陸奥月旦抄

茶絽主が気の付いた事、世情変化への感想、自省などを述べます。
登場人物の敬称を省略させて頂きます。

人民元の国際的地位確保を目論む習近平

2015-04-26 10:52:23 | シナ・中共関係
 今週初めから右肩が酷く痛み、4日間ほど全く外へ出なかった。痛みも少し収まったので昨日早朝、散歩を兼ねて松川緣(べり)のソメイヨシノ並木を眺めに行ったら、見事に満開であった。やはり、桜見物は良いものだ。

 敷島の大和心を人問わば
 朝日に匂う山桜花       宣長


 さて、朝日新聞、日経新聞、それに東洋経済誌などが中共の主催するAIIBへ日本政府は是非参加せよと喧しく述べている。民主、共産など、野党も口を揃えているわけだ。安倍政権は、米国の様子を伺いながら6月下旬まで静観の構えだが、腰の座らぬオバマ政権が変節してAIIBへ参加すれば、日本もどうなるか分からない。

 既に報道されているとおり、AIIBの運営には不透明な面が多く、定款の具体案も未だ提示されていない。民主主義だ、人権尊重だと五月蝿く言う欧州諸国が、チベットやウィグルの民族弾圧、環境汚染の無視、弱小国家の領域侵犯を目論む独裁覇権国家・中共を批判もせず、その提唱するAIIBへ雪崩を打って一斉に参加を表明したのも、ひたすらカネの匂いに群がる蟻のようにも思える。

 シナ・中共は、リーマン・ショック(2008.9)以降「人民元」のSDRバスケット参入を熱望して来た。「人民元」はドル発行高に合わせて人為的に流通され、実質上「ドル・ペッグ制」になっている。「人民元」を自由に発行出来れば、欧州や東南アジアでそれを流通させ、ドルベースの外資導入に頼らずとも、中共は海外へ「人民元」の直接投資を行うことが出来るだろう。

 SDRバスケットシステムの改定は5年毎に行われ、今年はその見直しの年である。SDR価格をドル、ユーロ、ポンド、円の4大ハード・カレンシーに加えて、「人民元」を基軸通貨とするべく改定するのがシナ・中共の野望である。

 AIIB構想に同期して、ロンドン・シティー、それにフランクフルト金融市場では、「人民元」の兌換・決済を行う金融機関が増えている。その状況からすると、年内のSDR改定に「人民元」が加えられのはまず間違いないであろう。

 この辺りを河添恵子氏が論評している。

 【巨星・虚勢の中国】「AIIB」野望…人民元を基軸通貨に 欧州が陥る“中国依存症” 
2015.04.20

 中国主導でスタートさせるアジアインフラ投資銀行(AIIB)は、世界との貿易や投資で人民元の使用をさらに増やし、将来的に、人民元を基軸通貨にする戦略と一体化している。

 国際銀行間通信協会(SWIFT)によると、2014年12月の世界の資金決済比率で、人民元は「日本円」に次ぐ5位に急浮上した。

 ここ数年、アジア周辺国は人民元経済圏として膨張を続け、香港やシンガポールのみならず、欧州やカナダなどでも人民元オフショア・センターが設立された。昨年には、英国やドイツ、フランスなどで人民元決済の銀行も決まった。

 3月下旬、中国海南省で開かれた「ボアオ・アジアフォーラム」に出席した国際通貨基金(IMF)の朱民副専務理事は「取引面でみると、人民元はSDR構成通貨に採用される資格がある」と記者団に語った。ちなみに彼は、世界金融の舞台で“ミスター元”の異名で知られている。

 SDRとは、IMFの特別引き出し権(Special Drawing Rights/SDR)のことで、現在、4通貨(ドル、ユーロ、ポンド、円)で構成される。

 中国は長年、外貨準備の大半をドル資産に投資してきたため、08年のリーマン・ショックで相当な痛手を受けた。そのころから、欧州との経済関係強化へと猛発進し、欧州連合(EU)が経済破綻の危機にあった12年には、ドイツのメルケル首相が「中国はアジアで最重要パートナー」と明言し、同国メディアも「中国は欧州の救世主」と報じている。
 また、英国のキャメロン首相が13年12月に訪中した際には、「英国は、中国の欧州最強の支持者になる」などと述べた。

 欧州が広く支持をし、中国も支持表明をしたフランスのラガルド財務相が11年6月末、IMFの新専務理事に選任されると、それまで専務理事特別顧問だった朱氏は、副専務理事へと昇格した。

 そして、朱氏は「主要8カ国(G8)でドルに代わる基軸通貨を作るべきだ」「SDRを準備通貨として活用する案」など、国際通貨制度の改革議論を白熱させていった。だが、ドル支配体制を死守したい米国の壁に阻まれ、IMF改革は進まなかったのだ。

 AIIB設立という流れのなか、主要7カ国(G7)の欧州メンバー(英国、ドイツ、フランス、イタリア)は、年内にも人民元をSDRに追加することに前向きだ。

 人民元は現状、中国に「管理」された通貨だ。今後、完全自由化に向かうのかどうかも怪しい。それでも、キャメロン首相が「英国の未来を人民元の国際化に賭けている」と語るように、欧州は少なからず“中国依存症”に陥っている。

 「ユーロ圏」「ポンド国」の後ろ盾を得た「人民元」と、防衛戦に臨むドル。この新たな世界通貨戦争に、「円」の陰は薄い。 =おわり

 ■河添恵子(かわそえ・けいこ) ノンフィクション作家。1963年、千葉県生まれ。名古屋市立女子短期大学卒業後、86年より北京外国語学院、遼寧師範大学へ留学。著書に『中国崩壊カウントダウン』(明成社)、『だから中国は日本の農地を買いにやって来る』(産経新聞出版)、共著に『国防女子が行く-なでしこが国を思うて何が悪い』(ビジネス社)など。

http://www.zakzak.co.jp/society/foreign/news/20150419/frn1504190830002-n1.htm


《参考》

アジアイ・ンフラ投資銀行の意図するものは? 
http://blog.goo.ne.jp/charotm/e/0e0da86267025cb8b337d839418b3241
コメント (1)    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 春を迎える我が心 | トップ | ネパール大地震(4/25)... »
最新の画像もっと見る

1 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
Unknown (ユーラシア)
2015-06-22 20:50:57
21世紀の今でも「周辺国とは対立ありき」の日本社会から、一歩外に出て見れば別の世界が広がります。欧州では「中国に入ってもらいたい」というのが通説で、中国側からSDR入りを願っているという見方はありません。この先、中国がより影響力を増す以前に取り込み、基盤を広げたいというのが狙いです。ラガルド氏を始め、欧米の著名人の発言を見れば、IMF側からのアプローチが理解できるはずです(英語が読めなければそれらの情報は得られないでしょう)。また逆に、中国にしてみれば、いずれアメリカを凌駕する経済大国になると言われているのだから、あえて大きな責任を受けるメリットはないでしょう。経済が大きくなればなるほど、これまでのアメリカのように「総取り」できる可能性が高まるわけですから。日本では対立が何かを生むといった風潮があるようですが、大陸では正反対なのです。地続きなので「協調なしに発展はない」という常識があり、逆に対立を煽るのが遠隔地、島国国民の身勝手さです。それはイギリスを代表に、日英のような海に守られた島国の国民には一生かかっても理解できないことなのかもしれません。
返信する

コメントを投稿

シナ・中共関係」カテゴリの最新記事