雲のむこうはいつも青空

まったりもったり~自閉症息子のいる暮らし@ちびくまママ

行方不明!?

2005年05月29日 | 時には泣きたいこともある。
息子にせがまれて、今日もバスターミナルへ出かけました。
最近の息子はすっかり落ち着いているので、息子がバスを見て楽しんでいる間、
私はベンチでゆっくり読書を楽しむことが出来るようになりました。

今日私が選んだのは、やっと手に入れた「自閉っ子、こういう風にできてます!」(花風社)。
夢中になって読んでいて、ふと顔を上げると、さっきまで目の前で
道行く車を眺めていたはずの息子がいません。

「向こうのバス乗り場に行ったのかしら?」
見に行ってみても、息子の姿はありません。

「喉が渇いて、売店か自販機のところへ行った?」
でも、普段息子は「お茶買いたい」と私のところへ言いに来るはずです。

1つ先の交差点へ、車を見に行った?
そこに息子の姿はありません。

まさか、駅の中?ああ、でも、息子が1人で電車にのることはないはずです。

私は泣き出しそうになるのを必死に押さえて、あたりを走り回りました。
本屋の中。コンビニの店内。床屋の看板の前。
どこにも息子の姿はありません。

そこで夫に電話しました。「ちびくまがいなくなった!」
「どうして?何があった?」夫の声は怒気を含んでいます。
「わからない。本を読んでいて、顔を上げたらもういなかったの!」
夫もすぐ電車でかけつけると言いました。

息子は、昔の息子ではありません。
何もわからないまま、私の存在を意識しないまま
いなくなったわけではありません。
息子がもし、自分の意志でここを離れたのなら、
息子は「おかあさんはここで僕を待っている」と
思っているはずです。私がここを動くわけにはいきません。
でも、万が一、息子が自分の意志でなく、連れ去られていたら…。
もし、事故にでもあっていたら…。

家を出たまま帰らず、再び親とめぐり合えた時には
冷たくなっていた…。
息子の仲間たちのたどった、最も不幸な結末が
次から次へと私の脳裏を巡って、私をゆさぶります。
「誰か!誰か助けて!息子を助けて!」
徒歩で20分ほどのところにある警察に電話しようか、
障担には電話したほうがいいだろうか、
ああ、そこに派出所がある、駆け込んで息子を探してもらおうか、
さまざまな思いが渦巻いて、圧倒されて倒れそうになりました。

そのまま何分経ったのか…。
私には数時間にも感じられたのですが…。

息子が、紛れも無い息子が、にこにこ笑いながら
パスターミナルへ戻ってきたのです。
「どこへ行ってたの?」
「ニッ*ンのお店」
「1人で行ったの?何を見てきたの?」
「ひとりでいった。ティ*ナをみたよ」

バスターミナルから100Mほど離れた県道沿いにある、
某ディーラーのショールームを、見に行っていたようです。
「ああ、良かった!!」私は息子を抱いてへたりこみました。

息子はそれでやっと、「どうやら自分はまずいことをしたらしい」と
気づいたようです。とりあえず、夫に、息子が無事戻ったことを知らせました。
悲しい事に、こんな時でも、「感情を剥き出しにして叱っても、
息子にはなぜ叱られたのかは理解できない」という知識が頭をもたげるのです。

「ちびくまくん、おかあさんは、ちびくまくんが急にいなくなったので
びっくりしたわ。どうしておかあさんに『あっちへいくよ』って言ってくれなかったの?」
できるだけ穏やかに彼の目を見て言ってきかせます。
「ごめんなさい」息子は殊勝に謝ります。

「ちびくまくんは、おかあさんが、ここで待っているから大丈夫、って
思ってたのかな」
「おかあさん、まってる、おもってた」
「でも、おかあさんは、ちびくまくんがどこにいるのかわからなくて、
とっても心配したのよ。これからはどこか他へ行く時は、ちゃんと
お母さんに教えてね」
「はい。ごめんなさい」

その後、息子は急に不安になったのか、私にべったりと抱きついてきました。
「おかあさん、だっこして」
2人で近くのスーパーの店先に移動して、自販機でジュースを買って
一緒に飲みました。そして、彼の肩を抱きしめました。
「おかあさんのところに戻ってきてくれて、ありがとう」

「おかあさんは、ここで僕を待っていてくれる」
その信頼があればこそ、の彼の小さな冒険だったのかもしれません。
でも・…私の寿命は確実に5年は縮まりましたとも。

散髪

2005年05月28日 | 時には泣きたいこともある。
今日は、息子の散髪をしました。

バリカンの音もドライヤーの音も我慢できない息子は、
床屋さんに行く事ができません。
10歳の今もママカットであります。

マンションの風呂の狭い洗い場に新聞紙を敷き詰めて
真ん中に風呂椅子を置き、裸ん坊のうえに散髪ケープをかけた
息子がその上に立って、エプロンをかけた私がそのまわりを
ぐるぐる回ってカットします。

使える道具は霧吹きとクシと、赤ちゃんカット用の先丸はさみ1本。
なにしろ、ぐるぐる回って逃げますしね、頭は振るし、
下手すると手で振り払おうとしたりするから、
結構大変な作業だったりします。

でも、昔はもっとずーーーーーーっと大変だったんですよ。
とにかく散髪を受け付けなかったから、夫に息子を羽交い絞めにしてもらい
泣き叫ぶ頭を片手で押さえながら、もう一方の手で切ってましたから、
息子は今思うと結構笑える髪型をしてましたし、
散髪の後は、大人2人は汗だく、息子はその上、涙と鼻水でぐちゃぐちゃ、
おまけに、その後しばらくは、児童虐待で近所から通報されたんじゃないかと
怯える生活。(なにしろアメリカでしたからね)

今は、母も年季を積んで、それほど変な髪形にもならなくなったし、
息子の忍耐力もずーっとついて、「○時○分まで散髪」と約束すれば、
その時間までは一生懸命我慢して頑張ってくれます。
(その後は1分たりとも延長は許されないので、所要時間の
見積もりにも技術を要しますが)

「子どもの状態が悪い時は、それが一生続くような気がするけど、
後になって考えてみると、ほんの一時期だったということがよくあるから」
息子がまだ小さい時、先輩のまつこさんが言ってくれたこの言葉を
そのときは半信半疑で聞いていたけど、
今になってみると、ああ本当だったんだ、と思えるんですよね。

今、すごく大変な思いをしてるお母さんが、世の中にはたくさんいると思うんですが、
愚痴を吐いても、涙にくれてもいいから、あきらめないで欲しいな、
最後の一線だけは越えないで欲しいな、と切に思うのです。
このブログのタイトル、実はそんな思いを含んでいます。

世の中そんなに甘くない。

2005年05月27日 | Wonder of Autism
昨日のトイレ成功にすっかり気を良くした障担、
今日もトイレでおしっこ、と欲張りました。
結果は…轟沈。

まあね。昨日できたから、これからずっとOK,というわけでなはい、
これが自閉っ子なのです。
スムーズに階段を上るように、1歩1歩着実に、なんて伸びてはくれない。
でも、時には3段抜かしくらいのウルトラQを見せてくれることもある。
そして、ある日気がつくと、ものすごい距離を登っている。
それが息子を見守る、醍醐味なのですわ

今日はできなかった。でも、一度はできた。これが大切

トイレ記念日。

2005年05月26日 | Wonder of Autism
ここ数年の間に、驚くほどいろいろな事ができるようになったちびくまですが、
唯一の弱点は、身辺自立の深刻な遅れ。特に排泄の問題は最大のネックでした。

去年の冬、「な~んとなく」の母のカンで、トイレに誘ってみたところ
あっさり排尿、という一大イベントを経験して以来、
家のトイレではなんとか排尿できる(3勝2敗くらいの確率)ようになったものの、
自宅以外の場所では全く排尿できない、という状態に変わりはありませんでした。

でも、今年は5泊6日の自然学校があります。
「オムツをしてでもいい、自宅以外の場所で排尿ができる、という経験を
是非させておきたい」というのは、母と担任の先生の悲願だったのです。

少しずつ、少しずつ、ということで、学校へ行く時に紙おむつではなく
布パンツをはいていく、そして帰宅後即トイレにいって排尿、その後は紙おむつでも
良い、というところまでもっていきました。

そして今日は自然学校の説明会。3時半からの説明会は早くても4時半頃まで
かかる予定です。説明会が終わるまで、ちびくまは障担が教室で預かってくれます。
「この機会を、突破口にしたい」という障担の決意を知らされたのは
昨日の連絡帳でした。

先生が考えたのは、
朝から「学校でおしっこしてみよう」プロジェクトとして、視覚支援も用意して、
午後4時決行、というプランでした。

既に3年目の付き合いになった障担と息子の間には、かなりしっかりした信頼関係が
できています。この先生となら、息子はやってみようという気になるかもしれない。
もし、失敗した場合には、このあとまた何年も退行が起こる心配があります。
でも、先生のやる気と、息子のやる気に賭けてみようと思いました。

4時半頃、説明会を終えて、教室へ息子を迎えに行った私を迎えたのは、
障担の満面の笑顔とVサイン。
「えーっ、おしっこできたんだ!やったね!」
私は息子とハイタッチをしました。

その後、息子と障担と一緒に、5年生担任の先生方にご挨拶に行くと、
3人の先生方も、障担の報告を聞いて、口々に息子に「頑張ったね」「偉いね」
「おめでとう」と言ってくれました。息子は終始、晴れやかな笑顔でした。

今日、息子は、ひとつ、大きなハードルを越えました。
頑張った息子と、それを支えてくれた先生に、心からの「ありがとう」。

~学校のトイレでおしっこできたから
       5月26日はトイレ記念日~   お粗末っ

F小に行ってきました。

2005年05月25日 | Wonder of Autism
昨年までは、こちらから「事前に交流担当の先生と会わせて欲しい。
交流の内容についても、こちらの希望を聞いて欲しい」とお願いして、
やっと簡単なごあいさつの機会がもうけてもらえる、という感じだったのが、

時節柄F小でもだいぶ気合が入ってきたのか、今年はかなり
実のある、本格的な打ち合わせ会になっていました。

交流担の先生は、男性でやわらかな雰囲気の方で、もろ息子の好み。
言葉の端々に、自閉症についての基本的な知識は仕入れておいて
くれたのだろうことが感じられました。

過去4年間の交流担の先生も全員まだF小におられるので、廊下で
会ったりすると、「お、ちびくまくん、来てたん」と声を
かけてもらえてりして、息子は嬉しそう。

でも何より彼が楽しみにしていたのは、新しい交流担の先生の
車を見せてもらうこと。
打ち合わせの最後に、駐車場で車を見せてもらっていると、
そこへ3年生の時の交流担のW先生登場。

この先生、以前「ちびくまスケッチ」にも登場しているのですが、
カーマニアで、ものすごく手をかけた改造車に乗っています。
早速駆け寄っていって、先生自慢の愛車を隅々まで見せてもらう息子。

「ちびくまくん、家まで先生の車で帰るか?」の言葉に
息子の目はもうハート型

「いえ、先生、歩いて帰りますから」と遠慮する母をよそに、
息子は既に世にも幸せそうな笑顔でしっかり助手席に乗り込んでいる。

「ええやん、お母さん、送ってもらい」との先生方の声に送られて、
息子共々、その車で家まで送っていただきました。

夜、息子との会話。
「今日、F小に行って、どうだった?」
「たのしかったよ」
「いろいろなお部屋を見せてもらったし、いろんな先生に会ったね。
何が1番楽しかったかな?」
「W先生の車!」
……そうでしょうとも。

「気に入らない」

2005年05月24日 | Wonder of Autism
これも昨日のことなんだけど。

通学バスから降りて、第一声が「おかあさん、今日のリトミックたのしかったよ」
「そう、良かったねえ」
「でも、ちびくまくんは、ボーリングが気に入らない。輪投げも気に入らない」

どうやら、リトミックの時間の最後にやったボーリングと輪投げが
あまりおもしろくなかった、ということらしいのだけど。
思わず吹きだしちゃいました。どこで「気に入らない」なんて
言い方を覚えてきたのかしら。
これまで、こういうときは「悲しかった」とか「いやだった」とか
言ってたんですよね。

周りの人が話してるのを聞きかじって、「ここはこう言えばいいのか」と
真似して使うので、これからどんどん「おいおい(^_^;)」と思うような
表現が増えていくのかも。

まあ、いつものことと言えばそうなんだけど。

2005年05月23日 | Wonder of Autism
今週の水曜、今年度の地域交流の打ち合わせのため、
地元のF小学校を息子と訪ねることになっている。

例によって、息子は今から大張り切りだ。

「おかあさん、2001年7月16日みたいだよね!」
は???

私の顔を見て、息子は4年前の連絡帳を引っ張り出してきた。
確かに、彼が小学校に入学してから最初のF小訪問は2001年7月16日だった。

今更おどろくことではないはずなんだけど、やっぱりおどろいてしまう。

療育手帳の更新。

2005年05月09日 | 時には泣きたいこともある。
3年ぶりに、療育手帳の更新に行きました。
5歳の、初回判定の時は、文句無く重度。
2年生の時の、更新判定の時は、「生活の難しさを特に考慮に入れて、
ややおまけ」で重度の判定。

ですが、この3年で、息子はすっかり(表面上)行動が落ち着き、
音声言語でのやりとりの力もびっくりするほど伸びました。
発達障害手帳の制度のない今、従来の「知的障碍」という枠組みで
彼を見、自閉を「人とのやりとりができない」という側面だけから
見てしまうと、息子の障碍はごく軽いものにしか見えません。

息子自身の「困り感」に寄り添うならば、判定はできるだけ重く
もらいたい、と私は思っていました。
(手帳というのは、「障碍があること」の公的証明だから)

さて、面接場所であるセンターに着くと、児相のケースワーカーさんと
心理判定員さんが待っていました。
「いかんっ

この心理判定員さん、眼鏡をかけてて、柔和な印象の男性。
モロに息子の好みのタイプだったのです。
そして、好みのタイプの人の前では、「いい子だと思ってもらおう」と
普段以上に頑張ってしまうのが、うちの息子。

案の定、「じゃあ、ちびくまくんは、こっちへ来て、
一緒にお勉強してくれるかな」の声かけに
「はーいおかあさん、いってきまーす
…息子よ、可愛いのは君のとりえだが、ここで発揮しなくても良いのだ…

カーテン越しに発達検査の様子が聞こえてくるのですが、
息子はもう、頑張りすぎるほど頑張っているのがわかります。
「そう、上手だねえ。できたねえ」
「わーい、できた、できたあ」

「…人との共感的関係もしっかりできたお子さんですね」
…息子よ、それは君の最大の長所だが、「ここでは」発揮しなくていいんだってば…

「これで終わりだよ。よくがんばったねえ」
発達検査が終わると、息子、とびきりの笑顔で、晴れやかにこういいました。
「ありがとうございました!」

私のところへ戻ってきて、
「おかあさん、ちびくまくん、おべんきょうがんばった!
ごあいさつもちゃんとできた!」
と嬉しそうに報告する息子。
「ほんとだねえ。とってもえらかったよ」
…息子よ、でも、『ここでは』そんなに偉くなくていいんだ…


結果。「検査の数値からしても、行動観察から受ける印象としても
とても重度のそれではありません」ということで、
障碍の程度は中度という判定になりましたとさ。
だ~か~ら~うちの息子は「好みの人」と「1対1」なら
ずば抜けて良い関係が持てるタイプなんですってばあ~