陸奥月旦抄

茶絽主が気の付いた事、世情変化への感想、自省などを述べます。
登場人物の敬称を省略させて頂きます。

迫り来る中共瓦解

2006-04-16 16:08:09 | シナ・中共関係
 中華人民共和国(中共)は、毛沢東が政権を取って以来、飢餓輸出や人民抹殺を行ってでも核兵器開発とミサイル保有を図り、ソ連の協力を得てこれを実現させた。核抑止力保持で、米国とロシアに対抗出来る政治大国となったわけで、結果的にその目論みは成功している。また、1971年、各国からの異論はあったが、中華民国(台湾)が追放されて、中共は国連常任理事国の地位を得、国際的に有利な立場を確保した(翌年に「日中共同声明」発表で日本と国交回復)。日本は1956年12月、80番目に国連へ加盟している。更に経済解放を奨励するトウ小平路線の採用で、中共はこの15年間に外資導入を充実させ、経済的な力をつけた。恐らく、2008-2010年を転換期として台湾攻略の実施、そして最後には日本併合をも行うであろう。日本から中共を見る時、春暁石油ガス田や尖閣諸島領有権の紛争相手として対処するだけで無く、この国が内包している<中華思想>と辺疆支配の指向性に我が国は注目しなければならぬ。

 以上は平松茂雄「中国は日本を併合する」(2006、講談社インターナショナル)の要約と結論である。この著書は、一読に値する。確かに中共は、一見した所経済的な力を付け、2005年の名目GDP総額においてフランスに次ぐ世界第6位(200兆円)となり、9000億ドルもの外貨保有高は日本を抜いて世界一となった。アフリカ、東南アジア、南米諸国へ数十億ドルの資金援助を継続中である。また米国の調査によると、中共軍事費はこの10年間毎年2桁の増加で、昨年は凡そ11兆円にも達した(日本は5兆円)。中共の国家予算は約30兆円であるから、これは準戦時体制とも言える。

 そうした国へ1979年以降、日本は毎年1000-2000億円近いODA、あるいは様々な無償経済援助をして文句ばかり言われているのだ。これまでに日本が日中友好のスローガンを標榜し、援助の名目で中共に投じた我が国の税金は4兆円にも達する。誰が考えても、実に阿呆な話である。1998年単年度の対中ODAは2300億円にも昇っている。
 石油輸入の面で言うと、現在日本と中共は完全な敵対関係にある。中共は2003年には、米国を抜いて純石油輸入大国となった。ロシアからの石油パイプライン敷設では日本と争い、イランの石油資源確保でも日本と競合している。春暁ガス田の争いは言うまでもあるまい。これは、只今一触即発の形勢に近くなっている。

 中共にとっては、領海問題を含めて日本程目障りな国は無いのだ。とは言え、資金導入と先端技術導入では、まだ日本に頼らざるを得ない。特に公害防止技術は全面的に依存している。新幹線技術も何とか安く入手したい。そうしたジレンマが、靖國問題として日本に言い掛かりを付け、70年以上も前に起きた南京事件を拡大強調し、記念館まで造ってその謝罪を求め続けるわけだ。また、2005年に日本が国連安保常任理事国候補になると、その提案に大反対し、反日デモでこれを潰した。そこには、我が国と協調するとか、融和の中に物事を進める姿勢は全く見られない。日本人は、日中友好あるいは一衣帯水の交流などと戯けた言辞に惑わされず、冷静に現実を直視する必要がある。中共は、明らかに日本の潜在敵なのである。

 ヨーロッパに匹敵する巨大な陸地面積と13億もの人口、世界主要都市に存在する華人街(情報源)は、支那民族国力の源である。発展途上国並みの労働条件で賃金が安く、人民元をドルに対し安く設定している(1ドル=8元)から、中共が2001年にWTOへ加盟して以来国債資本が雪崩のように入り込み、恰も世界の工場としての様相を呈しているのだ。
 しかし、前記の平松氏は中共が現在抱えている不動産バブル、経済格差による暴動の多発、乱立した石炭火力発電や化学関係企業による甚大な環境汚染、30%にも達する若者の失業率増加、社会保障制度(健康保険、社会保険等)の未熟さ等、中共経済の内包する不安定性について、その著書で殆ど触れていないのを私は奇妙に感じる。それに、どう考えても日本併合はあり得ないとも思う。

 一方、宮崎正弘「中国瓦解」(2006、阪急コミュニケーションズ)では、確かに中共の経済成長は見かけ上大きいけれども、同時に不安定要因も大きくなり過ぎて、経済破綻により近未来において大停滞へ突入するとの見方である。宮崎氏は、自動車、家電を中心に供給過剰の著しい徴候が見られ、人口に見合った内需が成長していないとも指摘しているが、将に卓見である。

 13億の人口を持つ市場として、多くの企業が支那大陸に興味を持つ。だが、購買力を持つのは、沿海地方と大都市周辺だけであり、現状では先進国並みの購買力を持っている人口は全人口の1割程度であろう。大半の支那人は年収20万円にも満たず、清国時代の生活に留まっている。13億の人々が先進国並みの生活をすれば、世界がエネルギー消費と食糧不足に陥る。そうはならないように、目で見えぬ力が働いていると私は思う。だから過大な夢を持って中共を見てはならないのである。

 良く知られているように、中共はチベット、ウィグル、内モンゴルを強引に併合し、民族自治の点で問題を残したままだ。それには、人類として恥じるべき残虐な人権問題も絡んでいる。ミャンマーやネパール、北朝鮮へ政治・軍事的な影響力を駆使する一方、中共はパキスタン、ベトナム、ラオスなどに経済支援を行い、友好関係を維持して来た。一方、エネルギー源確保の為、アフリカではアンゴラ、ナイジェリア、スーダンの石油産出国に対し経済援助・軍事支援を行い、南米ではベネズエラやブラジルへさえも進出しようとしている。ベネズエラ大統領は毛沢東主義者で、米国と反目中だ。こうした国の多くは、仮想民主・独裁体制国家である。

 中共は、1970年代から西沙諸島、南沙諸島の海底資源確保を狙って離島へ軍隊を派遣して不法占領、フィリピン、ベトナム、マレーシア、インドネシアを恫喝しながら、不安感を与え続けている。この領海拡大指向は、日本の領海問題を含む春暁ガス田開発にも関係する。加えて昨今は、核兵器保有指向のイランと石油輸入協定を結び、西欧諸国にからも疑問視されているのだ。

 中共人民解放軍(共産党の支配する私兵で、政府すなわち国民の軍隊では無い)は、米国に対抗して各種ミサイルの開発(宇宙進出を含む)、空軍の新鋭戦闘機導入による強化、空母を含む海軍大洋艦隊新設を目論んでいるのは事実だ。だが、果して中共国民は人民解放軍が巨大な費用を投じて近代化する姿を何時まで黙認するのだろうか。宇宙開発は、予算過大のため既に中止の発表を行った。膨大な公共投資としては、山峡ダム2期工事だけでも5兆円、黄河と揚子江を結ぶ縦断大運河建設に8兆円、全国を巡るガスパイプライン建設など、国内では民心と離れた公共投資を継続中だ。この4月に米国を公式訪問する胡錦涛は、ボーイング(社)から旅客機を150機も購入すると言う。

 もともと支那人が持つ中華思想に加えて、不足がちな自国のエネルギー資源確保の為、なりふり構わぬ世界戦略を行う胡錦涛政権は、無理な軍事費の拡大そして国内インフラ整備と併せて、あたかも腹を膨らませ過ぎたカエルの王様の様にも映る。そんな事を続ければ、パンクしてしまうのは常識だろう。

 軍略に力を入れ過ぎた独裁国家の破綻は、旧ソ連崩壊を思い起こさせる。1980年代のレーガン戦略構想に対抗しようとして、ソ連は対欧州中距離ミサイル配備、人工衛星による攻撃体制(スター・ウオーズ計画)に追従して行けなくなった。東独からの民衆大量脱出を切っ掛けにベルリンの壁が取り払われる(1989年)。ウクライナ、ベラルーシ、バルト3国などが独立し、ゴルバチョフの努力にも係わらず、ソ連は冷戦に敗北し、1991年ソ連は崩壊。共産党は下野して、旧ソ連は旧帝政ロシアの版図に戻ったわけだ。かつての東欧衛星諸国は、第二次大戦以降の旧ソ連の軛からようやく解放されて、漸進的に民主政治体制へ転換しつつある。

 多くの識者が指摘するように、中共国土の環境破壊による汚染状況は、昨年秋だけでも松花江への大量なベンゼン流失、カドミウムを始めとする重金属土壌汚染など、相継いで酷い状況が報告されている。原子力発電が普及していないから、石炭火力発電の割り合いが多く、排煙脱硫技術も無いため大気汚染と酸性雨が著しい。加えて、疫病の慢性的な発生、売血によるエイズの流行、致命的な水不足も目立つようになり、これらは何時でも市民暴動の誘因となる。要は、国民の健康維持に何ら注意が払われていない。

 解放経済後の共産党幹部の汚職、売官は止まる事を知らず、地方では怨嗟の的になっている。人民元の早急な切り上げは、米国、EUからも激しく指摘されており、通貨コントロールを誤れば土地バブル崩壊が起るのは必定。元/ドルレート上昇で経済バブル崩壊が起れば、外資は中共から一斉に引き上げるであろうし、上海を中心とした反政府勢力(江沢民一派)が機会を得て、胡錦涛政権を益々弱体化させるであろう。20%の元切り上げが囁かれているが、胡錦涛政権がバブル崩壊をさせる事無く北京オリンピック(2008年)迄国家体制を維持出来るのか、全く予断を許さない。

 散発的に起きる市民暴動を押さえるために、今世紀に入ってから中共政府は武装警官隊を拡充し、その員数も100万人と増員した。だが、本格的な暴動が起きた時、支那人の国民性からして武装警官隊は機能しないのでは無いか。その徴候は既に出ている。今年4月8日、福建省泉州市で工場廃水に怒った200人の住民が韓国系プラスティック工場等4ケ所を襲ってこれを破壊、物品を奪い去ったが警察は傍観しているだけであった。1年前の駐上海日本領事館を狼藉を働いた暴徒達を武装警官は阻止していない。つまり警官隊が暴徒を真剣に取り締まらないのだ。
 国営銀行の不良再建は遅々として進まず、中共が2001年にWTOに加盟して5年後の今年、国際資本による銀行進出が問題化する恐れがある。民衆の金が不安な国営銀行から外資銀行へ流れて、益々国営銀行は危機に襲われる。それに上海や北京を中心とした不動産バブルが破裂すれば、一気に経済は停滞し、雇用問題が益々顕在化する。同時に、上記環境破壊による不満も暴発し法倫功*1勢力も加担して市民蜂起の数がねずみ算式に広がる。現代版<黄巾の乱*2>あるいは<太平天国の乱*3>が生じて、胡錦涛政権は追い詰められる訳である。

 ここに至る前に、中共政府は間違い無く台湾進攻を行うであろう。前哨戦として東シナ海進攻(尖閣諸島)があるかも知れない。それが国内不満を緩和する最上策であるからだ。空母保持は間に合わないにしても、巡航ミサイル装備や航空兵力の近代化、原子力/通常潜水艦戦力の充実に中共は自信を持っている。だが、進攻を受ければ台湾も負けずに上海をミサイルで攻撃する。当然、米国の関与は避けられず、日本も間接的に巻き込まれる。日米の共同軍事力は圧倒的に大きいから、中共軍は大きなダメージを受ける。中共と仲の悪いロシアは傍観を続けるであろう。しかし、中台紛争は核攻撃までは進まない。それは国際世論を無視出来ないからだ。仮に中共核使用の可能性が高まれば、ロシアもEUも黙っていない。結果的に、半年もしない内に中共は局地粉争に敗北し、台湾は独立する。そして支那全土に暴動が起き、共産党政権は崩壊するだろう。

 中共が瓦解する場合、200万人とも言われる人民解放軍(共産党の私兵)の出方が問題である。理不尽な支配に鬱屈した内陸の辺疆地域、すなわちチベット、ウイグル、内蒙古自治区は人民解放軍と武装警察へ立ち向かい、必ず独立するはずだ。また、それが自然である。中共本体は、北京を中心とした北部、上海沿岸地域、広東(広州、深せん、香港など)地域、重慶を中心とした内陸部などへ4分化するのであろうか。東欧で起きた無血革命とは様相が異なり、血を血で争う激しい内戦を伴って、分裂が安定する迄に恐らく数10年が必要と想像する。

 分裂する場合、我が国としては中共が保有する核兵器の管理が心配である。これら分裂化が行われた地域での民主制施行は、支那人の国民性から考えて暫くは採用されず、軍部独裁の体制が再現する。それは、支那の歴史と国民性を反映した姿である。分裂した地域によっては、共産主義体制が残存するかも知れない。

 いずれにせよ日本は、国家として中共瓦解に関与すべきで無いし、これ以上の経済援助もしてはならない。ODAは即刻中止、化学兵器処理案件も凍結したら良い。福沢諭吉が「脱亜論」で喝破したように、支那は敬して遠ざけるのを上策と考える。これまで中共へ投資した企業は、ヤオハンの様に資産は全て乗っ取られ、社員に犠牲者も出るであろう。予測されたチャイナ・リスクを配慮しなかったのが原因であるから、これはその企業の自己責任として仕方が無いと私は見る。

*1法倫功
現代支那の宗教団体。中共政府は、法倫功信者に残虐な弾圧を加えている。機関紙「大紀元」を各国語で発行し、脱共産党運動を進めている。

*2黄巾の乱(184年)
後漢末の張角(太平道=五斗米道のリーダー)らによる大規模農民反乱。
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E9%BB%84%E5%B7%BE%E3%81%AE%E4%B9%B1

*3大平天国の乱(1853ム1863)
 1853年キリスト教を信奉する拝上帝会のリーダー洪秀全(広州客家出身;天王と称す)は、アヘン戦争で疲弊した清国軍を撃ち破り、不満を訴える民衆を率いて南京に入城した。彼は南京を天京と改め、大平天国の都とした。1864年に鎮圧される。民衆蜂起は、現世の悩みを救う宗教の影響か異民族支配に対する反感がベースとなる。但し、カリスマリーダーが絶対に必要。清国で例を挙げると、大平天国の乱が前者、義和団の乱が後者にあたる。
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%A4%AA%E5%B9%B3%E5%A4%A9%E5%9B%BD%E3%81%AE%E4%B9%B1



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3 コメント

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停止 ((^-^)風顛老人爺)
2006-04-20 02:08:42
拝啓、些か遅きに失しますが。 今月中に援助及び技術供与停止しましょう。 ヤマハ発動機みたいな不心得者は社長及び責任者は逮捕しましょう。 これ以上 優秀な日本の民生技術を説教強盗国家シナに与えては、絶対にいけません。 草々
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多分後者でしょう (茶絽主)
2006-04-18 23:32:32
 煬帝様

コメントを有難うございます。中共は、核兵器使用の限界を知っていると思います。国際社会からの報復が怖いのです。



それとは別に、日本は非核三原則から離れて、フリーハンドになる時期と思いますが、如何ですか。
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中共の限界 (煬帝)
2006-04-17 21:29:24
お初です。



中共の対外進出で分水嶺になるのは核兵器を使用してでも前進を続けるのか、核使用を断念して妥協するのか。



前者なら台湾、日本は大打撃を受ける可能性が高いし、後者なら中共支配の終わりの始まりになるでしょう。



この辺をどうするのかが大切ですね。
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