陸奥月旦抄

茶絽主が気の付いた事、世情変化への感想、自省などを述べます。
登場人物の敬称を省略させて頂きます。

ラロの<スペイン交響曲>を聴く

2008-11-09 06:37:06 | 読書・映画・音楽
 当地は紅葉もほとんど終わり、風がかなり冷たくなった。樹木の雪囲いも全て終えて、初雪を待つばかりである。このブログも、デザインを元の「カサブランカ」へ戻す事にしよう。

 ヴァイオリン協奏曲と言えば、三大協奏曲(メンデルスゾーン、ベートーヴェン、ブラームス)を思い起こすのであるが、何れも大作曲家の作品だけあって、楽想、メロディーの美しさなど甲乙付けがたいものがある。好みでチャイコフスキーの華麗なヴァイオリン協奏曲を思い出す人達もいるであろう。これらの大作曲家達は、ヴァイオリン協奏曲をそれぞれ1曲しか残していない。

 モーツアルトは、美しいヴァイオリン協奏曲を幾つか作曲した。その中でも、ヴァイオリン協奏曲第5番「トルコ風」は人々に愛されているし、ヴァイオリニストも悦んで演奏する。また、パガニーニのヴァイオリン協奏曲は、楽章ごとに印象深いメロディーが幾つも登場して変化に富むが、演奏に技巧を要し、ヴァイオリニストにとってこれをこなすには中々大変だろう。

 ヴェニャフスキーやサン=サーンスのヴァイオリン協奏曲は、何とも優雅、華麗であり、ロマンス映画の背景音楽に使われても良いように思う。

 エドゥアール・ラロが51歳の時に作曲した<スペイン交響曲>(1874)は、交響曲と名付けてはいるものの、ヴァイオリン協奏曲そのものであり、5つの楽章からなる。これは、ラロが作曲した2番目のヴァイオリン協奏曲で、スペインの名ヴァイオリニスト、パブロ・サラサーテに献呈された。私は、この曲が好きで、昔はアルチュール・グリュミオー演奏のLP盤でよく聴いた。有名なヴァイオリニストは、これをあまり取上げないためか、現在入手出来るCDは少ない。

 ヴィクトール・アントワーヌ・エドゥアール・ラロ(1823-92)はフランス人であるがバスク系の血を引いていて、作曲をするヴァイオリニストでもあった。現在は、<スペイン交響曲>を除いて、彼の曲は殆ど演奏されないようだ。

ラロ <スペイン交響曲>作品21 ニ短調
第1楽章 ニ短調 ソナタ形式 (7:44)
アレグロ・ノン・トロッポ 2分の2拍子
オーケストラによって、特徴ある第一主題が提示され、ヴァリオリンがそれに応じる。ヴァリオリンが静かな第二主題を奏で、様々な変奏を展開する。やがて、オーケストラが第一主題を再奏する中、ヴァイオリンは第二主題を物悲しく変奏し、フルオーケストラで纏める。

第2楽章 ト長調 三部形式 (4:22)
スケルツアンド アレグロ・モルト 8分の3拍子
少しおどけたオーケストラ演奏(シンコペーション)とヴァイオリンの第1主題の掛け合いから始まるが、優雅なイスラム風の旋律も現れる。

第3楽章 イ短調 三部形式 (6:14)
インターメツオ(間奏曲)アレグレット・ノン・トロッポ 4分の2拍子
オーケストラによる荘厳な第一主題の表現、ヴァリオリンがその主題を引き取って優雅な形に変えてしまう。ヴァイオリンが第二主題を物悲しく謳い上げつつ変奏して終わる。

第4楽章 ニ短調 三部形式 (6:13)
アンダンテ 4分の3拍子
重厚なオーケストラでゆったりと始まり、やがてヴァイオリンが繊細なテーマを奏でる。極めて美しいメロディで、盛り上がりつつオーケストラと掛け合いする様子が素晴らしい。薄絹の妖艶な美女を思い起こさせる。最後は静かに終える。ラロは、この楽章に最も力を注いだのではないか。

第5楽章 ニ短調 ロンド形式 (8:26)
ロンド アレグロ 8分の6拍子
特徴的なリズムを持ったオーケストレーション序奏、軽快なヴァイオリンの旋律がその上に乗っかる。第一主題の表示だ。このテーマは変奏を加えて繰り返される。明るい雰囲気が随所に溢れているが、後半は考え込むようなヴァイオリンの第二主題が現れる。やがて第一主題へ戻り、盛り上がりを見せながら終曲へ導いて行く。


 私が聴いているのは、チー・ユン(韓国の女性ヴァイオリニスト)とヘスス・ロペス=コボス指揮のロンドン・フィルハーモニーが演奏するCD(1996.5;DENON)である。チー・ユンは多少ダイナミズムに欠けるが、第4楽章などは如何にも女性らしい演奏で、とても良いと思う。このCDには、サン=サーンスのヴァイオリン協奏曲第3番 ロ短調 作品61が同時録音されていて、こちらの演奏も中々素晴らしい。

 グリュミオーの演奏は、次のurlで部分的に視聴出来る。
 http://www.hmv.co.jp/Product/detail.asp?sku=1071242

 Marek Pavelecの演奏で、この曲の第1楽章を聴いてみよう。


http://jp.youtube.com/watch?v=YfCs4DesbrA&feature=related

 この曲の第1楽章は、<経済カタストロフィー>がこれから始まるぞと言う感じで、興味深く聴く昨今である。
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