陸奥月旦抄

茶絽主が気の付いた事、世情変化への感想、自省などを述べます。
登場人物の敬称を省略させて頂きます。

最近の米国国債は売れているのか

2009-02-27 06:30:43 | 米国関係
 米国財務省が大盤振る舞いをして、巨大金融機関やGMを救済する原資は国債発行(=借金)だが、米国内銀行は青息吐息、米国民も借金だらけなので、「バイ・アメリカン」と言うわけに行かない。

 当然海外に米国債を買ってもらうことになるが、欧州も中東産油国も自分たちの国家経済を救済することで精一杯、米国債を購入する余裕など無いだろう。プーチン首相は、ドルの基軸通貨体制を崩したいから、米国債を買うはずが無いし、只今はルーブル価格維持に忙しい。

 米国債の引き受け手は、シナと日本しかない。シナは、既に米国債を買い過ぎたと考えているし、ロシアと組んでドル基軸通貨体制に風穴を開けたいと内心思っている。だから訪中したクリントン国務長官へリップ・サービスをしても積極的に米国債を買う気は無い。大体、そのような余裕資金があの国に実質あるかどうかが怪しい。

 残りは日本だけである。日本の民間銀行・証券筋はそれなりの資金を持っているし、巨額の郵貯がある。クリントン国務長官に訪日の儀礼的挨拶をさせ、大急ぎで麻生首相をホワイトハウスに招待したオバマ大統領は、日本に米国債を買わせようと画策した。だが、その目論見はどうやら外れたようだ。産経新聞によると、


米国債入札が不調 日本に対する購入圧力も
2009.2.26 19:37

 米国で25日行われた320億ドル(約3兆1000億円)に上る国債の入札が不調となり、利率が事前の予想を上回る結果になった。24日にオバマ大統領が施政方針演説でエネルギーなど3分野への重点投資を表明したことで、財政悪化への懸念が高まったことが原因だ。演説前の麻生太郎首相との日米首脳会談では「日本が米国債を買い支えることで暗黙の了解が成立した」(市場関係者)との声もあるが、その効果もなく、国債の安定発行への不安が顕在化した。日本に対する購入圧力がさらに高まるのは必至だ。

 一連の政治ショーから一夜明けた25日、市場に衝撃が走った。5年物国債の落札利率が事前の予想の1.974%を上回る1.985%を付けたのだ。わずかな上昇とはいえ、不人気のため、高い金利を付けないと、国債が売れなくなってきたことの表れだ。

 オバマ大統領が演説でぶち上げた代替エネルギー開発・医療・教育の3分野への重点投資に対し、市場は「財政悪化の懸念が増した」(大和証券SMBCの永井靖敏チーフエコノミスト)と嫌気した。

 米国では8000億ドル超の景気対策に加え、ゼネラル・モーターズ(GM)の破産処理やシティグループなどの銀行国有化も浮上しており、金がいくらあっても足りない状況にある。

 しかし、その“元手”の米国債が売れず、長期金利が上昇すれば、企業や家計の利払い負担が増大し景気はさらに冷え込む。国の利払いも増え、財政はさらに悪化。米国への信認失墜でドル暴落の引き金となる懸念もある。

 入札不調は、米国にとっての最悪のシナリオの「予兆」といえる。

 日米首脳会談では、米国債の購入要請は全くなかったという。だが、オバマ大統領は「(日本は)偉大なパートナー」と持ち上げ、あからさまに期待を表明。麻生首相は「基軸通貨であるドルの信頼維持が一番大事だ」と応じた。ドルの信頼維持とは、米国債の積極購入を意味する。

 世界第1位の米国債保有国である中国にも、先に訪中したクリントン国務長官が、買い支えへの期待を伝えている。ただ、中国は購入を“外交カード”に使うしたたかさもあり、「米国が心を許せる相手ではない」(外務省筋)。

 米国の狙いは、中国を巻き込んだ協調体制を築くことにあり、日中を競わせ、金を引き出そうという戦略も透けてみえる。

 輸出頼みの日本は米国を支え続けるしかない。日本だけでなく中国にしても米国債やドルが暴落すれば、保有する米国債に巨額の損失が発生する。首相が“約束”した通り、米国の無心に対して金を貢がざるを得ないのが実情だ。

http://sankei.jp.msn.com/world/america/090226/amr0902261939019-n1.htm


 麻生首相は「首脳会談で、オバマ大統領は米国債を買ってくれとは言わなかった」と述べたが、ドルの基軸通貨体制維持に全面的協力をすると首相が言ったので、オバマ大統領は安心をしていたのかも知れない。

 海外が米国債を買わなければ、FRBがドルを増刷して購入することになるのだろう。そうするとドル価格は低下し、益々海外は米国債を買わなくなる。日本は、米国が円建て国債を発行するまでじっと待つか、第7艦隊を担保にし米国債を購入するかを考えたら良いのではないか。

 上記産経記事と異なり、ロイター記事は米国債の入札に関し逆のことを述べているが、米国債を買わせようとする提灯記事なのかも知れぬ。

米5年債入札、順調な消化で投資家に安心感
2009年 02月 26日 15:28 JST

 [ニューヨーク 25日 ロイター] 25日に米財務省が実施した総額320億ドルの5年債入札は、順調に消化された。特に外国中央銀行を中心とする海外投資家からの引き合いが好調で、景気対策を賄うための国債大量増発で、ついには海外投資家にそっぽを向かれるのではないかと懸念していた市場参加者に安心感を与える内容だった。

 こうした海外勢の需要減退懸念を背景に、結果の分析でも間接入札者のトレンドが注視されている。

 アナリストらは、米国債市場で25日のほぼ午前中いっぱい5年債を含む利回りが上昇基調にあった点を指摘し、買い手にとっての魅力が増したと述べた。

 ジェフリーズ(ニューヨーク)のマネジングディレクター兼米国債責任者、トマス・ディ・ガロマ氏は「入札は非常に好調だった。間接入札者の落札比率は49%近くに達した」と述べた。

 加えて、5年債は他の償還期間に比べて割安だったという。同氏は「市場参加者は入札で5年債を入手し、発行日決済取引の新発7年債や10年債のような期間が長めの債券を売っていた」と指摘した。

 三菱東京UFJ銀行の金融担当首席エコノミスト、クリス・ラプキー氏によると、「午前の水準よりも午後1時の水準で買えたことに市場は満足している」という。

 外国中央銀行を含む間接入札者の落札比率は約49%で、最近の平均を大きく上回った。

 320億ドルの5年債入札は、今週予定されている総額940億ドルの国債入札の第2弾。

 26日には発行が再開された7年債220億ドルの入札が予定されている。
http://jp.reuters.com/article/domesticFunds/idJPnTK839479520090226
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