ジェンダーから見るカンボジア

南国のカンボジアからの日記、ジェンダー視点でカンボジア社会を分析します

民法と家族概念の化学

2022年04月19日 | 大学院生活

大学院では、自分が学生にさせているのと全く同じで、学生たちが一冊の本を輪読する(科学技術論)。
担当はメディアにもよく出ている有名な教授で、イタリア料理がプロ並みらしいのだが(別の教授から聞いた)、さすが選ぶ本の内容が面白い。
有名な先生たちが書いている短い論文だけを集めた化学術関係の本なのだが、倫理に触れる問題ばかりを取り上げている(DNA鑑定とか)。

↓SL山口の石炭ワッフルだそう、不思議なのは販売者が宗教団体だったこと


私もさっさと発表させてもらうことにして、選ばせてもらったのが「家族の概念と科学と民法」。
民法、特に親子関係の規定について、戸籍との矛盾を説明しながら、民法が想定していなかった医療生殖技術による親子関係の規定についての分析。

↓科学の発展とも密接に関係する鉄道の発展・・・(長い坂道の前に13分停車して石炭補充、天気によって量が異なるそう)



日本の戸籍制度は、ただ無駄なものだと思っていたが、実は無駄どころか個人のプライバシー侵害にもなってきたし(以前は公開できた)、民法の親子関係規定とも矛盾するところがあるため、親子関係の認知や親子関係不在確認訴訟など、親子関係を破壊するような訴訟まで起きていることを紹介してる。

面白い論文なのだが、数ページに筆者の何十年にもわたる分析がまとめられいて、さっと読んだだけではわからない。
この筆者の描いている他の論文を読んでみると、なかなか議論がわかってきて、死んだ男性の凍結精子を使ってのAIDは不賛成だとか、明確な立場が見えてくる。

↓貝の盛り合わせを焼くのに四苦八苦、エビやイカは焼きやすい



「子どもを持つ事は、権利ではない」というフランス人学者の学説が紹介されていて、まさにそうだなと。

ARTの議論では、多胎の場合に選択中絶するのはいいかとか様々な生命理論の議論もあるが、筆者はあくまでメインになりつつ医療生殖技術について取り上げている。

いずれにしても、日本の民法は婚姻と親子関係を直結させているので(弱者保護という観点から)、婚姻外での家族関係が進んでいるフランスなどとは全く状況が異なる。この先生は戸籍は個々人で作成されるべきだ(日本と台湾以外のように)と主張している人で、まさにその通りだと思う。