陸奥月旦抄

茶絽主が気の付いた事、世情変化への感想、自省などを述べます。
登場人物の敬称を省略させて頂きます。

ライス国務長官の本音

2007-05-13 00:44:06 | 米国関係
 中間選挙結果で米国民主党が勝利した結果、昨年末(2006)から米国外交が全体的に変わり出した。中東では、イラク内治問題へ力点が置かれると共に、イランへは経済制裁のみに留めている。東アジアでは、北朝鮮融和策の採用へ大きくハンドルを切った。特に、今年1月の米朝ベルリン秘密会談は、個別交渉をしないと明言して来た小ブッシュ政権の豹変振りを示すものであった。

 この「豹変シナリオ」を取り仕切るコンドリーザ・ライス国務長官は、北朝鮮に対するテロ支援国家指定を何とか解除したいらしい。それは、国務省内の強硬派を次々に辞任させた上、自ら記者会見などで指定解除を匂わせていたことから容易に想像がつく。4月末の日米首脳会談では、次のようにも述べていた。


テロ支援国家の指定解除 「拉致解決が前提でない」米国務長官

 米国の北朝鮮に対するテロ支援国家指定解除をめぐり、先月27日の日米首脳会談で、同席したライス国務長官が、米国内法の観点からは拉致問題の解決が指定解除の前提条件にはならないとの解釈を説明していたことが12日、分かった。ただ、席上、ブッシュ大統領は「拉致問題も考慮に入れる」と明言しており、政府関係者はライス氏の発言を「米国の法的な建前を説明しただけ」と受け止めている。

 会談では、安倍晋三首相が、拉致問題解決を指定解除の前提条件とするよう要請。大統領が「北朝鮮の問題は国務長官に任せてある」と述べたのを受け、ライス氏が指定解除の法的な手続きを示した。その際、「必ずしも拉致問題解決が指定解除の前提条件にはならない」ことを説明した。

 これを踏まえた上で、大統領は、拉致問題を指定解除の際に考慮する方針を表明。記者会見でも、「拉致問題についての私の強い感情が薄れることはない。この問題は外交的な問題だけでなく、私にとっては形のある感情的な人間の問題だ」と強調。指定解除には法的な問題だけでなく、人道上の観点を考慮する考えを示した。
(2007/05/12 20:52) Sankeiweb
http://www.sankei.co.jp/kokusai/usa/070512/usa070512006.htm


 結婚もせず、子供を持ったことも無いライス氏は、親の悲しみなど到底理解出来ないのだろう。麻生外相は、ライス氏の言動に注意を払うべきだ。私は、彼女への米国内批判が次第に強まることを期待する。ライス氏の意を反映して、次の記事が報道されている。

バシュボウ駐韓米大使:「来年、米朝正常化も」 非核化が前提

 【ソウル堀山明子】バシュボウ駐韓米大使がウリ党国会議員団との会合で、北朝鮮の非核化を前提に「来年の今ごろ米朝国交正常化ができると期待する」と述べたことが11日、毎日新聞が入手した議事録で確認された。米高官が米朝国交正常化の目標時期を具体的に明らかにしたのは初めて。

 米大使は会合でマカオの銀行バンコ・デルタ・アジア(BDA)の北朝鮮資金送金問題に関連し、「(凍結解除から)1カ月も消耗しており、進展が必要だ」と強調しており、北朝鮮に非核化を促す狙いがあるとみられる。

 会合は、5月初めに訪朝したウリ党議員5人と9日に行われた。

 議事録によると米大使は、ブッシュ米大統領の任期内に北朝鮮核問題を解決する意思があると強調したうえで、「米朝国交正常化が先行するのは短期的に難しいが、米国が(正常化前の)中間段階で信頼構築に向けた段階的措置を取るのは可能だ」と明言。具体例として北朝鮮のテロ支援国家指定解除や経済交流協力の拡大などを挙げた。

 また米大使は、9月にシドニーで開催予定のアジア太平洋経済協力会議(APEC)首脳会談に触れ、「APECを前に朝鮮戦争を公式に終了させ平和体制構築のための協定に署名する準備がある」と述べた。

 会合で米大使はブッシュ政権の対北朝鮮政策について「あまりに柔軟だと米国内で批判を受けている」と苦境を訴え、北朝鮮核廃棄に向けた初期段階措置履行が遅れれば「善意が消えてしまう」ともらす場面もあった。

毎日新聞 2007年5月11日 東京夕刊
http://www.mainichi-msn.co.jp/kokusai/asia/northkorea/news/20070511dde007030091000c.html

 小ブッシュ大統領は、今のところ拉致問題に対する立場を変えていないが、何時まで保つか疑問である。話し合いで北朝鮮核施設を閉鎖させれば、核物質をテロ組織に渡らぬようにしたと国際的にアピール出来るからだ。また、米国国内では大きな実績として受け止める人達もいる。

 安倍首相へ申し上げたいのは、繰り返し小ブッシュ大統領の拉致問題への認識を確認する一方、国務省のやり方に不満を持っている国防総省や財務省へ大いに働きかけることだ。また、国内においては朝鮮総連の資金的締め付け強化、北朝鮮船舶の全面寄港禁止に踏み切って欲しい。それが拉致被害者奪還のために、我が国が採り得る最も有効な手段である。
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