
きっとなってくれると思っています。

K先生のやわらか頭

2009年03月03日 | 楽しい学校生活
息子は、自分の体の使い方がよくわかっていません。
ニキ・リンコさんの「自閉っ子、こういう風にできてます!」
「続・自閉っ子、こういう風にできてます!」(共に花風社)などを
よむと、「あ~、これこれ!」と膝を打ちたくなるのですが

感覚の入力・出力が生まれつき偏っている分を
体の変なところに変な力を入れておぎなっていたり
意識的に力を入れることができなかったりするようです。

息子の場合、最も目立つのが背中から腰にかけての
感覚の鈍さと口周りの緊張のなさ。
「あんたは鯉か!」と突っ込みたくなるほど
いつもぽかーんと口を開けた顔がデフォルトです。

話言葉の発音は明瞭なのですが、呼吸のコントロールが
どうもうまくいかないようです。

それで、口周りの筋肉強化と息のコントロールのための
教材兼おもちゃとして障担K先生が教室に置いてくれたのが
大量の風船。

息子も1年生のNくんも大喜びで遊ぼうとするのですが
いかんせん、2人とも風船を膨らませることができません。
それで、息のコントロールとは別に、子どもたちがあまり
フラストレーションを溜めずにすむように

K先生は子どもたちが自分で風船を膨らませることができる
ようにポンプも用意してくれました。
ところが、浮き輪用のポンプでは、途中で空気が抜けてしまいます。
で、先生が考えて「いいのがありました!」と買ってきてくれたのは
なんと灯油用のポンプ。

あの形から風船を膨らませることは発想しにくいのですが、
確かに空気が逆流しない構造になっているので
蛇腹ホースの先に風船をはめて、しゅぽしゅぽやるだけで
ちゃんと風船が膨らむのです。
おまけに、このポンプは握力も超弱い息子とNくんの
握力を鍛えるための道具にもなるのでした。

いつも「私が一目ぼれしただけのことはある」と
感心させてくれるK先生ですが
この発想には脱帽でした。
既成概念にとらわれないで、「この子に今役立つもの」を
求めようとする人だからこその思い付きかもしれません。

同じような弱点をお持ちのお子さんに、ぜひお試しください。


おひさしぶりです。

2009年03月02日 | ちいさな幸せ
「1月は行く、2月は逃げる」との言葉どおり
物書きの神様が私の許からお留守になっている間に
気が付いたらあっという間に3月になっていました。

息子は変わらず、日々穏やかに淡々と生活しています。

1月には学校から2泊3日でスキー実習に行ってきました。
自分で先生に「夜は1人部屋で寝たい。お風呂も1人で、
スキーも1人で習いたい。ご飯はみんなと一緒に」と
自分の要望を伝え、それを全てかなえてもらって頑張ってきました。
2日目の夜のレクリエーションでは「台本があればしゃべれる」
特性を生かして、一部司会もさせてもらいました。

一番辛かったのは「往復のバスのなか」というくらい
バスの中が盛り上がり、他所のお母さんの話では
レクリエーション大会も「笑い死ぬ」くらい盛り上がったそうです。

スキーは丸1日インストラクターとマンツーマンで教わって
20メートルくらい滑れるようになったのだけれど
途中何度も尻餅をついたので
「怖いのでスキーはやりたくないです」と先生に訴え、
2日目3日目はソリを借りてもらってソリ遊びに興じ、
先生たちに付き添ってもらってリフトにも乗って
息子なりに楽しんできたようです。

3学期が始まってから、「スキー実習を成功させよう!」
運動一色でぐわわわわと盛り上がっていた学年の雰囲気のせいか
終了後はどこか頭のなかのネジが2,3本抜けたかのように
ほえ~っとした雰囲気が続いていましたが

2月のあいだちょっと浮上したりまたぼんやりモードに
戻ったりしながらすごしているな、と思っていたら

なんだかまた最近は少しシャープになってきました。
2年生も残すところ3週間になってしまいましたが
このまま毎日楽しそうな彼でいてほしいものです。