雲のむこうはいつも青空

まったりもったり~自閉症息子のいる暮らし@ちびくまママ

予防接種(その2)

2007年11月20日 | adorably autistic
3時前に学校から帰ってきた息子に、
「注射は3時半からです。急いでおやつを食べてから行きますか?
 それとも帰ってきてからゆっくり食べますか?」
と確認すると、
「急いで食べてから行きます」との返事。

今日のおやつの選択肢から選んだりんごをほおばりながら
「お母さん、注射っていたいのかな~」
相当気になっている様子です。

「うん、注射は針を刺すんだから、痛いよね。
 お母さんは子どもの時、インフルエンザの注射は
 すごく痛いと思った」

「そういうとき、普通のお母さんは『痛くないよ』とか
『大丈夫よ』とか言うんじゃないの?」と笑われたことがありますが
それだと、もし息子が「痛い」と感じたら、息子は私に
だまされたと思うかもしれません。
たとえそれが悪意による嘘ではなくても
日ごろから「嘘をつく人」は、私でもどこまで
信じていいのかわかりません。

だから、息子がまだずっと小さい頃から
私はいい事も悪いことも、率直に事実を伝えることにしてきました。
「だから、ちびくまくんも、すごーく痛い、と思うかもしれないけど、
 1から5まで数える間くらいだから、頑張ってくれる?」
「はい、頑張ってくれるよ。ぼく、大丈夫だよ」

かかりつけの小児科医では3時半から4時までが予防接種の
時間帯ですが、すでに駐車場は満杯。
中に入ると、待合室にも人が溢れていました。

自分より小さい子どもがいる環境が苦手、泣き声はもっと苦手、
受付にかかってくる電話の呼び出し音も苦手、
それが自分でわかっているちびくまは
「ぼくは外で待ってるよ」と自分から言い出します。

私1人で受付を済ませて、体温計で熱をはかります。
脇に挟んでじっとしていると、看護婦さんがニコニコして
「その体温計、5秒で計れますので~」と。
・・・世の中は私が知らない間に進んでいたんですね。(^^ゞ

昔は体温計を嫌がって暴れる息子を抑えるのが大変だったんですが。
もちろん、今は息子の体温も問題なく計れます。

順番が回ってきて、名前が呼ばれたところで、息子は
玄関から診察室へ直行。
自閉症専門病院での勤務経験があるドクターは
自閉っ子の扱いに慣れていて、看護婦さんも配慮があるので
息子も安心して診てもらえるようです。
「お腹もしもしするよ。じゃあ、背中ももしもしさせて。
 あと1つ、お口あ~んして 見せてもらえるかな」
というドクターの指示にも素直に従います。

手馴れた看護婦さんが1人は身体を支え、もう1人が上腕部を
支持して、あっという間に接種終了。
「静かに注射できて、お利口さんだったねえ」
褒めてもらって、息子はにっこり。私の接種が済むと、
「ありがとうございました~」と挨拶して
先に立って診察室を出ました。

支払いが済んで、車に戻り、
「どう、痛かった?」と訊くと、
「ううん、いたくなかったよ。大丈夫だったよ」
「そう?すごいな~、小さい子はいっぱい『痛いよ~』って
 大きな声で泣いてたよ」
「ぼくは泣かないよ、中学生のお兄さんだから」


でも、帰宅後すぐ書いた日記には「針がちくっとしました。痛かったけど
がんばりました」と書いてありました。


予防接種(その1)

2007年11月19日 | adorably autistic
今年はインフルエンザの流行が早く始まっているようです。

我が家では、これまで誰もインフルエンザの予防接種を
受けたことがなかったのですが、

今年は私がCIDPの治療のために免疫抑制効果のある薬を
常用しているため、もしインフルにかかってしまうと
最悪の場合命にかかわるということで、主治医の勧めで
予防接種を受けることにしました。

ただし、よくも悪くも免疫がつきにくいので、予防接種の
効果自体が低くなってしまう可能性もあるとのことで、
家庭内にウイルスを持ち込まないために
息子にも受けてもらうことにしました。

渡米の前後には、日米の予防接種制度の違いから、沢山の
予防接種を受けたちびくまですが、2001年の春に受けたのが
最後ですから、彼が「話せばわかる人」になってからは
およそ始めての接種ということになります。

「ちびくまくん、お母さん、お熱が出たらどうなるか知ってる?」
「うん、また入院しちゃうんだよね」
「そうだね。だから、風邪をひかないようにお外ではずっと
 マスクをしているし、お家に帰ってきたら手洗いとうがいは
 必ずしてるよね」
「はい」
「じゃあ、ちびくまくんが風邪をひいたらどうなるか知ってる?」
「知ってる。お母さんがまた入院しちゃう」
「そうね。ちびくまくんの風邪がお母さんにうつったら
 お熱が出るものね。だから、ちびくまくんはお家に帰ってきたら
 やっぱり手を洗ってうがいをしてくれてるよね」
「はい。ちゃんと手洗いとうがい、してるよ~」

「でもね。インフルエンザっていう、すごく高いお熱が出て
 しんどくなる風邪が流行ってるんだって。
 だから、お母さんはインフルエンザにならないように、予防注射を
 してもらいにお医者さんに行こうと思うの。
 ちびくまくんもインフルエンザにならないように、予防注射を
 してもらいたいんだけど、してくれる?」

「うん。してくれるよ。どこでするの?」
「Hクリニックにしましょう。ちびくまくんはH先生が好きだもんね」
「はい。H先生やさしいよ。いつするの?」
「じゃあ、H先生にお電話して予約するからちょっと待って」

・・・という会話をしたのが先週のこと。そして今日がその
予約日でした。


オープンスクール(その3)

2007年11月12日 | 楽しい学校生活
さて、10分の休み時間をはさんで、今度は数学。
これは毎度おなじみの百ます計算です。
たし算、引き算、掛け算、割り算を各1枚。
自分でストップウォッチを操作し、「用意、はじめ」の
号令をかけて始めます。

何人もの見学者がいて、見に来ている子どもが声を出したり
途中で人が出て行ったり入ってきたり、と
かなりざわついた環境ですが、
息子はしっかりと課題に集中しています。

気が散るどころか、「新記録」が3回も出ました。
「気持ち」がしっかり課題に向いているときには
外部からの刺激に乱されず作業できることがよくわかります。

新記録が出ると、黒板に「新記録カード」を貼ることができます。
このカード自体も、大きな色画用紙から好きなのを選んで
適当な大きさに切り、そこに自分の名前と何算かと
時間を書き込みますので、目分量で適当な大きさをはかり、
はさみで切り、そのスペースにあった大きさの文字で
うまく割り振って必要な情報を書き込む、という
複雑な作業課題になっています。

興味しんしんで息子たちの手元を覗き込んでいた
小学生の男の子も、「良かったら一緒にやってみる?」と
言われて、足し算のプリントに取り組んでいましたが
初めての場面ではあるし、緊張もあるのか
「あれ?いつもならもっとできるんだけどな~」と
お父さんと一緒に頭を抱えていました。

「あんなの何枚もやって、すごいな~」と
彼とお父さんから心底感心した、という感じで声をかけられて
息子はニヤリと笑って嬉しそう。

4枚仕上げた後は、やはり自由時間で、自分で好きな活動を
選んで遊ぶことができます。

この教室の子どもたちは自分のスケジュールや持ち物を
それぞれのノートに書き込んで自己管理しているので
目だった構造化の試みや大げさな視覚支援はここでは
見られませんが

暑さに弱い子のための扇風機、着替え時の目隠しのほか
パーテーションとしても使うことのできる可動式のスクリーン、
新品のDVDプレーヤー、先生手作りの着替え手順表、
子ども本人の字で書かれた「1人ならやっていいこと」
「他の人のいるところではやってはいけないこと」のリスト、
1人1台のパソコンがあり、それぞれの子に専用機があること、
身体のバランスを取るために、着席学習の際にも、その子その子で
バランスボールの上に座っていたり、バランスチェアに座っていたり、

見る人が見れば目のつけどころはいくらでもあったことでしょう。

ちびくまの進学先としては全く度外視していたこの学校を
3年前のオープンスクールで初めて訪れたとき、
この教室とこの先生の授業を見て「!」と感じた自分を
改めて褒めてやりたくなった参観日でした。

オープンスクール(その2)

2007年11月11日 | 楽しい学校生活
まずアイロンの使い方と注意点について先生から注意を聞き、
お手本を見せてもらってから自分でもアイロンをあててみます。

きれいに仕上がったのを確かめて先生がGOサインを出すと
息子は自分で作品を台からはずそうとしたのですが・・・
「あっ、熱いよ。熱い。熱いね~」
先生に目で助けを求めながら繰り返します。
「ちびくまくん、こういう時はなんて言ったらいい?」
「わかりません~」
「わからないときは、なんて言うんだっけ?」
「わからないので、教えてください」
「そう。じゃあね、『熱いので、取って下さい』って言おうか」
「熱いので、取って下さい」
「何を取るの?」
「熱いので、ギリシャを、取ってください」
「はい。ギリシャね。あ、ホンマ熱いなこれ。あちち」

困ったときに、他人にわかりやすく助けを求めることが苦手な
ちびくまのために、「言葉で助けを求める練習」を意識した
会話になっています。

さて、これで要領をつかんだちびくま、あとは1つ出来上がるたびに
「熱いので、ドイツを、取ってください」
「熱いので、スウェーデンを、取ってください」
・・・見事なゲシュタルト(1つ1つの言葉をつなげて文にしたのではなく、
文を丸ごと覚えて使っていること)ですこと(笑)。

アイロンをかけたビーズは少し反り返っています。これを
まっすぐにするために、K先生は「本棚から分厚い本を3冊取ってきて」と
指示を出しました。
「はい」と本棚に行ったものの、「分厚い本」がわからないらしく
うろうろし、「わかりません~」と先生に訴えるちびくま。
「じゃあ、この本にしましょう」と指示してもらって、
ようやく3冊を机のところへ運んでいきました。

「Aの本とBの本とではどちらが分厚いか」ということはわかっても
「(ビーズの反り返りを防ぐ重石にするだけの重量のある)
 分厚い本」の()の中は想像できていないのだということが
よくわかります。

全部の仕上げが終わると自由時間。先生は息子に
「2時間目の終わりまであと何分遊べるか」を確認させてから
(時間の計算の練習と見通し立て)自由にしていいよ、と
指示を出しました。息子はバランスボールに乗って
教室をぴょんぴょんと跳ね回っていました。

息子を全く知らない人が漫然と見ていると
気が付かないかもしれませんが
声の出し方が常にニュートラルで落ち着いてるのに、
「楽しいな」「面白いな」といったポジティブな気持ちの
ところだけは感情がこもっていて

ちょっとした言葉かけまで息子の今の課題に沿っていたり
何かの概念がわかるかどうかの確かめになっていて
1つ1つの指示にまで先生の注意が行き届いていることが
よくわかる授業でした。

オープンスクール(その1)

2007年11月10日 | 楽しい学校生活
行事続きの秋、今日はちびくまの通う中学のオープンスクールです。
久しぶりの授業参観ですし、2時間目と3時間目の両方を
見ることができるというので、私も楽しみにしていたのですが
息子はそれ以上にこの日をわくわく待ち望んでいました。

息子の通うF中学は、ちびくまが卒業する平成22年の4月から
市の特別支援教育センター校になることになっていて、
ハード面でもソフト面でも、この街の特別支援教育の
中核的役割を果たす学校になる予定になっています。

その計画が正式に公表されて初めてのオープンスクールなので
「どんな学校なのか一度見ておこう」という小学生の親御さんが
きっと何組も見に来るよ、とちびくまに話したところ、

「どんな人がくるかな~。何人くるのかな~。
 作業のお勉強と数学のお勉強を見てもらうんだよね~」
と大興奮。「ぼく、参観楽しみにしてるんだよ」と
何度も繰り返し、指折り数えて待っていたのでした。

ちびくまは「ギャラリーがいるとモチベーションが上がるタイプ」で
先日、県教委と市教委の視察が入ったときも、それはもう大はりきりで
受け答えまでが普段と全く違っていて、障担K先生は
笑いをこらえるのに苦労したそうです。

さて、いよいよ参観の時間。教室に行くと私が一番乗りで、
息子はクラスメートのSくんとパソコンで遊んでいるところでした。
K先生が教室に入ってきて、チャイムが鳴り、2時間目・作業の
始まりです。

先生の指示で、Sくんはパソコンに向かって黙々と
ワードの入力練習を始めます。
息子はたたんであるエプロンを広げ、
着用して後ろ手に蝶結びをして先生に見てもらい、
OKが出たらはずして畳みなおす、という課題。
靴の紐がきちんと結べるようになったので、
生活の中で使えるほかのひも結びということで
先生が考えてくれたものです。
そして、これはそのまま給食当番、という次のステップへ
つながることになっています。

ところが、興奮しているのか、ちびくま、全く落ち着きが
ありません。「デデデデデ~」と奇声(というか、喜びの
声なんですが)を発しながら、教室の中を行ったり来たり、
両手で膝をバンバン叩いたり(これも嬉しいときのポーズ)
くるくる回ったりしながら、

それでも割合にスムーズに5回課題をこなして、先生に
OKをもらいました。次はワードでの入力です。
キーボード操作が非常に速いので、あっという間に
入力は完了します。

最後は、アイロンビーズ。手先の細かい作業をする機会が
あまりないので、そのあたりを狙ってとりいれてもらったものです。
絵を描くとかブロックを組み立てるという、造形系にほとんど
興味をもたないちびくまですが、たまたま先生が大好きな
国旗の図案集を見つけてくれたので、やっとモチベーションを
引き出すことができました。

今日はこれまで作り溜めてきたいくつかの作品に
アイロンをかけて仕上げます。



文化祭(その2)

2007年11月04日 | 楽しい学校生活
となると、テナーに息子を含め障級在籍者が2人もいる
息子のクラスのことが気になってしまいます。
ついに、息子のクラスの番になりました。

ちょっと緊張した顔で壇上に上った息子、いきなり首筋を
ぼりぼりとかき始めます。ストレスのかかったときの
息子の癖ですが、他のみんなが真面目な顔で直立不動の
姿勢をとっているのでものすごく目立ちます。

「お~い・・・」と冷や汗をかき始めたところで、指揮者が
一礼。会場に拍手が起こると、途端に息子の両手がびしっと
下におりたので、ほっとします。

ところが。予想に反して(?)ちびくまのクラスのコーラスは
音色が柔らかく、男声と女声がよく調和して、バランスのとれた
とてもいいハーモニーになっていました。
そして、息子も、微笑をたたえたいい表情で、口をはっきり
動かして歌っていたのです。

ざわつき始めていた会場ももう一度静まりかえって、
感心したように「ほう」と息をつく人も何人もいます。
私の親ばかの分を差し引いても、1年生の中ではこのクラスが
一番うまかった、と思いました。

個々の子どもの技術に、他クラスとの間でそれほどの差が
あったとは思えません。
それでも、このハーモニーの明るさ、柔らかさは、このクラスの普段の
在り方が反映されたもののような気がしました。

息子が毎日にこにこ笑って、「ぼくは学校が好きだよ。
S先生もK先生も教頭先生も好きだよ。SR(障碍児学級)も
クラス(交流級)も好きだよ」と言いながら学校へ駆けて行くのは
こんなクラスに迎えられているからなのでしょう。

校区外の小学校を卒業した息子を校区の中学に通わせることに
私は随分不安を感じていた時期もありましたが

同じ小学校を出た子どもが1人もいないということは
全ての子どもを大切にしようという学校や先生たちの
凛とした姿勢が明確に子どもたちに伝わっている限り、
大きな障害にはならないのかもしれません。

言い換えれば、障碍のある子とない子が一緒に育つということは
その環境を大人がどのようにとらえ、どのように見守り
導くかによって、子どもを守り育む力にも、子どもを傷つける
刃にもなりうるということなのではないかと思います。

6年前、小1の音楽会では、全く歌わずに舞台の上で
歌詞に合わせて1人楽しげに踊っていた息子の姿や
ほんの半年前には緊張でがちがちに強張った顔をして
学校に通っていた息子の姿を思い出して、

なんだか胸と目頭が熱くなってしまったのでした。


文化祭(その1)

2007年11月03日 | 楽しい学校生活
ちびくまの通う中学では、今日が文化祭でした。

決して派手な行事ではありませんが、文科系部活の展示や
ステージや、各学年の学習成果を生徒たち自身がまとめた
壁新聞の展示などのほかに

クラス対抗、学年対抗での合唱コンクールが恒例のプログラムに
なっていて、この学校の文化祭の目玉でもあります。

先月中旬、中間テストの終了後すぐ毎日の練習が始まりました。
小学校の音楽会の練習は、普段の時間割を大幅に変更してのものでしたが
今回は体育大会のクラス対抗種目同様、普段は50分授業なのを
45分授業に短縮して、その分を放課後にまとめて練習時間に
充てるというシステムなので、

体育大会での経験から、K先生から息子への伝え方も、息子の
理解も、今度はスムーズに行ったようです。
練習の様子は毎日K先生がクラスを覗いてくれて、連絡帳で
伝えてくれました。
「口の開きは小さいですが、動きは歌詞にあっています」
「耳をふさがずに頑張っています」
本番前日の昨日は
「クラスの中に自然に溶け込んでいます」

息子は息子なりに、「クラスの一員」として頑張っているようでした。
体育大会や、その後の授業を通して、自分の苦手なことも
ありのままに受け止めて、不利になるところだけさりげなく
手伝おうとしてくれるクラスメートたちの中で、少しずつ
安心して行動できるようになってきたのだろうと思います。

さて、いよいよ本番。
合唱コンクールは1年生の学年合唱から始まりました。
声の出し方も固く、音程やリズムもまだまだ甘く、いかにも
まだ新入生です、という感じの演奏。

その後、1年各クラスの演奏が続きます。
クラス別になると、全体でわずか30数名と人数が減った分
音をはずす子や声の固い子がいるとそこが悪目立ちしてしまい、
パートごとの音量のアンバランスも影響しやすく、
なかなかきれいなハーモニーになりません。

あるクラスなどは、最初から最後まで完璧に音をはずしている
子が数人いて、またその子たちの声が大きいので、
幼稚園児や小学校低学年の「元気なだけ」の演奏を聴いている
ような感じになってしまい、
さすがに客席にも失笑にちかい空気が漂いはじめました。