陸奥月旦抄

茶絽主が気の付いた事、世情変化への感想、自省などを述べます。
登場人物の敬称を省略させて頂きます。

新型インフルエンザ(H5N1型)への危惧と対策

2007-12-01 00:12:47 | 新型インフルエンザ
 岡田晴恵氏の「パンデミック・フルー 新型インフルエンザ Xデー ハンドブック」(講談社、2006年10月)を読んで、新型インフルエンザ(H5N1型)に対する認識がかなり改まった。是非お勧めしたい本である。

 感染者致死率58%と言う強烈なウィルス性疫病が爆発的に大流行(=パンデミック)したら、核兵器攻撃を受けるよりも恐ろしい事態が起こりそうだ。当然世界的な経済大損失も想定される。だから世界銀行もWHOと一緒になって報告を行っている。

2007/11/30-07:47
鳥インフルへの対応改善=インドネシアなどでは慢性化も-国連報告

 【ニューヨーク29日時事】国連と世界銀行は29日、世界規模の鳥インフルエンザへの対応状況をまとめた報告書を発表し、「家禽(かきん)類の間での流行に関しては多くの国で対応が改善した」との認識を示した。ただ、高病原性ウイルスによる鳥インフルエンザはインドネシア、エジプト、ナイジェリア、中国およびバングラデシュの一部地域で慢性化していると警告した。

 報告書によれば、今年8月末までに計60カ国で高病原性のH5N1型鳥インフルエンザの流行が見られたが、多くの場合、早期に拡大阻止策が取られた。報告書はこれを踏まえ、鳥インフルエンザに対する意識や監視能力が高まっていると評価した。
 一方、H5N1型による死者は4年間で12カ国計205人に上っており、新型インフルエンザの大流行の危険性は消えていないと指摘した。
http://www.jiji.com/jc/c?g=int_30&k=2007113000109


 流行の段階を6つのフェーズに分けており、パンデミック状態は、最高のフェーズ#6、現在はフエーズ#4の段階(ヒトーヒトの感染を散発的に認める;但し、限定領域)である。(これ、間違いました。WHOは現在フェーズ#3と宣言しています。日本国内では発生が無いから、フェーズ#3Aと言うことになります)

 我が国でも、少しずつこのインフルエンザに対する患者対処訓練が行われているようだ。まず鹿児島市では、

新型インフルエンザ発生想定 患者搬送など訓練 鹿児島市保健所 県内で初

 新型インフルエンザの発生を想定した患者搬送訓練が28日、鹿児島市鴨池2丁目の市保健所であった。「人から人への感染」に対応した実地訓練は県内では初めて。高い致死率を示す新型インフルエンザだけに、職員らも緊張した面持ちで訓練に臨んでいた。

 新型インフルエンザは鳥インフルエンザなどの突然変異で生じたとみられ、インドネシアなどで患者が発生。国内での発生例はないが、60%と致死率が高いため、国がガイドラインを示して防疫に力を入れている。

 市は実際に患者が出た場合、的確に対応できるようにと訓練を実施。県外出張から帰ってきた会社員が、患者が多い「H5亜型」にかかったと想定し、患者発生の報告や連絡、感染防護服の着方、感染症病院に指定されている市立病院への患者搬送などを行った。

 訓練には、市保健所職員約50人のほか、鹿児島検疫所支所や県健康増進課からも参加。約2時間の訓練を終え、黒丸喜功・市保健予防課長は「2次感染をいかに防ぐかなどの課題も見つかった。今後に生かしたい」と話していた。

=2007/11/29付 西日本新聞朝刊=
http://www.nishinippon.co.jp/nnp/local/kagoshima/20071129/20071129_001.shtml

 また、佐賀県ではテント内部を弱低圧にして、外部へ汚染空気が排出されないようにした「陰圧テント」(価格350万円位)の使用訓練も行われた。

陰圧テント初使用し新型インフル訓練

 県は29日、新型インフルエンザの発生を想定し、県立病院好生館敷地内で訓練を行った。ウイルスなどが外部に漏れない構造の「陰圧テント」を初めて使用。患者搬送から隔離、救急車消毒までの流れを確認した。

 陰圧テントは特殊な空気清浄機で、室内の汚染された空気をろ過処理し排出する。病院の外来、入院患者らと接触し感染が拡大しないよう、新型インフルエンザ発生の初期の段階で臨時の診察室として利用する。

 訓練は、新型インフルエンザの疑いのある患者2人の情報が佐賀中部保健福祉事務所に報告され、好生館に移送する想定で実施。好生館職員や消防本部、保健福祉事務所の職員ら80人が参加した。

 県健康増進課は「実際の流れを確認することで危機感を持ち、それぞれの現場が“起こりうること”として実感できたと思う」と話した。

http://www.saga-s.co.jp/view.php?pageId=1036&blockId=719901&newsMode=article


 九州は、大陸や東南アジアとも近いし、意識旺盛なのだろう。プレパンデミック・ワクチンは、既に1000万人分を国家備蓄済みで、来年3月末までに合計2500万人分が準備されるとの事。詳しくは、厚生労働省HP,「新型インフルエンザ対策関連情報」を良く読んでおくと参考になりそうだ。

 このインフルエンザは、罹患した場合、高齢者よりも10代、20代の人達の致死率が高いらしい。だから、備蓄ワクチンや治療薬タミフルは、そうした年代層にまず投与されるだろう。私のような年寄は、もう十分生きて来たし、パンデミック・フルーが起きたら、じたばたしないで覚悟をするつもりだ。これからを担う若い人達へ治療薬や予防ワクチンが優先投与されるのは当然と思う。

 外出から帰ったら、手洗いと嗽(うがい)を良くすることが大事。特に、人と接触の多い大都会に住む若い人達にそれを言いたい。それから、高性能マスクN-95を常備することも忘れないことだ。

(参考)

 H5N1トリインフルエンザを思う

(追記:12月1日)

 成田国際空港では、旅客機内での訓練が行われた。東京新聞の記事によると、

空港で新型インフル阻止!! 千葉県など 機内で想定訓練
2007年11月16日 夕刊

 新型インフルエンザの発生や海外からの上陸が懸念される中、成田空港や首相官邸などで十六日、患者確認を想定して国や千葉県などが合同訓練を実施した。空港での訓練は初めてで、実際の旅客機を使って検疫態勢の確認をした。

 訓練は、発生地からの到着機内で、感染の疑いがある男性患者が見つかったとの想定で実施。厚生労働省成田空港検疫所の職員ら約七十人が参加した。

 防護服を着た検疫官や医師らが機内へ。患者の検体を採取してウイルスを封じ込める生物フィルター付きの特別搬送車に乗せ指定病院に搬送した。患者の近くにいた旅客らもターミナルに移動させて診察するなどの手順を職員らが確かめた。

 空港外でも患者が発生したと想定し、内閣官房や厚労省など二十府省庁も机上訓練を実施。千葉県との間でテレビ電話を使うなどして、関係機関の情報伝達が順調に行われるかを確認した。
http://www.tokyo-np.co.jp/article/national/news/CK2007111602064862.html


 羽田、名古屋、伊丹、福岡、千歳などの大空港でも、いずれはこうした訓練が行われるのだろうが、只今は地方空港から世界各国へダイレクトフライトのある時代、空港間検疫ネットワークを充実させて、情報共有を大いに進めて欲しい。
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