雲のむこうはいつも青空

まったりもったり~自閉症息子のいる暮らし@ちびくまママ

涙の年越しそば

2010年12月31日 | 驕らず焦らず諦めず
とうとう2010年も終わり。
愛用のPCが壊れたり、父が亡くなったり、他にもあれこれと
なんだかここ数年で一番波乱万丈の1年だったような気がします。

父の喪中なので、今年は年賀状の用意をすることはありませんが
それ以外はごく普通の年末でした。
大晦日、近所のスーパーの閉店間際の値下げを狙って買い物をし、
帰ってから年越しそばを家族で食べるのもいつものこと。

8時すぎに大きな海老天入りのおそばを作ると、息子が
「年越しそばだ~。お母さん、これ、12月31日の特別の
 食べ物なんだよね~」
「うん、そうだよ。おそばみたいに、長~い間頑張れますように、
 っていうお願いの食べ物だね」
と答えて、いつもどおり食べ始め…

と、3口ほど食べた息子が、急に隣りの部屋へ駆けこんでいきます。
様子を見に行くと、体を丸くして、泣いてる…?
「どうしたの?熱すぎた?」
「ううん」
「なにか嫌なことあったの?」
「なんでもない」
「泣いてるんだから、なんでもないことないね。
 どうして泣きたくなっちゃったのかな」
「なんでもないよ」

ゆるりゆるりの問答の末、やっと引き出せた答えは
「おそばは苦手」
はあああああああ~~~~っ?

キミ、これまでずーーっと、大晦日にはご機嫌で
年越しそばを食べてきたじゃない?
夏にはざるそばだって「おいしい」って食べたじゃない?

でも、何度訊いても「おそばは苦手。おいしくない」との答え。
うーむ。今日の味もこれまでと全く変わらない味付けだし…
これまで気づかなかったおそばの味に、今日突然気がついた、と
いうことなのでしょうか?
それとも成長とともに味覚が変わってきた?

結局、ぽろぽろと涙を流して「おそばは苦手」と言う息子に、
「じゃあ、来年からは『年越しうどん』にするね」と言って
やっと立ち直っていただきました。

一緒に暮らして16年、彼の好き嫌いはもうきっちり
把握していると思っていたのですが、まだこんなびっくりが
出てくるとは…

なにはともあれ、来年からは我が家から「年越しそば」が
姿を消すことだけは決まったようです。

「星の国から孫ふたり」

2010年12月12日 | 母もいろいろ忙しい
縁あって、映画「星の国から孫ふたり」上映会と同映画の
槙坪夛津子監督の講演会の実行委員会に加わることになりました。

この話が決まってから、慌てて門野晴子さんの原作を
読んだのですが、これが面白い!
カリフォルニア州バークレーでアメリカ人の夫と共に
学生相手の下宿屋を営む娘さんのところに生まれた孫が
2人とも自閉症。

門野さんの著作を知らず、「孫ふたり」のタイトルを見ただけで
「かわいそうな障碍児の孫を一生懸命理解しようとする
 やさしい努力家のおばあさんのお涙ものがたり」だと
思い込んで、今まで手にしなかったことを後悔するほど、

ぴりっと辛口で、愉快痛快。
孫たちの「怪獣ぶり」を余すところなく描ききり、それを
「面白いやつらだなあ~」とある種第三者的に
距離をもって、観察するなんて、「自閉症」を身近に感じる
機会も少なく、旧時代の偏見をどっぷり染み込まされて
生きてこられたはずの、この世代の人にもできるんだ~、
なんて、

門野さんが聞いたら怒られるような、変な感心の仕方を
してしまいました。
それに、アメリカンとジャパニーズのミックスである
エリックくんの発語が出てくると、その独特な英日語の
ちゃんぽんぶりが、わが息子の昔の状態とうり二つ。

日々の生活の大変さと、将来が見えない不安とで、
詳細に記録を残していなかったことを後悔している今となっては
私の記憶に残っているだけの、その愉快なちゃんぽんぶりが
息子の状態像とぴったり重なって、かな~り面白く読めました。

さて、この原作が、どんな映画になるのかしら、と
楽しみにしていたのですが、舞台は日本になっているし、
おばあさんは原作よりもすこーし舌鋒が鈍って(やわらかく)
いるもののの、

自閉症を克服しようとか、障碍に負けないで努力する、という
形でなく、お涙ちょうだいもなく、
「自閉症とともに生きる」人たちの姿を、からっとした
空気感で描いた、秀作にできあがっていました。

自閉症啓発という目的もあってか、説明的な台詞も多く、
エンターテインメントとはさすがに言えませんが、
学校や公的機関などで、自閉症を含む発達障碍への理解を
深めてもらうには、とっても良い作品だと思います。

自らが関節リュウマチほか、数多くの難病に冒され、
電動車いすの上からメガホンを取られた、という槙坪監督とは

難病つながり、アメリカでの自閉症療育つながりで
会場準備中や休憩中もすっかりお話がはずんでしまい、
個人的にもとっても楽しい経験をさせていただきました。

今回、実行委員会を立ち上げたのは、高等特別支援学校の
コーディネーター、M先生(なんか、私の周りにはM先生が
多いなあ)だったのですが、実行委員会に加わらないかと
声をかけていただいたことに感謝しています。
準備活動を通して、いろいろな立場で動いている心ある人たちと
お知り合いになれたのも、今後の財産になりそうです。

この映画、学校での上映会などにも貸し出しが可能だそうです。
お近くで上映会のある人は是非。⇒公式ブログ

映画『星の国から孫ふたり~「自閉症」児の贈りもの~』予告篇


当日の様子はこちら


誕生会

2010年12月08日 | ちいさな幸せ
息子の通う特別支援学校高等部では、月に一度、
その月生まれの生徒を祝う誕生会が開かれます。

そこではバースデイボーイズ&ガールズが
「一芸披露」をする決まりです。
これまでにも、少林寺拳法、ピッチング、PCキーボードの
早打ち、手作り紙芝居の披露、ウルトラマン知識の披露、
キーボード演奏、それはそれはいろいろあったのですが

12月生まれの息子、担任の先生と相談して決めてきたのは
歌と「アナウンスの真似」。

バス車内のアナウンスをそっくりそのまま再現するのは
息子の楽しみでもありと特技でもあり、これは
納得いったのですが、

自分から「歌を歌う」と言ったのは正直びっくりでした。
息子は耳がよく、宇宙語しかしゃべっていない頃から
カセットテープに合わせてとてもきれいに
童謡を歌っていましたので、音程やリズムが
正確であることはわかっています。

でも、本人にとって「人前で歌う」のはとても抵抗がある
ことのようで、他人が見ていないところでは歌っていても、
人が見ているとわかるとぴたっとやめてしまうことが
よくありました。

小学校時代の音楽会や、中学校の合唱コンクールでも
きちんと歌ってはいましたが、1人で歌わせると
蚊の泣くような小さな声になってしまいます。

あれほど息子の心をいつも汲み取り、支えてくれた
中学時代の担任K先生でさえ、彼が「普通の大きさの声」で
人前で歌うのを初めて聴いたのが3年生のときで

「こんなに歌がうまいとは知らなかった」と
べた褒めしていただいたものです。

その息子が、高等部の3学年の生徒と先生が揃った
その前で、1人で歌を披露するというのです。
それも、2曲。
1曲目は「高原列車は行く」。言わずと知れた
昭和の名曲ではありますが、どうしてこんな昔の曲を
知っているのかというと、You Tubeにこの曲と
機関車トーマスの映像を組み合わせたビデオが
投稿されていて、すっかりお気に入りになったようです。

2曲めはお気に入りの英語の曲のCDから「おお、スザンナ」を
もちろん英語で。

はてさてどうなるのか、と気をもんでいましたが、
結果から言うと、ハンドマイクの助けもあり、とても
上手にこなせたようです。

中学校時代は英会話の授業には参加していましたから、
息子が英語ならそこそこしゃべれることを知っている
仲間はたくさんいましたが、

今の高等部には息子が英語を理解できることすら
知らない人がほとんどですから、

日頃、細い小さな声で、日本語すらたどたどしく
話す息子が、まさかこんな風に歌えるとは思われて
いなかったらしく、

普段の息子を知っている人、特に音楽の先生には
とてもびっくりされたようです。

みんなからずいぶん褒めてもらったのでしょう、息子は
「おかあさん、ぼく、歌も英語もとっても上手なんだよ」
とご機嫌でした。

ちょっとずつ殻を破って、私の知らない力を
つけていく息子。
頼もしいやら、ちょっと寂しいやら。
障碍があっても、やっぱり高校生男子なんですね。

プレゼント

2010年12月02日 | ちいさな幸せ
いつも穏やかな笑顔で帰宅することの多い息子ですが、
今日はなんだかとろけそうな満面の笑みで
帰ってきました。

「うれしそうだねえ。なんかいいことあったの?」と
訊くと、
「ほら、これ、もらったの」
とカバンのなかからごそごそと取り出したのは
一枚の絵。

「Rくんからプレゼントだって」
12月生まれの息子のために、Rくんが授業で
息子の似顔絵を描いて、担任の先生と一緒に
教室まで届けてくれたのだそうです。

毎日嬉しそうに小学部の教室に通い、Rくんと
触れ合うことを何よりの喜びにしている息子への
小学部の先生の配慮なのでしょう。

Rくんの描いた息子の絵は、やっぱり笑顔です。

教室で絵を受け取ったときの息子は、「ありがとう」と
Rくんにお礼を言って、「目が嬉しそうだなあ」と
いうくらいのおすましモードだったようですが

家に帰ってくると嬉しさ爆発、という感じで、
ずっと手に持って歩き、「うふうふうふ」と
吹きだしを顔の周りに描いてやりたいような
浮かれモードでした。

2学期もあと3週間あまりですが、これですっかり
エネルギー充填されて、学期末までしっかり頑張れるかも。
Rくんさまさまです。